ONE PIECE 〜船大工レイン〜 作:ペンギンって可愛いですよね
海賊船との距離は着実に縮まっていた。
既に相手の船体もはっきり見える。
船首には数人の海賊が立ち、こちらを指差して何か騒いでいた。
どうやら完全に獲物だと思っているらしい。
「帰りましょう」
ルークは諦めずに言った。
「まだ言うのか」
「言います」
即答だった。
レインは苦笑する。
すると、その時だった。
ふと一つの問題に気付いた。
「あ」
「何ですか」
ルークが警戒したような目を向ける。
レインが何か思い付いた時、大抵ろくなことにならない。
それは六年間の付き合いで嫌というほど理解していた。
「このまま海賊を狩ったら有名になるな」
ルークは一瞬きょとんとした。
だが、すぐに納得する。
確かにその通りだった。
十三歳の少年が小型船一隻で海賊を倒したとなれば噂になる。
しかも海賊相手に覇気を使えば尚更だ。
工房の存在まで知られる可能性もある。
「それは確かに困りますね」
「だろ?」
レインは頷く。
今の工房は順調だ。
余計な注目は集めたくない。
世界政府にも海軍にも、まだ目を付けられたくはない。
もちろんガープ達は別だ。
だが、あまり騒がれるのは避けたい。
「ということで」
レインは船内へ向かう。
ルークは嫌な予感しかしなかった。
数分後...戻って来たレインを見て、ルークは頭を抱えた。
「やっぱりですか」
レインは黒い外套を羽織っていた。
深く被れるフード付きである。
顔もかなり隠れる。
「どうだ?」
レインが聞く。
ルークは真顔だった。
「怪しいです」
即答だった。
「何でだ」
「むしろ海賊より怪しいです」
「失礼だな」
レインは不満そうだった。
だがルークは引かない。
「いや、本当に怪しいですよ」
「そうか?」
「夜道で会ったら逃げます」
「酷くないか?」
「事実です」
レインはため息を吐いた。
だが、それでもフードは脱がない。
顔が隠れれば目的は果たせる。
多少怪しくても問題ない。
レインの中ではそういう結論だった。
ルークはもう何も言わない。
言っても無駄だと知っているからだ。
その間にも海賊船は近付いてくる。
レインは見聞色を広げた。
船内の気配を探る。
二十八人。
数は変わらない。
そして一人だけ少し強い反応がある。
おそらく船長だろう。
「船長が一番強そうだな」
レインが呟く。
ルークが振り返る。
「ちゃんと分析してたんですね」
「当たり前だろ」
レインは肩を竦めた。
「勝てない相手に喧嘩売るほど馬鹿じゃない」
それは事実だった。
レインは無謀ではない。
ロジャーやガープに挑んだのも、自分が死なないと分かっていたからだ。
今回も同じ。
見聞色で相手を確認し、自分なら対処できると判断している。
だから戦う。
ルークは少し安心した。
少しだけだが。
その時だった。
海賊船の方から大声が響く。
「そこの船ぃ!」
レインとルークが視線を向ける。
海賊達が甲板に集まっている。
「止まれぇ!!」
どうやら交渉する気はないらしい。
最初から襲うつもりのようだ。
レインは口元を吊り上げた。
「来たな」
そう言いながらフードを深く被る。
腰には最上大業物『黎明』。
ロジャーに剣術の未熟さを指摘されてから初めての実戦だ。
胸が高鳴る。
そしてレインは振り返った。
「ルーク」
「何ですか?」
「船は任せた」
ルークは数秒黙った後、深いため息を吐いた。
「嫌な予感しかしません」
レインは笑った。
その直後、海賊船との距離は、ついに戦闘圏内へ入った。