ONE PIECE 〜船大工レイン〜   作:ペンギンって可愛いですよね

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第百六十二話「初遭遇」

 

「帰りましょう」

 

「何で?」

 

「何でじゃありません」

 

ルークは真顔だった。

 

レインも真顔だった。

 

だが二人の考えていることは全く違う。

 

ルークは面倒事を避けたい。

 

レインは面倒事へ突撃したい。

 

いつものことである。

 

「レインさん」

 

「何だ?」

 

「何で出航初日に海賊船と遭遇するんですか?」

 

「知らん」

 

「絶対厄年ですよ」

 

「まだ十三歳だぞ」

 

「年齢の問題じゃありません!」

 

ルークは叫んだ。

 

レインは首を傾げる。

 

意味が分からない。

 

だがルークからすれば意味が分からないのはこちらだった。

 

出航初日。

 

初航海。

 

まだ島を出て数時間。

 

それなのに海賊船発見。

 

どう考えてもおかしい。

 

「トラブルメーカー過ぎます!」

 

「俺のせいじゃないだろ」

 

「本当にそうですか?」

 

ルークが疑いの目を向ける。

 

レインは少し考えた。

 

そして答える。

 

「多分」

 

「信用できません」

 

即答だった。

 

レインは肩を竦める。

 

するとルークがさらに何かに気付いた。

 

「というか」

 

「ん?」

 

「もっと早く見聞色を使っていたら避けられましたよね?」

 

沈黙。

 

レインが視線を逸らした。

 

ルークの額に青筋が浮かぶ。

 

「避けられましたよね?」

 

「まあ……」

 

「避けられましたよね?」

 

「可能性はあったな」

 

認めた。

 

ルークは頭を抱えた。

 

「やっぱり!」

 

レインは苦笑する。

 

確かに避けられた。

 

かなり前から存在には気付いていたのだ。

 

だが問題はそこではない。

 

「だって海賊だぞ?」

 

「そうですね」

 

「実戦経験になる」

 

「嫌な予感しかしません」

 

「剣術の修行にもなる」

 

「もっと嫌な予感しかしません」

 

「賞金首なら金も入る」

 

「本音が出ましたね?」

 

レインは笑った。

 

否定はしない。

 

実際その通りだった。

 

ロジャーに言われた。

 

剣術を覚えろと。

 

強くなれと。

 

だから実戦経験は欲しい。

 

しかも相手は海賊。

 

東の海の治安改善にもなる。

 

誰も困らない。

 

少なくともレインはそう思っていた。

 

ルークは思っていなかった。

 

「絶対面倒事ですよ」

 

「海賊だからな」

 

「だからです!」

 

二人の会話は平行線だった。

 

その時だった。

 

レインが再び見聞色を広げる。

 

そして少し驚いたような顔をする。

 

「思ったより近いな」

 

「近付いてるんですか?」

 

「ああ」

 

ルークも望遠鏡を取り出す。

 

まだ小さい。

 

だが確かに船影が見えた。

 

帆がある。

 

船首も見える。

 

そして、黒い旗。

 

ドクロのマーク。

 

ルークはため息を吐いた。

 

「本物ですね」

 

「ああ」

 

レインの声は少し楽しそうだった。

 

ルークは嫌な予感しかしなかった。

 

その横でレインは考える。

 

初めての海賊。

 

初めての実戦。

 

初めての海賊狩り。

 

少しだけ胸が高鳴った。

 

前世では経験できなかったことだ。

 

もちろん油断はしない。

 

だが楽しみではある。

 

「何人くらいだ?」

 

見聞色を広げる。

 

生命反応を数える。

 

一人。

 

二人。

 

三人。

 

次々と数えていく。

 

そして。

 

「二十八人」

 

「結構いますね」

 

「ああ」

 

「帰りましょう」

 

「何でだよ」

 

「普通はそうなんです!」

 

ルークが叫ぶ。

 

レインは笑った。

 

するとルークが真面目な顔になる。

 

「ちなみに強そうですか?」

 

「そんなに強くない」

 

「根拠は?」

 

「見聞色」

 

レインは答えた。

 

覇気を感じる。

 

生命力を感じる。

 

少なくともロジャー海賊団とは比較にもならない。

 

ガープにも遠く及ばない。

 

レイリーとも比較にならない。

 

つまり、今のレインでも十分対応できる相手だ。

 

まぁ、まずロジャークラスの海賊など世界にもほぼいないが...

 

「じゃあ問題ないな」

 

「あります」

 

ルークは即答した。

 

「レインさん基準が信用できません」

 

「酷いな」

 

「事実です」

 

それは否定できなかった。

 

その時だった。

 

遠くの船がこちらへ進路を変える。

 

ルークが固まる。

 

レインは笑った。

 

「向こうも気付いたな」

 

「でしょうね」

 

雨神は小型船だ。

 

しかも新造船。

 

海賊から見れば格好の獲物に見えるだろう。

 

ルークは大きく息を吐いた。

 

そして諦めた。

 

ここまで来たら逃げられない。

 

いや、正確には逃げられる。

 

だがレインが逃げない。

 

それが一番の問題だった。

 

「一応聞きます」

 

「何だ?」

 

「どうするんですか?」

 

レインは海賊船を見る。

 

そして腰の黎明へ手を添えた。

 

ロジャーとの戦いを思い出す。

 

剣は下手くそ、確かにその通りだった。

 

だから、まずは一歩、前へ進む。

 

レインは笑った。

 

「実戦訓練だ」

 

ルークは天を仰いだ。

 

やっぱりこうなった。

 

出航初日。

 

初航海。

 

初遭遇。

 

そして初戦闘。

 

普通ならあり得ない。

 

だが相手がレインなら十分あり得る。

 

そう理解してしまった自分が少し嫌だった。

 

夕日に染まる海、二隻の船はゆっくりと距離を縮めていく。

 

そしてレインにとって初めての海賊狩りが、まさに始まろうとしていた。

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