ONE PIECE 〜船大工レイン〜   作:ペンギンって可愛いですよね

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第百五十七話「雨神建造開始」

 

翌日。

 

レイン工房は朝から異様な熱気に包まれていた。

 

まだ日も昇りきっていない。

 

それにもかかわらず、工房には既に大勢の職人たちが集まっていた。

 

理由は一つ。

 

新型船『雨神』である。

 

「材料確認終わりました!」

 

「木材搬入完了!」

 

「鍛冶班も準備できてます!」

 

あちこちから声が飛ぶ。

 

いつも忙しい工房だったが、今日は特別だった。

 

職人たち全員がどこか楽しそうなのだ。

 

レインが作る新しい船。

 

それだけで皆の心は躍っていた。

 

二階からその様子を見ていたレインは満足そうに頷く。

 

「よし」

 

隣ではルークが腕を組んでいた。

 

「本当に始まるんですね」

 

「始まるぞ」

 

「まだ信じられません」

 

レインは笑う。

 

「今さらだろ」

 

「それもそうですね」

 

六年間。

 

散々振り回されてきた。

 

今さら新しい船一つで驚くことはない。

 

だが、今回だけは少し違った。

 

工房始まって以来の大仕事なのだ。

 

レインは階段を下りる。

 

すると職人たちの視線が集まった。

 

自然と空気が引き締まる。

 

まだ十三歳。

 

だが、この工房の中心は間違いなくレインだった。

 

「聞いてくれ」

 

工房が静かになる。

 

レインは設計図を広げた。

 

巨大な雨神の図面。

 

誰が見ても普通の船ではない。

 

「建造期間は一週間」

 

沈黙。

 

そして、

 

「無理だろ!」

 

職人の一人が叫んだ。

 

周囲からも同意の声が上がる。

 

「一週間!?」

 

「正気か!?」

 

「普通なら数か月だぞ!」

 

大騒ぎだった。

 

ルークは思った。

 

やっぱりそうなるよな。

 

だがレインは落ち着いていた。

 

「普通ならな」

 

職人たちが黙る。

 

レインは続けた。

 

「だが俺たちは普通じゃない」

 

その言葉に何人かが笑った。

 

確かにそうだ。

 

この工房は普通ではない。

 

滑車を大量導入した。

 

分業体制も整えた。

 

新しい工具も作った。

 

作業効率は島で圧倒的だった。

 

レインは設計図を指差す。

 

「船体班」

 

「おう!」

 

「鍛冶班」

 

「任せろ!」

 

「内装班」

 

「了解!」

 

次々と返事が返ってくる。

 

職人たちの目が変わり始めていた。

 

無理だと思った。

 

だが、出来るかもしれない。

 

そんな気持ちになってきたのだ。

 

レインは笑う。

 

「目標は一週間」

 

「やってやろうじゃねぇか!」

 

誰かが叫ぶ。

 

工房中から歓声が上がった。

 

その瞬間、雨神建造計画が正式に始動した。

 

木材が運ばれる。

 

鉄が打たれる。

 

職人たちが走り回る。

 

工房は戦場のような忙しさになった。

 

だが誰一人文句を言わない。

 

むしろ楽しそうだった。

 

昼。

 

夕方。

 

そして夜。

 

作業は止まらない。

 

交代制で進み続ける。

 

レインも休まなかった。

 

設計確認。

 

寸法確認。

 

強度計算。

 

問題が見つかれば即座に修正。

 

職人たちも驚く。

 

「本当に十三歳か?」

 

「化け物だな」

 

「寝てるのかあいつ」

 

そんな声が聞こえてくる。

 

レイン本人は聞いていなかった。

 

完全に集中していた。

 

そして三日後、

 

港。

 

巨大な骨組みが姿を現していた。

 

まだ完成には遠い。

 

だが、確かに船だった。

 

職人たちはその姿を見上げる。

 

「本当に出来そうだな……」

 

誰かが呟いた。

 

一週間など無理だと思っていた。

 

だが今は違う。

 

完成が見えている。

 

レインは船体を見上げながら頷いた。

 

「間に合うな」

 

その時だった。

 

「レイン」

 

聞き慣れた声がする。

 

振り返る。

 

父だった。

 

仕事帰りらしく、少し疲れた顔をしている。

 

だが表情は真剣だった。

 

レインは首を傾げる。

 

「どうしたの?」

 

父はしばらく雨神を見上げる。

 

そしてゆっくりと口を開いた。

 

「本当に行くのか?」

 

港に静寂が落ちた。

 

近くにいたルークも動きを止める。

 

職人たちも空気を読んで少し離れた。

 

父の言葉の意味は分かる。

 

試験航海の話ではない。

 

海へ出るということ。

 

島の外へ出るということ。

 

それを聞いているのだ。

 

レインは少しだけ考えた。

 

そして真っ直ぐ父を見る。

 

「うん」

 

迷いはなかった。

 

「行くよ」

 

父は何も言わない。

 

ただレインの目を見ていた。

 

その瞳に迷いがないことを理解する。

 

そして小さく息を吐いた。

 

「そうか」

 

短い言葉だった。

 

だが、その中には色々な感情が詰まっていた。

 

心配。

 

不安。

 

誇らしさ。

 

寂しさ。

 

様々な感情が混ざっている。

 

レインはそれを感じ取った。

 

だからこそ何も言わない。

 

父も何も言わない。

 

ただ完成途中の雨神だけが、夕日に照らされて静かに港に佇んでいた。

 

そして、父の問いに対する本当の答えは、きっと近いうちに家族全員で話すことになるのだった。

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