ONE PIECE 〜船大工レイン〜 作:ペンギンって可愛いですよね
ロジャーとレインの模擬戦が終わってからしばらく経った。
気絶していた船員たちも少しずつ目を覚まし始めている。
「いてて……」
「何だったんだ今の……」
「頭が痛ぇ……」
地面に転がっていた船員たちが次々と起き上がる。
そんな光景を見ながら、ロジャーは豪快に笑っていた。
「はははっ! 思ったより倒れてたな!」
「笑い事じゃない」
レイリーが即座に突っ込む。
ロジャーは反省した様子もなく笑っていた。
レインも少し申し訳ない気持ちはある。
あるのだが――
正直、自分でもここまでとは思わなかった。
覇王色同士をぶつけたのは初めてだったのだ。
加減など分かるはずもない。
「次から気を付けます」
「次がある前提なのか……」
レイリーが呆れたようにため息を吐く。
その時だった。
ロジャーがふと気付く。
「あれ?」
「ん?」
レイリーが振り返る。
ロジャーは少し離れた場所を指差した。
そこにはルークが立っている。
何事もなかったかのように。
普通に。
平然と。
「あいつ何で倒れてねぇんだ?」
ロジャーが首を傾げる。
その言葉に周囲の視線が一斉にルークへ集まった。
確かにおかしい。
周りには気絶者が大量発生している。
ロジャー海賊団の屈強な船員たちですら倒れていた。
それなのにルークだけはピンピンしている。
レイリーも気付いたらしい。
「そう言われてみれば……」
「お前、平気だったのか?」
ルークへ視線が集まる。
すると本人はきょとんとした顔をした。
「え?」
まるで何を聞かれているのか分からないという顔だった。
「いや、だから覇王色だよ」
ロジャーが言う。
「普通なら気絶するだろ?」
ルークは少し考えた。
そして当然のように答える。
「ああ」
「慣れてます」
沈黙。
ロジャーが固まる。
レイリーも固まる。
船員たちも固まる。
「……慣れてる?」
ロジャーが聞き返した。
「はい」
ルークは頷く。
「レインさんの覇気で慣れてます」
再び沈黙。
レインは嫌な予感がした。
ロジャーがゆっくりと振り返る。
レイリーも振り返る。
船員たちも振り返る。
全員の視線がレインへ集中した。
「お前」
ロジャーが言う。
「普段から覇王色ぶっ放してんのか?」
「ぶっ放してません!」
レインは即座に否定した。
「訓練です!」
「何が違うんだ」
レイリーが呆れる。
ルークが補足した。
「昔から修行してましたから」
「覇王色の威圧に耐える訓練とか」
「見聞色の察知訓練とか」
「武装色の実験とか」
ロジャーが大笑いした。
「はははははっ!」
「なるほど!」
「慣れる訳だ!」
レイリーは頭を抱えた。
「待て」
「覇王色への耐性を付ける訓練なんて聞いたことがないぞ」
「俺もです」
レインは頷く。
「なので試してました」
「「「「「試すな!!」」」」」
即座に船員たちに突っ込まれた。
ルークも苦笑する。
「最初は大変でしたよ」
「何回も気絶しましたし」
ロジャーが笑う。
「今は?」
「今はだいぶ慣れました」
ルークは胸を張った。
「レインさんの覇気なら平気です」
「ロジャーさんのは流石にきつかったですけど」
その言葉に船員たちがざわつく。
気絶した連中からすれば信じられない話だった。
レインの覇王色に慣れている。
それだけで十分異常である。
ロジャーは笑いながらルークの肩を叩いた。
「お前も大概だな」
「そうですか?」
「そうだ」
即答だった。
レイリーも頷く。
「普通なら自慢にならないぞ」
「え?」
ルークは本気で不思議そうだった。
レインは思わず吹き出す。
相変わらずである。
本人に自覚がない。
だが、それがルークらしかった。
ロジャーはしばらく笑った後、レインを見る。
「なるほどな」
「何ですか?」
「お前が好き勝手研究できる理由が分かった」
ロジャーは親指でルークを指差す。
「こいつがいるからか」
レインも笑った。
「否定はしません」
実際、その通りだった。
どれだけ無茶な発想をしても。
どれだけ突飛な研究をしても。
ルークは文句を言いながら最後まで付き合ってくれる。
だから今のレイン工房がある。
ロジャーは満足そうに頷いた。
「いい相棒じゃねぇか」
その言葉にルークは少し照れ臭そうに頭を掻く。
レインも否定しなかった。
六年間ずっと隣にいた。
兄弟ではない。
家族でもない。
だが、それ以上に近い存在だった。
そしてそんな二人を見ていたレイリーは、小さく笑う。
「なるほどな」
「何ですか?」
レインが聞く。
するとレイリーは肩を竦めた。
「お前がここまで好き勝手やっても潰れなかった理由だ」
その言葉に全員が笑った。
確かにその通りだった。
レインだけでは今の工房は存在しない。
ルークだけでも存在しない。
二人だったからこそ、ここまで来られたのだ。
そう思わせる一言だった。