ONE PIECE 〜船大工レイン〜   作:ペンギンって可愛いですよね

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第百四十八話「未来への約束」

 

地下遺跡には静寂が流れていた。

 

レインの手には古い設計図。

 

机の上には何冊もの手帳と巻物。

 

そして少し離れた場所にはポーネグリフ。

 

ここにある全てが八百年以上前から受け継がれてきたものだった。

 

ロジャーは腕を組みながら設計図を眺めている。

 

レイリーも珍しく真剣な表情だった。

 

だが、レインの意識は別のところにあった。

 

本当の目的。

 

今日、この二人に秘密を打ち明けた理由。

 

それをまだ話していない。

 

レインは静かに息を吐いた。

 

「ロジャーさん」

 

「ん?」

 

ロジャーが振り返る。

 

「レイリーさんも」

 

「何だ?」

 

二人の視線が集まる。

 

レインは少しだけ言葉を選んだ。

 

このお願いをするために、本名を明かした。

 

このお願いをするために、ポーネグリフを見せた。

 

このお願いをするために、ここまで案内したのだ。

 

「実は」

 

レインはゆっくりと口を開く。

 

「俺が今日、あなたたちに全てを話したのには理由があります」

 

ロジャーが小さく笑う。

 

「何かやって欲しいことでもあるのか?」

 

「はい」

 

予想していたらしい。

 

レインは頷いた。

 

「お願いがあります」

 

地下遺跡が静まり返る。

 

ロジャーもレイリーも真剣な顔になった。

 

「聞こう」

 

レインは二人を見た。

 

そして真っ直ぐ言う。

 

「もし」

 

「あなたたちが最後の島へ辿り着いたら」

 

ロジャーの目が僅かに細くなる。

 

最後の島...

 

それは今の彼らが目指している場所だった。

 

まだ誰も到達していない島。

 

世界の果て。

 

レインは続ける。

 

「俺の先祖について何かあったかだけ教えてください」

 

沈黙。

 

ロジャーとレイリーは黙って聞いている。

 

「内容は教えてくれても教えてくれなくても構いません」

 

「歴史の真実も」

 

「空白の百年も」

 

「世界の秘密も」

 

「全部教えてくれなくていいです」

 

レインは静かに首を横へ振った。

 

「ただ」

 

「俺の先祖について何かあった」

 

「それだけ教えてください」

 

地下遺跡にレインの声だけが響く。

 

「もし何も無かったなら、それでも構いません」

 

「でも、もし何かあったなら」

 

そこで一度言葉を切る。

 

そして笑った。

 

十三歳の少年とは思えない。

 

どこか覚悟を決めたような笑みだった。

 

「その時は俺自身で確かめに行きます」

 

ロジャーの口元が僅かに上がる。

 

レイリーも驚いたようにレインを見ていた。

 

「お前が?」

 

レイリーが尋ねる。

 

「はい」

 

レインは即答する。

 

「自分の先祖のことです」

 

「誰かから聞いて終わりにしたくありません」

 

「自分の目で見て、自分の耳で聞いて、自分で確かめたいんです」

 

その言葉に迷いはなかった。

 

ロジャーはしばらく黙っていた。

 

そして突然、大きく笑い出した。

 

「はははははっ!!」

 

地下遺跡に笑い声が響く。

 

レインが首を傾げる。

 

「何ですか?」

 

「いや」

 

ロジャーは笑いながら言う。

 

「やっぱり面白ぇな、お前」

 

「そうですか?」

 

「ああ」

 

ロジャーは頷く。

 

「普通なら教えてくれって言うところだ」

 

「だが、お前は違う」

 

ロジャーの目が輝いていた。

 

「自分で行くって言うんだからな」

 

それはロジャー自身と同じだった。

 

誰かから聞いた話では満足できない。

 

自分の目で見たい。

 

自分で辿り着きたい。

 

だから海へ出た。

 

だから旅を続けている。

 

レイリーも小さく笑う。

 

「確かにな」

 

「どこかお前と似ている」

 

「だろ?」

 

ロジャーが嬉しそうに言う。

 

レインは苦笑した。

 

正直、自分ではよく分からない。

 

だが二人がそう言うなら、そうなのかもしれない。

 

しばらくしてロジャーが真面目な顔になる。

 

そして右手を差し出した。

 

「分かった」

 

レインが目を瞬かせる。

 

「え?」

 

「約束してやる」

 

ロジャーは笑った。

 

「もし俺たちが最後の島へ辿り着いて」

 

「お前の先祖について何か見つけたら」

 

「必ず教えてやる」

 

地下遺跡に静かな声が響く。

 

それは軽い約束ではなかった。

 

ロジャーは約束を大切にする男だ。

 

だからこそ重い。

 

レインはその手を見る。

 

そしてゆっくりと握った。

 

「ありがとうございます」

 

ロジャーの手は大きかった。

 

そして力強かった。

 

「ただし」

 

ロジャーが笑う。

 

「俺たちが先に見つけるとは限らねぇぞ?」

 

「え?」

 

「お前が先に辿り着くかもしれねぇ」

 

レインは思わず吹き出した。

 

「それは無理ですよ」

 

「どうかな」

 

ロジャーは楽しそうに笑う。

 

レイリーも苦笑していた。

 

だが、その場にいた誰も知らない。

 

未来のことなど。

 

海賊王になる男も。

 

冥王と呼ばれる男も。

 

未来から来た知識を持つ少年も。

 

誰一人として知らなかった。

 

だが一つだけ確かなことがある。

 

この夜、誰にも知られない地下遺跡で、一人の少年と未来の海賊王の間に、一つの約束が交わされた。

 

それは何年後になるか分からない。

 

だが確実に未来へ繋がる約束だった。

 

そして、その約束こそが後に世界を大きく動かすことになるのだった。

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