ONE PIECE 〜船大工レイン〜   作:ペンギンって可愛いですよね

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第百五十六話「雨神造船計画」

 

翌日。

 

レイン工房の二階。

 

設計室には大量の紙が広げられていた。

 

レインは机に向かい、真剣な表情でペンを走らせている。

 

カリカリカリ。

 

紙へ線が引かれる。

 

カリカリカリ。

 

新たな図面が生まれる。

 

その姿は完全に仕事モードだった。

 

ルークはそんなレインを見ながら呟く。

 

「昨日からずっとですよね」

 

返事はない。

 

集中している。

 

こうなるとレインは周りが見えなくなる。

 

ルークは知っていた。

 

新しい発明。

 

新しい機械。

 

新しい事業。

 

何かを思いついた時のレインはこうなる。

 

だから邪魔はしない。

 

ただ見守るだけだ。

 

さらに一時間後。

 

レインがようやくペンを置いた。

 

「よし」

 

達成感のある声だった。

 

ルークが近付く。

 

机の上には巨大な設計図が広がっている。

 

「出来ました?」

 

「ああ」

 

レインは満足そうに頷いた。

 

ルークは図面を見る。

 

そして数秒後。

 

頭を抱えた。

 

「小型船ですよね?」

 

「小型船だぞ」

 

「嘘です」

 

即答だった。

 

レインは不満そうな顔をする。

 

だがルークは引かなかった。

 

なぜなら。

 

どう見てもおかしいからだ。

 

「船体補強」

 

「うん」

 

「二重構造」

 

「うん」

 

「特殊倉庫」

 

「うん」

 

「大型帆」

 

「うん」

 

「予備帆」

 

「うん」

 

「緊急修理設備」

 

「うん」

 

「浄水装置」

 

「うん」

 

「雨水回収機能」

 

「うん」

 

「武器庫」

 

「うん」

 

「これ本当に小型船ですか?」

 

レインは腕を組む。

 

「小型だ」

 

「小型の定義がおかしいんですよ」

 

レインは聞こえないふりをした。

 

だが本人的には真面目だった。

 

一人で航海する。

 

だからこそ安全性は必要。

 

遠出する。

 

だからこそ長期航海能力も必要。

 

そして何より。

 

自分が作る船なのだ。

 

妥協する理由がなかった。

 

「名前も決めた」

 

その言葉にルークが反応する。

 

「もうですか?」

 

「ああ」

 

レインは笑った。

 

そして設計図の右上を指差す。

 

そこには大きな文字で船名が書かれていた。

 

『雨神』

 

ルークがその文字を読む。

 

「雨神……」

 

「うじんだ」

 

レインが説明する。

 

「俺の名前はレインだろ?」

 

「雨ですね」

 

「だから雨神」

 

ルークは少し考えた。

 

そして頷く。

 

「格好良いですね」

 

レインも笑った。

 

単純だ。

 

だが気に入っていた。

 

自分の初めての船。

 

自分だけの船。

 

だからこそ、自分らしい名前を付けたかった。

 

「雨神か」

 

レインは設計図を見つめる。

 

胸が高鳴った。

 

飛行機を考えた時と似ている。

 

新しいことが始まる予感。

 

未知への期待。

 

そんな感情が溢れてくる。

 

ルークが設計図を眺める。

 

「どれくらいで出来そうですか?」

 

「材料が揃えば一週間かな」

 

「早っ!」

 

職人でもないルークですら驚いた。

 

普通の船ならもっとかかる。

 

だがレイン工房は普通ではない。

 

滑車。

 

作業設備。

 

分業体制。

 

そして何よりレイン自身の設計能力。

 

既に島でも最大級の工房になっている。

 

レインは立ち上がった。

 

「よし」

 

その目が輝く。

 

ルークが嫌な予感を覚える。

 

「何ですか?」

 

「職人たちを集める」

 

「ああ……」

 

ルークは悟った。

 

また始まるのだ。

 

レインの新しい計画が。

 

数分後。

 

工房の職人たちが集められた。

 

ベテラン船大工。

 

若手職人。

 

鍛冶師。

 

全員が首を傾げている。

 

レインは設計図を広げた。

 

そして言う。

 

「新しい船を作る」

 

職人たちがざわついた。

 

だが、それは驚きではない。

 

期待だった。

 

レインが作るものはいつも面白い。

 

だから全員が興味を持つ。

 

「名前は雨神」

 

レインは続ける。

 

「小型船だ」

 

すると職人の一人が設計図を見る。

 

そして。

 

吹き出した。

 

「これ小型船か?」

 

周囲から笑いが起こる。

 

ルークが小さく呟いた。

 

「ですよね」

 

だが職人たちの目は輝いていた。

 

誰も見たことがない船。

 

誰も考えたことがない設計。

 

だからこそ面白い。

 

レインは笑う。

 

「作るぞ」

 

その一言で空気が変わった。

 

職人たちも笑う。

 

「おう!」

 

「面白そうじゃねぇか!」

 

「やってやる!」

 

工房に活気が満ちる。

 

新しい挑戦。

 

新しい船。

 

そして、初めての本格的な航海。

 

ロジャーが去ってから一週間。

 

止まっていた歯車が再び動き始めた。

 

その中心にいるレインはまだ知らない。

 

この『雨神』が、やがて東の海で数々の伝説を生むことになるのを。

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