ONE PIECE 〜船大工レイン〜   作:ペンギンって可愛いですよね

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第百五十二話「やり過ぎ」

 

ロジャーとの模擬戦が終わった後も、工房の前には興奮が残っていた。

 

船員たちは口々に感想を言い合っている。

 

「あのガキ、本当に十三歳か?」

 

「覇王色を纏ってただろ?」

 

「いや、俺も見間違いかと思った」

 

「ロジャー船長が驚いてたぞ」

 

誰もが信じられないものを見た顔をしていた。

 

それも無理はない。

 

十三歳の少年が未来の海賊王と剣を交えたのだ。

 

しかも一撃とはいえ、ロジャーを驚かせた。

 

普通ではない。

 

どう考えても普通ではなかった。

 

レインはそんな周囲の声を聞きながら、黎明を鞘へ納める。

 

初陣は完敗だった。

 

だが不思議と悔しさよりも収穫の方が大きかった。

 

今の自分に何が足りないのか。

 

どこを鍛えるべきなのか。

 

それがよく分かった。

 

ロジャーはそんなレインを見て笑う。

 

「いい顔してるな」

 

「そりゃあ、あれだけ差を見せられましたからね」

 

レインは苦笑した。

 

ロジャーとの差は圧倒的だった。

 

技術。

 

経験。

 

戦闘勘。

 

全てが違う。

 

だが同時に目標も出来た。

 

いつか追い付く。

 

そんな無謀なことを本気で思ってしまうくらいには...

 

その時だった。

 

一人の船員が恐る恐る近付いてきた。

 

「あのー……」

 

ロジャーが振り返る。

 

「ん?」

 

船員は何とも言えない表情をしていた。

 

困っているような。

 

呆れているような。

 

そんな顔だった。

 

「ちょっと報告が……」

 

「何だ?」

 

船員は頭を掻きながら言った。

 

「二人の覇気で二十人くらい気絶しました……」

 

沈黙...

 

数秒後、レインが固まる。

 

ロジャーも固まる。

 

「……は?」

 

二人の声が重なった。

 

船員は遠くを指差す。

 

そこには地面へ転がっている船員たちの姿があった。

 

一人。

 

二人。

 

三人。

 

いや、それどころではない。

 

あちこちで人が倒れている。

 

中には白目を剥いている者までいた。

 

レインの頬が引きつる。

 

「え?」

 

ロジャーも目を瞬かせる。

 

「そんなに?」

 

「そんなにです」

 

船員は即答した。

 

「というか途中から数えるのやめました」

 

レインが思わずルークを見る。

 

ルークは呆れた顔だった。

 

「だから言ったじゃないですか」

 

「いや、まさか……」

 

「まさかじゃないです」

 

ルークはため息を吐く。

 

その隣ではレイリーも額を押さえていた。

 

「やり過ぎだ」

 

呆れた声だった。

 

そしてロジャーを見る。

 

「お前もだ」

 

「俺もか?」

 

「お前以外に誰がいる」

 

即答だった。

 

ロジャーは笑う。

 

「はははっ!」

 

反省の色が全くない。

 

レイリーはさらに呆れた。

 

そして今度はレインを見る。

 

「お前もだ」

 

「俺ですか?」

 

「当然だ」

 

レイリーは断言する。

 

「ロジャーが異常なのは今さらだが、お前まで全力で覇王色をぶつけるな」

 

「いや、だって……」

 

「だってじゃない」

 

レインが言い訳しようとした瞬間、切り捨てられた。

 

ルークも大きく頷く。

 

「レイリーさんの言う通りです」

 

そして二人を交互に見る。

 

「やり過ぎです。二人とも」

 

完全に保護者だった。

 

ロジャーが吹き出す。

 

レインも笑ってしまう。

 

「すみません」

 

「反省してます」

 

「してねぇだろ」

 

レイリーが即座に突っ込む。

 

「してますよ」

 

「お前、今ちょっと嬉しそうだったぞ」

 

図星だった。

 

レインは思わず目を逸らす。

 

確かに少しだけ嬉しかった。

 

二十人も気絶させたことではない。

 

自分の覇気がそれだけ通用したことにだ。

 

それを察したレイリーはため息を吐いた。

 

「全く……」

 

だが、その表情には僅かに笑みも混じっていた。

 

十三歳でここまで来るとは思わなかった。

 

ロジャーも同じ気持ちなのだろう。

 

楽しそうにレインを見ている。

 

「まあいいじゃねぇか」

 

「良くない」

 

「誰も死んでねぇし」

 

「そういう問題じゃない」

 

レイリーの突っ込みが飛ぶ。

 

周囲の船員たちは笑い始めていた。

 

倒れている船員たちも、気絶しているだけで命に別状はない。

 

むしろ後で格好の酒の肴になるだろう。

 

『ロジャーとレインの覇王色で気絶した』

 

そんな話がしばらく船で語られるに違いない。

 

レインは苦笑しながら黎明へ視線を落とした。

 

そして心の中で思う。

 

まだまだだ...

 

ロジャーとの差は遠い。

 

だが今日、その背中を少しだけ見ることが出来た。

 

それだけでも十分な収穫だった。

 

そして、その様子を見ていたロジャーは。

 

「次は拳でもやるか?」

 

と笑顔で言い放った。

 

「やめてください」

 

「やめとけ」

 

「やめといた方が良いです」

 

レイン。

 

レイリー。

 

ルーク。

 

三人の声が見事に揃ったのだった。

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