ONE PIECE 〜船大工レイン〜 作:ペンギンって可愛いですよね
翌日、レインとルークは港町の食堂にいた。
海軍支部の近くにある。
町でも評判の店らしい。
朝から人が多い。
漁師。
商人。
旅人。
様々な人間が集まっている。
その一角で、レインは目の前の料理を見つめていた。
「美味そうだな」
「美味しそうですね」
二人の前には魚料理が並んでいる。
焼き魚。
魚介スープ。
パン。
そしてサラダ。
素朴な料理だったが、香りだけで美味しいと分かる。
「いただきます」
レインが箸を取る。
一口食べる。
そして固まった。
「どうしました?」
ルークが聞く。
レインは真顔だった。
「美味い」
「でしょうね」
「美味いぞ」
「分かりました」
レインは二口目を食べる。
さらに三口目。
止まらない。
ルークは苦笑した。
こういう時のレインは本当に年相応だ。
新しい技術。
新しい知識。
そして美味しい食べ物。
それらを前にすると、素直に喜ぶ。
そこがレインの良いところでもあった。
「旅人かい?」
店主が話しかけてきた。
「ああ」
レインが答える。
「東の海を見て回ろうと思ってな」
店主は笑った。
「若いのに立派だな」
「ありがとうございます」
ルークが頭を下げる。
すると近くの客も話しかけてきた。
「兄ちゃん達、どこから来たんだ?」
「東の方の島です」
「へぇ」
「旅は良いぞ」
町の人たちは気さくだった。
よそ者を警戒する様子もない。
むしろ歓迎している。
海の町らしい雰囲気だった。
レインも自然と笑顔になる。
こういう空気は嫌いではない。
「平和ですね」
ルークが小声で言う。
「ああ」
レインも頷く。
子供たちが走り回っている。
漁師たちは朝の漁の話をしている。
商人は商売の話だ。
どこにでもある日常。
だからこそ大切なものだった。
その時だった。
外から悲鳴が聞こえた。
「きゃああああ!」
店内が静まる。
全員が入口を見る。
次の瞬間、
ドォン!!
大きな音が響いた。
窓ガラスが揺れる。
客たちの顔色が変わった。
「おい……」
「まさか」
嫌な空気が流れる。
そして、
「海賊だぁ!!」
誰かが叫んだ。
店内が騒然となる。
客たちが立ち上がる。
子供たちが泣き始める。
レインとルークも窓の外を見る。
海賊旗。
武器を持った男たち。
十数人はいる。
どうやら町を襲いに来たらしい。
ルークが嫌な予感しかしない顔になる。
一方、レインは魚を食べていた。
「レインさん」
「何だ?」
「海賊です」
「見えてる」
そう言いながらスープを飲む。
ルークは頭を抱えた。
「逃げなくて良いんですか?」
「飯の途中だ」
「そこですか?」
レインは真顔だった。
「大事だろ」
「大事ですけど!」
その時だった。
海賊の一人が広場へ逃げようとした子供を捕まえた。
「ひっ!」
子供が震える。
母親らしき女性が悲鳴を上げた。
「やめて!」
海賊は笑う。
「動くなよ」
周囲の人間は誰も動けない。
武器を持った海賊。
一般人ではどうしようもない。
そして、海賊が子供へ手を伸ばした瞬間。
ドサッ。
突然、海賊が倒れた。
町中が静まり返る。
「は?」
海賊たちも固まった。
何が起きたのか分からない。
倒れた男は白目を剥いている。
傷はない。
血も出ていない。
ただ気絶していた。
「何だ?」
海賊たちが周囲を見回す。
誰も動いていない。
誰も攻撃していない。
意味が分からなかった。
そして次の瞬間、
バチバチバチッ!!
空気が震えた。
見えない圧力が町を覆う。
海賊たちの顔色が変わる。
「な、何だ……?」
「息が……」
「苦し……」
そして、
ドサッ。
ドサッ。
ドサドサドサッ!!
海賊たちが次々と倒れていく。
一人。
二人。
三人。
気付けば、船長を除く全員が地面へ転がっていた。
静寂...
町中が固まる。
海賊の船長だけが立っていた。
いや...立っているのがやっとだった。
全身が震えている。
額から汗が流れる。
そして、広場の奥から二人の人影が現れた。
黒いフード。
ルークは隣を歩きながらため息を吐いた。
レインの身体からは黒い稲妻のような覇気が漏れている。
覇王色の覇気。
ロジャーとぶつかり合った時と同じ力だった。
船長が震える声で言う。
「お、お前……何者だ……」
レインはゆっくり歩く。
そして、昼飯を中断させられたことを思い出した。
「おい」
静かな声だった。
だが船長は一歩後退る。
本能が警告していた。
目の前の存在は危険だと。
レインは言った。
「昼飯の邪魔をするな」
沈黙...
町中が静まり返る。
船長も固まる。
町の人たちも固まる。
そして、隣にいたルークが叫んだ。
「そこですか!?」
町中にツッコミが響いた。
だがレインは真面目だった。
せっかく美味しい魚を食べていたのだ。
邪魔されたら怒る。
それだけである。
ルークは頭を抱える。
町の人たちは呆然としている。
そして海賊船長だけが理解した。
理由はどうでもいい。
ただ一つ確かなことがある。
目の前のフードの男を怒らせてはいけなかった。
その事実だけは、本能が理解していた。