ONE PIECE 〜船大工レイン〜 作:ペンギンって可愛いですよね
「ぶわっはっはっはっ!!」
ガープの豪快な笑い声が島中へ響く。
海軍の英雄は腹を抱えながら笑っていた。
久しぶりだった。
ここまで驚かされたのは...
目の前の少年は間違いなく怪物だ。
まだ若い。
まだ未完成。
それでも確実に海の頂点へ届く可能性を持っている。
ガープはそう確信していた。
一方。
レインは肩で息をしていた。
覇王色纏い。
武装色。
見聞色。
全てを全力で使った。
流石に疲れる。
だが成果はあった。
一発。
たった一発だったが、ガープへ攻撃を届かせたのだ。
「当たりましたよ」
レインが言う。
ガープは口元の血を拭きながら笑った。
「ああ」
そして再び笑う。
「当たりおったわい!」
嬉しそうだった。
まるで孫の成長を喜ぶ祖父である。
その様子を見ていた海兵たちは未だに固まっていた。
誰も言葉を発せない。
島民たちも同じだった。
海軍の英雄。
あのガープが。
血を流した。
信じられない。
夢でも見ている気分だった。
その時だった。
「二人とも!!」
大声が響いた。
レインとガープが同時に振り返る。
そこには額へ青筋を浮かべたルークが立っていた。
嫌な予感しかしない。
レインはそう思った。
ガープは楽しそうに笑った。
「ん?」
「何じゃ?」
そして、ルークの説教が始まった。
「やり過ぎです!!」
島中へ響くほど大きな声だった。
レインは耳を押さえる。
ガープは笑っている。
「何がじゃ?」
ガープが聞く。
ルークは即座に指差した。
周囲を...
「全部です!!」
全員が静まり返る。
海兵たちも。
島民たちも。
何となくルークの味方だった。
「何ですかあの衝撃波は!」
ルークが叫ぶ。
「島が吹き飛ぶかと思いましたよ!」
確かに...
周囲を見れば分かる。
木が何本か倒れている。
地面も抉れている。
戦場の中心には巨大なクレーターまで出来ていた。
「木も折れてますし!」
「地面も割れてますし!」
「海兵さん達も必死に踏ん張ってたじゃないですか!」
海兵たちが何度も頷く。
本当にそうだった。
最後の衝突の時など、吹き飛ばされないよう必死だったのだ。
レインは苦笑した。
「いや、加減はしたぞ」
すると、ガープも頷く。
「したのう」
ルークは絶句した。
そして、
「その加減がおかしいんです!!」
渾身のツッコミだった。
島民たちは心の中で拍手した。
正論である。
完全に正論である。
レインとガープは顔を見合わせる。
そして、
「そうか?」
「そうかのう?」
二人同時だった。
ルークは頭を抱えた。
駄目だ。
感覚がおかしい。
この二人は強過ぎるせいで基準が狂っている。
その時だった。
ルークの矛先がガープへ向く。
「ガープさんもです!」
「何じゃ?」
「子供相手に本気出さないでください!」
海兵たちが青ざめた。
誰だ。
誰なんだこの少年は。
海軍の英雄へ説教している。
しかも真っ向から。
ガープは少し考える。
そして首を傾げた。
「出してないぞ?」
ルークは固まった。
島民も固まった。
海兵も固まった。
レインだけが納得した顔をしている。
確かにそうだ。
最後までガープには余裕があった。
本気だったら、そもそも攻撃を当てることすら難しかっただろう。
それが分かるからこそ。
ルークはさらに叫ぶ。
「余計に怖いです!!」
ガープは大笑いした。
「ぶわっはっはっはっ!」
本当に楽しそうだった。
そんな時、近くにいた島民の一人がポツリと呟く。
「君……凄いな」
ルークが振り返る。
「何がですか?」
「ガープ中将に説教できるんだな……」
ルークは固まった。
言われてみればそうだった。
よく考えたら相手は海軍の英雄である。
普通の人間なら緊張して話すことすら出来ない。
海兵たちは全力で頷いた。
本当にそうだった。
彼らですら緊張する。
なのにこの少年は。
普通に説教している。
「え?」
ルークが困惑する。
ガープは腹を抱えて笑っている。
レインも吹き出した。
「確かにな」
「レインさんまで!?」
「いや、事実だろ」
ルークは何とも言えない顔になった。
自覚がなかったらしい。
しばらく笑い声が続く。
先ほどまでの緊張感はどこかへ消えていた。
そして、ガープがふと真面目な顔になる。
珍しく静かな声だった。
「しかし」
レインを見る。
そしてルークを見る。
「良い仲間を持ったのう」
レインは少しだけ目を丸くした。
ガープがそんなことを言うとは思わなかった。
ルークも照れ臭そうに頭を掻く。
「そうか?」
レインが聞く。
「そうじゃ」
ガープは頷く。
「お前を止める奴がおらんと大変じゃろう」
周囲の全員が頷いた。
海兵たちも。
島民たちも。
ルークも。
レインだけが納得していない。
「失礼だな」
「事実です」
ルークが即答する。
再び笑いが起きた。
その空気の中で、レインは少しだけ笑った。
「まあ」
そしてルークを見る。
「そうですね」
短い言葉だった。
だがルークは少し照れた。
長い付き合いだ。
だから分かる。
レインなりの感謝だった。
ガープは満足そうに頷く。
そして、いつもの調子に戻った。
「じゃから海軍に来い」
即座に、
「嫌です」
レインが答える。
間髪入れなかった。
「何故じゃ!」
「自由が無くなるからです」
「良い所じゃぞ!」
「知ってますけど嫌です」
ガープは納得しない。
レインも譲らない。
再び言い合いが始まる。
その様子を見ながら。
ルークは空を見上げた。
平和だった。
ついさっきまで島を襲おうとしていた海賊団は壊滅した。
海軍の英雄もいる。
そして、目の前では子供みたいな言い争いが始まっている。
「本当に」
ルークは小さく呟いた。
「海賊の方が可哀想でしたね」
その言葉に、周囲の全員が深く頷いたのだった。