ONE PIECE 〜船大工レイン〜 作:ペンギンって可愛いですよね
「帰りましょう」
「何で?」
「何でじゃありません」
ルークは真顔だった。
レインも真顔だった。
だが二人の考えていることは全く違う。
ルークは面倒事を避けたい。
レインは面倒事へ突撃したい。
いつものことである。
「レインさん」
「何だ?」
「何で出航初日に海賊船と遭遇するんですか?」
「知らん」
「絶対厄年ですよ」
「まだ十三歳だぞ」
「年齢の問題じゃありません!」
ルークは叫んだ。
レインは首を傾げる。
意味が分からない。
だがルークからすれば意味が分からないのはこちらだった。
出航初日。
初航海。
まだ島を出て数時間。
それなのに海賊船発見。
どう考えてもおかしい。
「トラブルメーカー過ぎます!」
「俺のせいじゃないだろ」
「本当にそうですか?」
ルークが疑いの目を向ける。
レインは少し考えた。
そして答える。
「多分」
「信用できません」
即答だった。
レインは肩を竦める。
するとルークがさらに何かに気付いた。
「というか」
「ん?」
「もっと早く見聞色を使っていたら避けられましたよね?」
沈黙。
レインが視線を逸らした。
ルークの額に青筋が浮かぶ。
「避けられましたよね?」
「まあ……」
「避けられましたよね?」
「可能性はあったな」
認めた。
ルークは頭を抱えた。
「やっぱり!」
レインは苦笑する。
確かに避けられた。
かなり前から存在には気付いていたのだ。
だが問題はそこではない。
「だって海賊だぞ?」
「そうですね」
「実戦経験になる」
「嫌な予感しかしません」
「剣術の修行にもなる」
「もっと嫌な予感しかしません」
「賞金首なら金も入る」
「本音が出ましたね?」
レインは笑った。
否定はしない。
実際その通りだった。
ロジャーに言われた。
剣術を覚えろと。
強くなれと。
だから実戦経験は欲しい。
しかも相手は海賊。
東の海の治安改善にもなる。
誰も困らない。
少なくともレインはそう思っていた。
ルークは思っていなかった。
「絶対面倒事ですよ」
「海賊だからな」
「だからです!」
二人の会話は平行線だった。
その時だった。
レインが再び見聞色を広げる。
そして少し驚いたような顔をする。
「思ったより近いな」
「近付いてるんですか?」
「ああ」
ルークも望遠鏡を取り出す。
まだ小さい。
だが確かに船影が見えた。
帆がある。
船首も見える。
そして、黒い旗。
ドクロのマーク。
ルークはため息を吐いた。
「本物ですね」
「ああ」
レインの声は少し楽しそうだった。
ルークは嫌な予感しかしなかった。
その横でレインは考える。
初めての海賊。
初めての実戦。
初めての海賊狩り。
少しだけ胸が高鳴った。
前世では経験できなかったことだ。
もちろん油断はしない。
だが楽しみではある。
「何人くらいだ?」
見聞色を広げる。
生命反応を数える。
一人。
二人。
三人。
次々と数えていく。
そして。
「二十八人」
「結構いますね」
「ああ」
「帰りましょう」
「何でだよ」
「普通はそうなんです!」
ルークが叫ぶ。
レインは笑った。
するとルークが真面目な顔になる。
「ちなみに強そうですか?」
「そんなに強くない」
「根拠は?」
「見聞色」
レインは答えた。
覇気を感じる。
生命力を感じる。
少なくともロジャー海賊団とは比較にもならない。
ガープにも遠く及ばない。
レイリーとも比較にならない。
つまり、今のレインでも十分対応できる相手だ。
まぁ、まずロジャークラスの海賊など世界にもほぼいないが...
「じゃあ問題ないな」
「あります」
ルークは即答した。
「レインさん基準が信用できません」
「酷いな」
「事実です」
それは否定できなかった。
その時だった。
遠くの船がこちらへ進路を変える。
ルークが固まる。
レインは笑った。
「向こうも気付いたな」
「でしょうね」
雨神は小型船だ。
しかも新造船。
海賊から見れば格好の獲物に見えるだろう。
ルークは大きく息を吐いた。
そして諦めた。
ここまで来たら逃げられない。
いや、正確には逃げられる。
だがレインが逃げない。
それが一番の問題だった。
「一応聞きます」
「何だ?」
「どうするんですか?」
レインは海賊船を見る。
そして腰の黎明へ手を添えた。
ロジャーとの戦いを思い出す。
剣は下手くそ、確かにその通りだった。
だから、まずは一歩、前へ進む。
レインは笑った。
「実戦訓練だ」
ルークは天を仰いだ。
やっぱりこうなった。
出航初日。
初航海。
初遭遇。
そして初戦闘。
普通ならあり得ない。
だが相手がレインなら十分あり得る。
そう理解してしまった自分が少し嫌だった。
夕日に染まる海、二隻の船はゆっくりと距離を縮めていく。
そしてレインにとって初めての海賊狩りが、まさに始まろうとしていた。