ONE PIECE 〜船大工レイン〜 作:ペンギンって可愛いですよね
「出航初日で八百万ベリーですか」
海軍支部の廊下を歩きながら、ルークが呟いた。
レインは受け取ったばかりの懸賞金の袋を軽く持ち上げる。
「儲かったな」
「感想が商人なんですよ」
「大事だろ?」
「大事ですけど、そこじゃないんです」
ルークは深いため息を吐いた。
出航初日。
海賊船発見。
戦闘。
賞金首討伐。
懸賞金獲得。
普通なら数か月分の出来事を一日で終わらせている。
だがレインは平然としていた。
むしろ順調だと思っている節すらある。
「それにしても」
レインは袋を見ながら言った。
「八百万か」
「多いですね」
「ああ」
正直なところ、思ったより多かった。
東の海の海賊だから高くても数百万程度だと思っていたのだ。
「これなら雨神の改修費くらい簡単に出るな」
「また何か付ける気ですか?」
「もちろん」
即答だった。
ルークは頭を抱えた。
嫌な予感しかしない。
その時だった。
近くにいた海兵が二人の会話を聞いていたらしく、苦笑しながら近付いてきた。
「船を改修するのか?」
「船大工なんで」
レインが答える。
すると海兵は納得したように頷いた。
「なるほど」
「船大工で賞金稼ぎとは珍しいですね」
ルークが言う。
海兵は笑った。
「東の海じゃ初めて見たな」
そして少し声を潜める。
「だが助かった」
「助かった?」
レインが首を傾げる。
「あの海賊団、最近被害が増えてたんだ」
海兵はそう言って肩を竦めた。
「船が足りなくてな。追い掛けても逃げられることが多かった」
レインは少し驚いた。
「海軍でもそういうことがあるのか」
「あるさ」
海兵は苦笑した。
「東の海は広いからな」
確かにそうだろう。
島と島の距離もある。
海軍だって万能ではない。
「だから賞金稼ぎは歓迎だ」
海兵はそう言って笑った。
「海賊を減らしてくれるならな」
レインも笑う。
利害は一致している。
その時だった。
レインの視線が壁へ向く。
大量の手配書。
海軍支部へ入った時にも見たが、改めて見ると中々壮観だった。
賞金首。
賞金首。
賞金首。
壁一面に貼られている。
レインは自然と足を止めた。
ルークは嫌な予感を覚えた。
「レインさん」
「何だ?」
「その顔やめてください」
「どんな顔だ?」
「獲物を探してる顔です」
レインは否定しなかった。
海兵が吹き出す。
「仲が良いんだな」
「苦労してるだけです」
ルークは真顔だった。
レインは手配書を眺める。
三百万。
五百万。
七百万。
中には千万を超える賞金首もいた。
「思ったより多いな」
「海賊か?」
海兵が聞く。
「ああ」
レインは頷いた。
「東の海って平和な海だと思ってた」
その言葉に海兵は苦笑する。
「他の海よりは平和だ」
「ただ海賊がいない訳じゃない」
「なるほど」
レインは納得した。
確かにロジャー海賊団ですら東の海へ来ている。
平和とはいえ危険がない訳ではないのだろう。
すると海兵が一枚の紙を差し出した。
「これ持っていくか?」
「何だ?」
紙を受け取るとそこには東の海で特に警戒されている海賊たちの情報がまとめられていた。
活動海域。
懸賞金。
船の特徴。
目撃情報。
思った以上に詳しい。
レインの目が少し輝く。
ルークは頭を抱えた。
「やっぱり」
「便利だな」
レインは素直に感心した。
海兵は笑う。
「どうせ賞金稼ぎだろ?」
「まあな」
「なら役立つ」
確かにその通りだった。
情報は力である。
特に海では。
レインは紙を折り畳み懐へ入れた。
「助かる」
「海賊を減らしてくれるなら安いもんさ」
海兵はそう言って手を振った。
二人も軽く会釈する。
そして海軍支部を後にした。
外へ出ると夕日が海を赤く染めていた。
港には雨神が停泊している。
まだ出航して数時間しか経っていないのに、随分遠くまで来た気がした。
「どうします?」
ルークが聞く。
レインは少し考える。
そして笑った。
「町へ行こう」
「町?」
「ああ」
レインは頷く。
「せっかく外へ出たんだ」
「色々見てみたい」
造船所。
鍛冶屋。
本屋。
商店。
見たことのない技術。
見たことのない商品。
興味は尽きない。
ルークは苦笑した。
海賊狩りと言いながら、結局こういうところはレインらしい。
レインは夕日に染まる町並みを見つめる。
東の海は、まだ知らないことだらけだ。
だからこそ面白い。
そう思いながら、二人は港町へ向かって歩き出したのだった。