ONE PIECE 〜船大工レイン〜 作:ペンギンって可愛いですよね
翌朝、レインとルークは港町を歩いていた。
空は晴天。
海も穏やか。
昨日の騒ぎが嘘のような平和な朝だった。
市場には人が集まり、漁師たちは朝の漁を終えて魚を運んでいる。
子供たちも元気に走り回っていた。
「平和ですね」
ルークが呟く。
「ああ」
レインも頷いた。
昨日海賊が襲ってきた町とは思えない。
だが、それで良いのだろう。
海賊が来ても、次の日にはまた日常が戻る。
それがこの世界なのかもしれない。
しばらく歩いていると、ルークが不意に口を開いた。
「レインさん」
「何だ?」
「お祓い行きましょう」
レインは足を止めた。
そしてゆっくりルークを見る。
「何でだ?」
真面目な顔だった。
ルークも真面目だった。
「絶対何か憑いてます」
「失礼だな」
「失礼じゃありません」
即答だった。
ルークは指を折り始める。
「出航初日に海賊船と遭遇」
「運が良かったな」
「八百万ベリー獲得」
「儲かったな」
「翌日に海賊が町を襲撃」
「偶然だろ」
「昼飯中に遭遇」
「タイミングが悪かったな」
ルークは深いため息を吐いた。
「全部まとめておかしいんですよ」
レインは納得していない顔をした。
「運が良いだけだろ」
「普通はそういうのをトラブルメーカーって言うんです」
「俺のせいじゃない」
「本当に?」
ルークが疑いの目を向ける。
すると近くで魚を売っていた店主が会話を聞いていたらしく笑った。
「確かに兄ちゃん来てから事件ばっかりだな!」
周囲の人たちも笑う。
「昨日は驚いたぜ」
「昼飯食ってたら海賊だからな」
「しかも一瞬で終わったし」
レインは困った顔になった。
何故か自分が原因扱いされている。
「だから俺のせいじゃないだろ」
「本当に?」
今度は周囲の町人まで言い出した。
レインは少し黙る。
そして考える。
海賊船。
海賊襲撃。
ロジャー。
ガープ。
覇気。
ポーネグリフ。
確かに最近色々あり過ぎる気もする。
「……偶然だ」
少しだけ自信がなくなっていた。
ルークはそれを見逃さなかった。
「ほら」
「ほらじゃない」
「お祓い行きましょう」
「行かん」
即答だった。
ルークは諦めなかった。
「行きましょう」
「行かん」
「行きましょう」
「行かん」
完全に意地の張り合いになっていた。
周囲の町人たちは面白そうに見ている。
その時だった。
「ぷっ」
誰かが吹き出した。
それをきっかけに周囲も笑い始める。
レインは少し不満そうだった。
だが悪い気分ではない。
こういう平和な空気は嫌いではなかった。
その頃...
海軍支部。
支部長は机の前で頭を抱えていた。
目の前には報告書がある。
昨日の報告書。
そして今日の報告書。
二枚並んでいた。
内容を見比べる。
どちらも同じ人物が関わっている。
黒いフード。
若い男。
異常な強さ。
そして海賊討伐。
支部長は深いため息を吐いた。
「まだ一日だぞ……」
昨日。
八百万ベリーの賞金首を討伐。
今日。
海賊団壊滅。
普通なら数か月分の成果だった。
海兵の一人が苦笑する。
「どうします?」
「どうするも何もない」
支部長は椅子にもたれた。
危険人物ではない。
むしろ海軍としては助かっている。
だが、
「報告だけはしておけ」
「本部ですか?」
「ああ」
支部長は頷いた。
「強者は把握しておくべきだ」
海兵も納得する。
そして報告書を書き始めた。
『黒いフードを被った謎の賞金稼ぎ』
『年齢不明』
『若い男性と思われる』
『覇気使いの可能性あり』
『二日間で海賊団二つを壊滅』
海兵は書きながら思う。
本当に意味が分からない。
そして数十分後。
報告書は本部へ送られた。
海軍本部。
一人の海兵が書類の束を運んでいた。
各地から届いた報告書。
その中の一枚を見て首を傾げる。
「黒いフード?」
聞いたことのない名前だった。
いや、名前ですらない。
だが内容は妙に気になる。
少し考えた後、その書類を別の山へ置いた。
その山の行き先は決まっている。
英雄。
海軍中将。
モンキー・D・ガープ。
数時間後。
ガープの机へ一枚の報告書が置かれた。
ガープは煎餅を食べながらそれを手に取る。
何気なく目を通す。
そして、ピタリと手が止まった。
「ほう……」
口元が僅かに上がる。
黒いフード。
若い男。
異常な強さ。
ガープには心当たりがあった。
「まさかのう」
そう呟きながら笑う。
その目はどこか楽しそうだった。
一方その頃...
当の本人は...
「だからお祓い行きましょう」
「行かん」
「行きましょう」
「行かん」
港町でルークと言い争っていた。
ガープが報告書を読んでいることなど、知る由もなかった。