ONE PIECE 〜船大工レイン〜   作:ペンギンって可愛いですよね

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第百五十三話「慣れ」

 

ロジャーとレインの模擬戦が終わってからしばらく経った。

 

気絶していた船員たちも少しずつ目を覚まし始めている。

 

「いてて……」

 

「何だったんだ今の……」

 

「頭が痛ぇ……」

 

地面に転がっていた船員たちが次々と起き上がる。

 

そんな光景を見ながら、ロジャーは豪快に笑っていた。

 

「はははっ! 思ったより倒れてたな!」

 

「笑い事じゃない」

 

レイリーが即座に突っ込む。

 

ロジャーは反省した様子もなく笑っていた。

 

レインも少し申し訳ない気持ちはある。

 

あるのだが――

 

正直、自分でもここまでとは思わなかった。

 

覇王色同士をぶつけたのは初めてだったのだ。

 

加減など分かるはずもない。

 

「次から気を付けます」

 

「次がある前提なのか……」

 

レイリーが呆れたようにため息を吐く。

 

その時だった。

 

ロジャーがふと気付く。

 

「あれ?」

 

「ん?」

 

レイリーが振り返る。

 

ロジャーは少し離れた場所を指差した。

 

そこにはルークが立っている。

 

何事もなかったかのように。

 

普通に。

 

平然と。

 

「あいつ何で倒れてねぇんだ?」

 

ロジャーが首を傾げる。

 

その言葉に周囲の視線が一斉にルークへ集まった。

 

確かにおかしい。

 

周りには気絶者が大量発生している。

 

ロジャー海賊団の屈強な船員たちですら倒れていた。

 

それなのにルークだけはピンピンしている。

 

レイリーも気付いたらしい。

 

「そう言われてみれば……」

 

「お前、平気だったのか?」

 

ルークへ視線が集まる。

 

すると本人はきょとんとした顔をした。

 

「え?」

 

まるで何を聞かれているのか分からないという顔だった。

 

「いや、だから覇王色だよ」

 

ロジャーが言う。

 

「普通なら気絶するだろ?」

 

ルークは少し考えた。

 

そして当然のように答える。

 

「ああ」

 

「慣れてます」

 

沈黙。

 

ロジャーが固まる。

 

レイリーも固まる。

 

船員たちも固まる。

 

「……慣れてる?」

 

ロジャーが聞き返した。

 

「はい」

 

ルークは頷く。

 

「レインさんの覇気で慣れてます」

 

再び沈黙。

 

レインは嫌な予感がした。

 

ロジャーがゆっくりと振り返る。

 

レイリーも振り返る。

 

船員たちも振り返る。

 

全員の視線がレインへ集中した。

 

「お前」

 

ロジャーが言う。

 

「普段から覇王色ぶっ放してんのか?」

 

「ぶっ放してません!」

 

レインは即座に否定した。

 

「訓練です!」

 

「何が違うんだ」

 

レイリーが呆れる。

 

ルークが補足した。

 

「昔から修行してましたから」

 

「覇王色の威圧に耐える訓練とか」

 

「見聞色の察知訓練とか」

 

「武装色の実験とか」

 

ロジャーが大笑いした。

 

「はははははっ!」

 

「なるほど!」

 

「慣れる訳だ!」

 

レイリーは頭を抱えた。

 

「待て」

 

「覇王色への耐性を付ける訓練なんて聞いたことがないぞ」

 

「俺もです」

 

レインは頷く。

 

「なので試してました」

 

「「「「「試すな!!」」」」」

 

即座に船員たちに突っ込まれた。

 

ルークも苦笑する。

 

「最初は大変でしたよ」

 

「何回も気絶しましたし」

 

ロジャーが笑う。

 

「今は?」

 

「今はだいぶ慣れました」

 

ルークは胸を張った。

 

「レインさんの覇気なら平気です」

 

「ロジャーさんのは流石にきつかったですけど」

 

その言葉に船員たちがざわつく。

 

気絶した連中からすれば信じられない話だった。

 

レインの覇王色に慣れている。

 

それだけで十分異常である。

 

ロジャーは笑いながらルークの肩を叩いた。

 

「お前も大概だな」

 

「そうですか?」

 

「そうだ」

 

即答だった。

 

レイリーも頷く。

 

「普通なら自慢にならないぞ」

 

「え?」

 

ルークは本気で不思議そうだった。

 

レインは思わず吹き出す。

 

相変わらずである。

 

本人に自覚がない。

 

だが、それがルークらしかった。

 

ロジャーはしばらく笑った後、レインを見る。

 

「なるほどな」

 

「何ですか?」

 

「お前が好き勝手研究できる理由が分かった」

 

ロジャーは親指でルークを指差す。

 

「こいつがいるからか」

 

レインも笑った。

 

「否定はしません」

 

実際、その通りだった。

 

どれだけ無茶な発想をしても。

 

どれだけ突飛な研究をしても。

 

ルークは文句を言いながら最後まで付き合ってくれる。

 

だから今のレイン工房がある。

 

ロジャーは満足そうに頷いた。

 

「いい相棒じゃねぇか」

 

その言葉にルークは少し照れ臭そうに頭を掻く。

 

レインも否定しなかった。

 

六年間ずっと隣にいた。

 

兄弟ではない。

 

家族でもない。

 

だが、それ以上に近い存在だった。

 

そしてそんな二人を見ていたレイリーは、小さく笑う。

 

「なるほどな」

 

「何ですか?」

 

レインが聞く。

 

するとレイリーは肩を竦めた。

 

「お前がここまで好き勝手やっても潰れなかった理由だ」

 

その言葉に全員が笑った。

 

確かにその通りだった。

 

レインだけでは今の工房は存在しない。

 

ルークだけでも存在しない。

 

二人だったからこそ、ここまで来られたのだ。

 

そう思わせる一言だった。

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