ONE PIECE 〜船大工レイン〜 作:ペンギンって可愛いですよね
雨神が目的の島へ到着したのは翌日の昼過ぎだった。
島は決して大きくない。
人口も多くない。
しかし港には数隻の商船が停泊していた。
漁船も見える。
物資を運ぶ船も見える。
補給拠点。
レインの予想通りの場所だった。
「本当に来ますかね?」
ルークが呟く。
「来るだろうな」
レインはそう答えながら港を見渡した。
島は平和だった。
少なくとも今は...
子供たちが走り回り、大人たちが荷物を運んでいる。
だが、それも海賊が来なければの話だ。
二人は港の管理をしている男を見つけると事情を説明した。
当然ながら、
「海賊が来る?」
男は怪訝そうな顔をした。
「ええ」
レインは頷く。
「今日か明日には来ると思います」
男は完全に困惑していた。
無理もない。
突然現れた旅人にそんなことを言われても信じられるはずがない。
「何でそんなことが分かるんだ?」
「推測です」
レインは地図を広げる。
海流。
被害記録。
目撃情報。
全てを説明していく。
男も最初は疑っていた。
だが話を聞くにつれて表情が変わっていく。
「なるほど……」
「絶対とは言いません」
レインは言った。
「ただ、俺ならここを狙います」
男は腕を組んだ。
しばらく考える。
そして深いため息を吐いた。
「分かった」
「信じてくれるんですか?」
ルークが驚く。
男は苦笑した。
「半分だけな」
それでも十分だった。
もし何も起きなければ笑い話で終わる。
だが本当に海賊が来れば被害を減らせる。
なら警戒して損はない。
男はすぐに島の人々へ連絡を始めた。
その様子を見ながらルークが言う。
「意外と信じてもらえましたね」
「半分だろ」
レインは肩を竦めた。
その後、二人は港の端にある倉庫の屋根へ登った。
ここなら港全体が見渡せる。
見張りには丁度良かった。
「暇ですね」
ルークが言う。
「そうだな」
レインも頷く。
平和だった。
海も穏やかだ。
風も弱い。
まるで嵐の前の静けさだった。
数時間が過ぎる。
夕方になった。
空が赤く染まる。
ルークは欠伸をした。
「本当に来るんですか?」
「さあな」
レインは双眼鏡を覗きながら答える。
すると、ふと見聞色の範囲に何かが入った。
レインの表情が変わる。
「来た」
短い言葉だった。
だがルークはすぐに立ち上がる。
「本当ですか?」
「ああ」
双眼鏡を受け取る。
海を見る。
最初は何も見えなかった。
だが数秒後。
「あ……」
見えた。
小さな黒い点。
船だった。
しかも。
一直線にこちらへ向かっている。
ルークは思わず息を呑む。
「当たった……」
「だから言っただろ」
レインは立ち上がった。
港では見張りをしていた島民たちも気付いたらしい。
鐘が鳴り始める。
人々が慌ただしく動き始めた。
騒ぎが広がる。
そして、一時間後...
海賊船の姿が誰の目にも見える距離まで近付いてきた。
港は騒然としていた。
島民たちはレインを見る。
あの旅人の言った通りになった。
本当に海賊が来た。
誰もが驚いていた。
「レインさん」
「何だ?」
「今回は本当に剣ですよね?」
ルークが真剣な顔で聞く。
レインは頷いた。
「今回は剣で行く」
「本当ですか?」
「ああ」
「拳禁止ですよ?」
「分かってる」
ルークはじっと見つめる。
数秒。
そしてため息を吐いた。
「絶対分かってませんね」
「失礼だな」
レインは苦笑した。
そして腰へ手を伸ばす。
最上大業物。
黎明。
ロジャーに託された剣。
まだ使いこなせてはいない。
だからこそ、今回は剣で戦う。
黒いフードを被る。
顔が影に隠れる。
島民たちは固唾を呑んで見守っていた。
一方。
海賊船では。
船長が港を見て笑っていた。
「当たりだな」
部下たちも笑う。
補給船。
倉庫。
物資。
狙い通りだった。
誰も自分たちを止められない。
そう思っていた。
だが、船長は気付く。
港の先端。
一人の人影。
黒いフード。
細身の男。
ただ静かに立っている。
「何だあいつ?」
船長が眉をひそめる。
部下たちも見る。
「一人ですね」
「馬鹿なのか?」
「逃げ遅れたんじゃないですか?」
笑い声が上がる。
誰も警戒していなかった。
その頃...
さらに遠くの海では、一隻の軍艦が全速力で進んでいた。
船首には一人の男。
モンキー・D・ガープ。
「はっはっはっ!」
豪快な笑い声が響く。
「見つけたぞレイン!」
海兵たちは顔を見合わせた。
嫌な予感しかしない。
そして三つの船は、ついに同じ海域へ集まり始める。
港では黒いフードの少年が笑う。
海賊船では賞金首が笑う。
軍艦では海軍の英雄が笑う。
だが、この中で最後に笑うのが誰なのか。
それはまだ誰にも分からなかった。