ONE PIECE 〜船大工レイン〜   作:ペンギンって可愛いですよね

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第百四十七話「我が親友へ」

 

地下空間に静寂が落ちる。

 

レインの手には一枚の古びた紙が握られていた。

 

何百年も前のものとは思えないほど状態は良い。

 

それだけ大切に保管されていたのだろう。

 

ロジャーもレイリーも、その紙を見つめていた。

 

設計図ではない。

 

技術書でもない。

 

誰かが誰かへ宛てた手紙だった。

 

そして、その冒頭に書かれていた言葉。

 

『我が親友へ』

 

たったそれだけの一文なのに、不思議な重みがあった。

 

まるで八百年以上の時を超えて語りかけてくるような感覚。

 

ロジャーが口を開く。

 

「読んでみろ」

 

レインは小さく頷いた。

 

そして紙へ視線を落とす。

 

古い文字だったが、これまで何度も読んできた。

 

だから内容は理解できる。

 

レインは静かに読み始めた。

 

『我が親友へ』

 

『君がこれを読んでいる頃、私はもうこの世にはいないだろう』

 

地下空間にレインの声だけが響く。

 

『この手紙が君へ届くかも分からない』

 

『だが、どうしても残しておきたかった』

 

『だから私は書く』

 

ロジャーもレイリーも黙って聞いていた。

 

『まず謝らせてほしい』

 

『約束を守れなかった』

 

『君と共に未来を見ることが出来なかった』

 

『本当にすまない』

 

レインの声が止まる。

 

地下空間が静まり返る。

 

誰も何も言わない。

 

ただ、その文章の重さだけが伝わってくる。

 

まるで書いた本人の後悔が、そのまま残っているかのようだった。

 

レインは続きを読む。

 

『君は最後まで諦めなかった』

 

『最後まで笑っていた』

 

『最後まで未来を信じていた』

 

『だから私は君を尊敬している』

 

『そして今も親友だと思っている』

 

ロジャーの表情が少し変わる。

 

その言葉に何か感じるものがあったのかもしれない。

 

レイリーも静かに目を閉じていた。

 

レインはさらに読み進める。

 

『世界は変わってしまった』

 

『我々は敗れた』

 

『仲間は散り散りになった』

 

『王国は滅びるだろう』

 

『多くの知識も歴史も失われる』

 

その文章にロジャーの目が鋭くなる。

 

王国。

 

その単語に反応したのだ。

 

レインも気付いていた。

 

おそらくこれは巨大な王国のことだ。

 

だが、まだ名前は書かれていない。

 

『だから私は未来へ残す』

 

『歴史を』

 

『知識を』

 

『技術を』

 

『そして希望を』

 

レインの視線が自然と机の上の設計図へ向く。

 

滑車。

 

揚水装置。

 

巨大クレーン。

 

飛行機に似た設計図。

 

あれら全てが、この文章へ繋がっていた。

 

『君は昔から笑っていたな』

 

『不可能だと言われても笑っていた』

 

『無理だと言われても笑っていた』

 

『だから最後まで信じている』

 

『いつか君の想いを受け継ぐ者が現れることを』

 

地下空間に沈黙が落ちる。

 

ロジャーは腕を組んでいた。

 

その顔から笑みは消えている。

 

真剣だった。

 

レインは次の一文を読む。

 

そして、その瞬間だった。

 

ロジャーとレイリーの表情が変わる。

 

『もし未来に辿り着いた者がいるなら』

 

『どうか伝えてほしい』

 

『ジョイボーイ』

 

地下空間の空気が変わった。

 

レインはそこで一度読むのを止める。

 

ロジャーが静かに呟いた。

 

「ジョイボーイ……」

 

初めて聞く名前のはずだった。

 

だが、不思議だった。

 

どこかで聞いたことがあるような感覚があった。

 

ポーネグリフへ触れた時と同じだ。

 

説明出来ない。

 

だが心の奥が反応している。

 

レイリーも眉をひそめる。

 

「知り合いか?」

 

「知らねぇ」

 

ロジャーは即答した。

 

「知らねぇんだが……」

 

そこで言葉を切る。

 

そしてポーネグリフのある方向を見る。

 

「妙に引っかかる」

 

レインは内心で驚いていた。

 

やはり万物の声だ。

 

まだ何も知らない。

 

それでもロジャーは何かを感じている。

 

八百年以上前の人物の名前に。

 

レインは再び手紙へ目を落とす。

 

続きを読もうとした、その時だった。

 

パサリ。

 

一枚の紙が手帳の奥から滑り落ちた。

 

三人の視線が集まる。

 

床に落ちたそれは手紙ではない。

 

設計図だった。

 

だが、今までの設計図とは明らかに違う。

 

レインがそれを拾い上げる。

 

そして息を呑んだ。

 

「これは……」

 

ロジャーが覗き込む。

 

レイリーも見る。

 

そこに描かれていたのは船だった。

 

しかし普通の船ではない。

 

翼があった。

 

巨大な翼。

 

そして無数の見たこともない機構。

 

レインの知識をもってしても、一目では理解できないほど高度な設計だった。

 

手紙の続きよりも先に、その設計図が目に飛び込んでくる。

 

まるで八百年前の技術者が、

 

『まだ終わりではない』

 

そう言っているかのように。

 

地下遺跡の奥深く。

 

失われた歴史は、まだほんの入口に過ぎなかった。

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