ONE PIECE 〜船大工レイン〜   作:ペンギンって可愛いですよね

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第百六十七話「感謝」

 

沈黙が広場を支配していた。

 

海賊たちは全員倒れている。

 

立っているのは船長だけ。

 

その船長も足が震えていた。

 

目の前にいるのは黒いフードの男。

 

何をされたのか分からない。

 

仲間が突然倒れた。

 

気付けば自分一人だけになっていた。

 

理解できるはずがなかった。

 

「ひっ……」

 

船長が後退る。

 

レインはゆっくり近付く。

 

逃げる気配はない。

 

戦う気配もない。

 

ただ歩いているだけだった。

 

それなのに恐ろしい。

 

船長は本能で理解していた。

 

勝てない。

 

絶対に勝てない。

 

目の前の存在は、自分が今まで見てきたどんな人間とも違う。

 

そんな相手だった。

 

「ま、待て!」

 

船長が叫ぶ。

 

レインは止まらない。

 

「話せば分かる!」

 

「そうか」

 

レインは頷いた。

 

船長の顔が少し明るくなる。

 

だが次の瞬間、

 

ゴッ。

 

レインの拳が船長の額へ突き刺さった。

 

船長は白目を剥く。

 

そして、

 

ドサッ。

 

その場へ倒れた。

 

静寂...

 

広場にいた全員が固まる。

 

ルークは額を押さえた。

 

「話し合いとは......」

 

「終わったぞ?」

 

「気絶させましたよね?」

 

「楽だろ」

 

レインは当然のように言う。

 

ルークは反論を諦めた。

 

今更である。

 

その時だった。

 

「うおおおお!」

 

遠くから声が聞こえる。

 

海軍だった。

 

どうやら騒ぎを聞き付けて駆け付けたらしい。

 

十数人の海兵が広場へ入ってくる。

 

そして、固まった...

 

海賊全滅。

 

町は無事。

 

そして黒いフード。

 

海兵たちは見覚えがあった。

 

昨日...いや、正確には十数時間前だ。

 

海軍支部へ八百万ベリーの賞金首を引き渡してきた謎の賞金稼ぎ。

 

まさにその人物だった。

 

「またですか!?」

 

海兵の一人が叫んだ。

 

レインは振り返る。

 

「ああ」

 

「ああじゃないですよ!」

 

海兵は頭を抱えた。

 

ルークも頷く。

 

「俺もそう思います」

 

「まだ一日経ってませんよね!?」

 

海兵が言う。

 

「経ってないな」

 

レインは答える。

 

「ですよね!?」

 

海兵たちは困惑していた。

 

昨日八百万。

 

今日も海賊。

 

ペースがおかしい。

 

完全におかしい。

 

「海賊が来たんだから仕方ないだろ」

 

レインは真面目に言う。

 

だが海兵たちは納得しない。

 

ルークがため息を吐く。

 

「来た海賊が可哀想になってきました」

 

「何でだ?」

 

「何でもです」

 

レインは納得していない顔だった。

 

その様子を見て海兵たちは苦笑する。

 

そして海賊たちの確保を始めた。

 

人数は十八人。

 

全員無傷。

 

正確には気絶しているだけだった。

 

「相変わらず加減がおかしいですね……」

 

海兵が呟く。

 

レインは聞こえないふりをした。

 

その時だった。

 

「ありがとう!」

 

女性の声が響く。

 

子供を抱き締めている母親だった。

 

先ほど海賊に捕まりそうになっていた子だ。

 

涙を流しながら頭を下げている。

 

「本当にありがとう!」

 

その声をきっかけに町の人々も集まってくる。

 

「助かった!」

 

「ありがとう!」

 

「兄ちゃん強いな!」

 

次々に感謝の言葉が飛ぶ。

 

レインは少し困った顔になった。

 

感謝されるのは嫌いではない。

 

だが慣れている訳でもない。

 

「礼なら海軍にも言ってやれ」

 

そう言うと海兵たちが驚いた顔をした。

 

レインは続ける。

 

「海賊を捕まえるのも仕事だろ」

 

海兵たちは顔を見合わせる。

 

そして少し嬉しそうに笑った。

 

その時、食堂の店主が大声を上げた。

 

「兄ちゃん!」

 

レインが振り返る。

 

「昼飯の続き食っていけ!金は要らん」

 

一瞬静かになる。

 

そして、レインの目が輝いた。

 

「本当か?」

 

「もちろんだ!」

 

店主は豪快に笑う。

 

「助けてもらった礼だ!」

 

レインは即座に頷いた。

 

「行く」

 

「即答ですね」

 

ルークが呆れた。

 

海兵たちも笑う。

 

結局そこなのか。

 

全員が同じことを思っていた。

 

しばらくして、二人は再び食堂へ戻っていた。

 

料理も温め直されている。

 

レインは満足そうだった。

 

「やっぱり美味いな」

 

「良かったですね」

 

ルークも苦笑する。

 

その時だった。

 

近くにいた男の子が恐る恐る近付いてきた。

 

先ほど助けられた子だった。

 

「お兄ちゃん」

 

「ん?」

 

「強いね!」

 

レインは少し考えた。

 

そして言う。

 

「勉強しろ」

 

沈黙...

 

男の子が首を傾げる。

 

周囲も固まる。

 

ルークは頭を抱えた。

 

「そこは剣術とかじゃないんですか?」

 

「勉強は大事だぞ」

 

レインは真面目だった。

 

「知識は裏切らない」

 

それは前世で学んだことだった。

 

技術も。

 

商売も。

 

研究も。

 

全て知識から始まる。

 

だから勉強は大事なのだ。

 

男の子はよく分かっていない顔だったが、それでも元気よく頷いた。

 

「うん!」

 

その返事にレインも笑う。

 

外では夕日が沈み始めていた。

 

海兵たちは海賊を連行している。

 

町には平和が戻った。

 

そして黒いフードの賞金稼ぎの噂は、また一つ東の海へ広がっていく。

 

本人はそんなことを全く知らずに。

 

目の前の魚料理を美味しそうに食べているのだった。

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