ONE PIECE 〜船大工レイン〜 作:ペンギンって可愛いですよね
翌日。
レイン工房の二階。
設計室には大量の紙が広げられていた。
レインは机に向かい、真剣な表情でペンを走らせている。
カリカリカリ。
紙へ線が引かれる。
カリカリカリ。
新たな図面が生まれる。
その姿は完全に仕事モードだった。
ルークはそんなレインを見ながら呟く。
「昨日からずっとですよね」
返事はない。
集中している。
こうなるとレインは周りが見えなくなる。
ルークは知っていた。
新しい発明。
新しい機械。
新しい事業。
何かを思いついた時のレインはこうなる。
だから邪魔はしない。
ただ見守るだけだ。
さらに一時間後。
レインがようやくペンを置いた。
「よし」
達成感のある声だった。
ルークが近付く。
机の上には巨大な設計図が広がっている。
「出来ました?」
「ああ」
レインは満足そうに頷いた。
ルークは図面を見る。
そして数秒後。
頭を抱えた。
「小型船ですよね?」
「小型船だぞ」
「嘘です」
即答だった。
レインは不満そうな顔をする。
だがルークは引かなかった。
なぜなら。
どう見てもおかしいからだ。
「船体補強」
「うん」
「二重構造」
「うん」
「特殊倉庫」
「うん」
「大型帆」
「うん」
「予備帆」
「うん」
「緊急修理設備」
「うん」
「浄水装置」
「うん」
「雨水回収機能」
「うん」
「武器庫」
「うん」
「これ本当に小型船ですか?」
レインは腕を組む。
「小型だ」
「小型の定義がおかしいんですよ」
レインは聞こえないふりをした。
だが本人的には真面目だった。
一人で航海する。
だからこそ安全性は必要。
遠出する。
だからこそ長期航海能力も必要。
そして何より。
自分が作る船なのだ。
妥協する理由がなかった。
「名前も決めた」
その言葉にルークが反応する。
「もうですか?」
「ああ」
レインは笑った。
そして設計図の右上を指差す。
そこには大きな文字で船名が書かれていた。
『雨神』
ルークがその文字を読む。
「雨神……」
「うじんだ」
レインが説明する。
「俺の名前はレインだろ?」
「雨ですね」
「だから雨神」
ルークは少し考えた。
そして頷く。
「格好良いですね」
レインも笑った。
単純だ。
だが気に入っていた。
自分の初めての船。
自分だけの船。
だからこそ、自分らしい名前を付けたかった。
「雨神か」
レインは設計図を見つめる。
胸が高鳴った。
飛行機を考えた時と似ている。
新しいことが始まる予感。
未知への期待。
そんな感情が溢れてくる。
ルークが設計図を眺める。
「どれくらいで出来そうですか?」
「材料が揃えば一週間かな」
「早っ!」
職人でもないルークですら驚いた。
普通の船ならもっとかかる。
だがレイン工房は普通ではない。
滑車。
作業設備。
分業体制。
そして何よりレイン自身の設計能力。
既に島でも最大級の工房になっている。
レインは立ち上がった。
「よし」
その目が輝く。
ルークが嫌な予感を覚える。
「何ですか?」
「職人たちを集める」
「ああ……」
ルークは悟った。
また始まるのだ。
レインの新しい計画が。
数分後。
工房の職人たちが集められた。
ベテラン船大工。
若手職人。
鍛冶師。
全員が首を傾げている。
レインは設計図を広げた。
そして言う。
「新しい船を作る」
職人たちがざわついた。
だが、それは驚きではない。
期待だった。
レインが作るものはいつも面白い。
だから全員が興味を持つ。
「名前は雨神」
レインは続ける。
「小型船だ」
すると職人の一人が設計図を見る。
そして。
吹き出した。
「これ小型船か?」
周囲から笑いが起こる。
ルークが小さく呟いた。
「ですよね」
だが職人たちの目は輝いていた。
誰も見たことがない船。
誰も考えたことがない設計。
だからこそ面白い。
レインは笑う。
「作るぞ」
その一言で空気が変わった。
職人たちも笑う。
「おう!」
「面白そうじゃねぇか!」
「やってやる!」
工房に活気が満ちる。
新しい挑戦。
新しい船。
そして、初めての本格的な航海。
ロジャーが去ってから一週間。
止まっていた歯車が再び動き始めた。
その中心にいるレインはまだ知らない。
この『雨神』が、やがて東の海で数々の伝説を生むことになるのを。