ONE PIECE 〜船大工レイン〜 作:ペンギンって可愛いですよね
レイン工房の看板が掲げられてから数週間が過ぎていた。
港を歩いていると、少しずつ名前を聞くようになった。
「レイン工房の滑車便利だな」
「作業が楽になった」
「今度相談してみるか」
そんな声が聞こえてくる。
まだ島全体ではない。
それでも確実に広がっていた。
レインは工房の前で木箱に腰掛けながら、その様子を眺めていた。
潮風が気持ち良い。
海は今日も穏やかだった。
「随分余裕だな」
父親が笑う。
手には工具箱。
どうやら港の仕事帰りらしい。
レインは肩を竦めた。
「余裕じゃないよ」
「考え事」
「ろくでもないことだろ」
「失礼だな」
父親は笑った。
最近のレインは暇さえあれば何かを考えている。
設計図。
工房。
研究。
未来。
頭の中は常に忙しい。
その時だった。
港の方から慌ただしい足音が聞こえてきた。
振り返る。
以前依頼をくれた船大工だった。
だが様子がおかしい。
顔色が悪い。
額には汗が浮かんでいる。
「レイン!」
男が叫んだ。
「いるか!」
「いるけど?」
男は息を整える。
そして言った。
「助けてくれ」
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事情はすぐに分かった。
港へ向かう。
大きな貨物船が停泊していた。
島でもかなり大きい部類だ。
船の周囲には大勢の船員が集まっている。
誰もが困った顔をしていた。
父親が眉をひそめる。
「何があった」
船長らしき男が答えた。
「荷揚げ設備が壊れた」
レインは船を見る。
なるほど。
木製クレーンの支柱が折れている。
これでは荷物を降ろせない。
船長は頭を抱えた。
「明日には出港しなきゃならねぇ」
「だが修理には時間が掛かる」
「積み荷も降ろせねぇ」
周囲の船員達も暗い顔をしていた。
荷物は大量にある。
人力では何日掛かるか分からない。
父親は腕を組む。
「厄介だな」
確かにそうだった。
普通なら。
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レインは船を見上げる。
折れた支柱。
荷物の量。
港の構造。
周囲の建物。
頭の中で情報を整理する。
そして。
前世で何度もやった癖が出た。
問題を分解する。
何が問題か。
どこが原因か。
どうすれば解決できるか。
順番に考える。
数分後。
レインは言った。
「直さなくていいよ」
全員が固まった。
父親も振り返る。
「は?」
「直さなくていい」
レインは繰り返した。
船長が困惑する。
「いや、直さなきゃ荷物降ろせねぇだろ」
「だから別の方法を使う」
レインは笑った。
その笑顔を見て。
父親は嫌な予感がした。
この顔は何か思いついている時の顔だ。
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一時間後。
港は騒然としていた。
レインの指示で木材が集められる。
ロープが運ばれる。
滑車が持ち込まれる。
父親は呆れながら作業していた。
「本当にできるのか?」
「できる」
即答だった。
レインは地面へ図面を描く。
仮設荷揚げ設備。
船と倉庫の間に巨大な滑車機構を設置する。
前世なら珍しくもない。
だがこの世界では違う。
誰も見たことがない構造だった。
船員達は半信半疑だった。
それでも動く。
なぜなら。
他に方法がないからだ。
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夕方。
設備が完成する。
港には人だかりができていた。
島の住民達まで集まっている。
「本当に動くのか?」
「さぁな」
「六歳児の発明だぞ」
好き勝手言われていた。
レインは気にしない。
慣れている。
前世でもそうだった。
新しいことを始める時はいつも笑われた。
だから今さらだ。
レインはロープを掴む。
「引いて」
船員達が力を込める。
滑車が回る。
ロープが動く。
そして。
積み荷がゆっくりと持ち上がった。
港が静まり返る。
誰も声を出さない。
荷物はそのまま陸へ運ばれていく。
問題なく。
安全に。
確実に。
数秒後。
歓声が上がった。
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「おぉぉぉ!!」
「持ち上がった!」
「すげぇ!」
「本当にできた!」
船員達が騒ぐ。
住民達も驚いていた。
父親は苦笑する。
驚いたのは自分も同じだった。
レインは当然のような顔をしている。
まるで最初から成功すると知っていたように。
いや。
実際知っていたのだろう。
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荷揚げ作業は予定より遥かに早く終わった。
船長は何度も頭を下げる。
「助かった」
「本当に助かった」
レインは笑った。
「仕事だからね」
船長は懐から袋を取り出した。
予想以上の報酬だった。
父親が目を見開く。
かなりの額だ。
だが船長は首を振った。
「安いくらいだ」
「お前達がいなかったら大損だった」
レインは受け取った。
そして一言。
「また困ったら来て」
船長は大きく笑った。
「絶対来る」
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その夜。
工房へ戻る。
父親は机に置かれた報酬袋を見る。
しばらく黙っていた。
そして。
「大仕事だったな」
と呟く。
レインは頷く。
「うん」
「でもまだ足りない」
父親が眉をひそめる。
「何がだ」
レインは工房を見回した。
工具。
作業台。
材料。
まだ少ない。
そして。
今日一日で分かったことがある。
「人手」
父親は黙った。
レインは続ける。
「父さんと僕だけじゃ限界がある」
今日だってギリギリだった。
これ以上依頼が増えたら回らない。
父親も理解していた。
だから何も言わない。
レインは静かに笑った。
「そろそろ仲間が必要かもね」
工房の灯りが揺れる。
その言葉は。
レイン工房が次の段階へ進む合図だった。