ONE PIECE 〜船大工レイン〜 作:ペンギンって可愛いですよね
巨大な軍艦が港へ近付いてくる。
その船首に立つ男を見た瞬間、島中が騒然となった。
「お、おい……!」
「あれって……!」
「嘘だろ!?」
誰かが叫ぶ。
そして次の瞬間、
「海軍の英雄ガープだ!」
歓声にも似た声が上がった。
東の海でも知らぬ者はいない。
海賊王と何度も渡り合った海軍の英雄。
モンキー・D・ガープ。
その本人が目の前にいた。
軍艦はゆっくりと接岸する。
そして、
ドンッ!
ガープが船から飛び降りた。
着地しただけで地面が少し揺れる。
島民たちは目を丸くした。
相変わらず規格外だった。
ガープは豪快に笑いながらレインへ近付いてくる。
「はっはっはっ!」
レインは嫌そうな顔をした。
ルークも似たような顔をしている。
「何で来たんですか」
レインが聞く。
するとガープは不思議そうな顔をした。
「何でとは何じゃ」
「普通に考えておかしいでしょ。海軍本部にいてください」
「嫌じゃ」
即答だった。
レインは頭を抱えたくなった。
この人は相変わらずである。
ガープは周囲を見渡す。
倒れている海賊たち。
壊滅した海賊団。
そして気絶している船長。
「ほう」
興味深そうに頷く。
「また海賊を倒したのか」
するとレインは即座に反論した。
「今回は俺から行った訳じゃありません」
「ん?」
ガープが眉を上げる。
ルークも頷いた。
「本当です」
「ほう?」
珍しい。
いつもならルークがレインに突っ込む側だ。
ガープは少し興味を持った。
すると港の管理人が前へ出てくる。
「その子の言う通りです」
「ほう」
「海賊が来ると予想してくれたんです」
ガープの視線がレインへ向く。
レインは肩を竦めた。
「予想しただけです」
「予想じゃと?」
管理人は興奮気味に話し始めた。
海流。
被害記録。
目撃情報。
それらを分析し、この島が狙われると判断したこと。
そして本当に海賊が現れたこと。
話を聞くにつれ、ガープの口元が上がっていく。
最後まで聞き終えた瞬間。
「ぶわっはっはっはっ!」
豪快な笑い声が響いた。
島民たちが驚く。
レインは嫌な予感しかしなかった。
「相変わらず面白い奴じゃのう!」
「普通のことですよ」
「普通ではないわ!」
ガープは笑い続ける。
海賊を待ち伏せする。
しかも予想を当てる。
発想がおかしい。
だがガープはそういう人間が嫌いではなかった。
むしろ大好きだった。
「被害は?」
ガープが聞く。
管理人は首を横に振った。
「ありません」
「一人もか?」
「はい」
ガープは満足そうに頷いた。
海軍として見ても上出来だった。
海賊を倒しただけではない。
島の被害を未然に防いだのだ。
「それで」
ガープは倒れている船長を見る。
「こやつが一五〇〇万か」
「そうみたいです」
レインが答える。
ガープは少し感心したような顔になった。
東の海では十分な強者である。
それをたった一人で片付けた。
しかも剣術の修行をしながら。
「そういえば」
ガープが言う。
「お前、この前も海賊を捕まえとったな」
「はい」
「八百万じゃったか」
「そうですね」
ガープは指を折る。
八百万。
一五〇〇万。
合計二三〇〇万。
数日で稼いだ金額としては異常だった。
「ぶわっはっはっ!」
再び笑い出す。
「数日で二三〇〇万ベリーか!」
「儲かりました」
レインは真顔だった。
ルークは額を押さえる。
「そこなんですね」
「大事だろ?」
「大事ですけど」
ガープも笑う。
やはり面白い。
海軍に欲しい。
本気でそう思った。
その時だった。
海兵たちが海賊の回収を始める。
縛り上げられた海賊たちが次々と運ばれていく。
島民たちは安堵していた。
これでもう襲われる心配はない。
「助かりました!」
「ありがとうございます!」
「本当にありがとう!」
感謝の声が飛ぶ。
レインは少し困ったように頭を掻いた。
こういうのは慣れない。
するとガープが横から肘で突いてきた。
「人気者じゃのう」
「勘弁してください」
「ぶわっはっはっ!」
楽しそうだった。
そして、ガープの視線が黎明へ向く。
レインの腰に差された名刀。
「剣を持つようになったんじゃな」
「最近です」
「ほう」
ガープはそれ以上聞かなかった。
ただ少しだけ頷く。
そして、何かを思いついたように笑った。
その笑顔を見た瞬間。
レインとルークの背筋に嫌な予感が走る。
「暇じゃ」
ガープが言った。
「嫌な予感しかしません」
レインは即答した。
「何故じゃ」
「その顔です」
「そうです」
珍しくルークも同意する。
だがガープは気にしない。
満面の笑みで言った。
「少し付き合え」
レインは頭を抱えた。
「何にですか」
「決まっとる」
ガープは拳を握る。
そしてニヤリと笑った。
「修行じゃ」
沈黙……
レインは空を見上げた。
ルークは心の中で海賊たちへ同情した。
ついさっきまで、この島で一番可哀想なのは海賊たちだと思っていた。
だが違った。
今、この瞬間一番可哀想なのはレインかもしれない。
そんなことを思いながら、ルークは静かに目を逸らしたのだった。