ONE PIECE 〜船大工レイン〜   作:ペンギンって可愛いですよね

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第百七十五話「やり過ぎです」

 

「ぶわっはっはっはっ!!」

 

ガープの豪快な笑い声が島中へ響く。

 

海軍の英雄は腹を抱えながら笑っていた。

 

久しぶりだった。

 

ここまで驚かされたのは...

 

目の前の少年は間違いなく怪物だ。

 

まだ若い。

 

まだ未完成。

 

それでも確実に海の頂点へ届く可能性を持っている。

 

ガープはそう確信していた。

 

一方。

 

レインは肩で息をしていた。

 

覇王色纏い。

 

武装色。

 

見聞色。

 

全てを全力で使った。

 

流石に疲れる。

 

だが成果はあった。

 

一発。

 

たった一発だったが、ガープへ攻撃を届かせたのだ。

 

「当たりましたよ」

 

レインが言う。

 

ガープは口元の血を拭きながら笑った。

 

「ああ」

 

そして再び笑う。

 

「当たりおったわい!」

 

嬉しそうだった。

 

まるで孫の成長を喜ぶ祖父である。

 

その様子を見ていた海兵たちは未だに固まっていた。

 

誰も言葉を発せない。

 

島民たちも同じだった。

 

海軍の英雄。

 

あのガープが。

 

血を流した。

 

信じられない。

 

夢でも見ている気分だった。

 

その時だった。

 

「二人とも!!」

 

大声が響いた。

 

レインとガープが同時に振り返る。

 

そこには額へ青筋を浮かべたルークが立っていた。

 

嫌な予感しかしない。

 

レインはそう思った。

 

ガープは楽しそうに笑った。

 

「ん?」

 

「何じゃ?」

 

そして、ルークの説教が始まった。

 

「やり過ぎです!!」

 

島中へ響くほど大きな声だった。

 

レインは耳を押さえる。

 

ガープは笑っている。

 

「何がじゃ?」

 

ガープが聞く。

 

ルークは即座に指差した。

 

周囲を...

 

「全部です!!」

 

全員が静まり返る。

 

海兵たちも。

 

島民たちも。

 

何となくルークの味方だった。

 

「何ですかあの衝撃波は!」

 

ルークが叫ぶ。

 

「島が吹き飛ぶかと思いましたよ!」

 

確かに...

 

周囲を見れば分かる。

 

木が何本か倒れている。

 

地面も抉れている。

 

戦場の中心には巨大なクレーターまで出来ていた。

 

「木も折れてますし!」

 

「地面も割れてますし!」

 

「海兵さん達も必死に踏ん張ってたじゃないですか!」

 

海兵たちが何度も頷く。

 

本当にそうだった。

 

最後の衝突の時など、吹き飛ばされないよう必死だったのだ。

 

レインは苦笑した。

 

「いや、加減はしたぞ」

 

すると、ガープも頷く。

 

「したのう」

 

ルークは絶句した。

 

そして、

 

「その加減がおかしいんです!!」

 

渾身のツッコミだった。

 

島民たちは心の中で拍手した。

 

正論である。

 

完全に正論である。

 

レインとガープは顔を見合わせる。

 

そして、

 

「そうか?」

 

「そうかのう?」

 

二人同時だった。

 

ルークは頭を抱えた。

 

駄目だ。

 

感覚がおかしい。

 

この二人は強過ぎるせいで基準が狂っている。

 

その時だった。

 

ルークの矛先がガープへ向く。

 

「ガープさんもです!」

 

「何じゃ?」

 

「子供相手に本気出さないでください!」

 

海兵たちが青ざめた。

 

誰だ。

 

誰なんだこの少年は。

 

海軍の英雄へ説教している。

 

しかも真っ向から。

 

ガープは少し考える。

 

そして首を傾げた。

 

「出してないぞ?」

 

ルークは固まった。

 

島民も固まった。

 

海兵も固まった。

 

レインだけが納得した顔をしている。

 

確かにそうだ。

 

最後までガープには余裕があった。

 

本気だったら、そもそも攻撃を当てることすら難しかっただろう。

 

それが分かるからこそ。

 

ルークはさらに叫ぶ。

 

「余計に怖いです!!」

 

ガープは大笑いした。

 

「ぶわっはっはっはっ!」

 

本当に楽しそうだった。

 

そんな時、近くにいた島民の一人がポツリと呟く。

 

「君……凄いな」

 

ルークが振り返る。

 

「何がですか?」

 

「ガープ中将に説教できるんだな……」

 

ルークは固まった。

 

言われてみればそうだった。

 

よく考えたら相手は海軍の英雄である。

 

普通の人間なら緊張して話すことすら出来ない。

 

海兵たちは全力で頷いた。

 

本当にそうだった。

 

彼らですら緊張する。

 

なのにこの少年は。

 

普通に説教している。

 

「え?」

 

ルークが困惑する。

 

ガープは腹を抱えて笑っている。

 

レインも吹き出した。

 

「確かにな」

 

「レインさんまで!?」

 

「いや、事実だろ」

 

ルークは何とも言えない顔になった。

 

自覚がなかったらしい。

 

しばらく笑い声が続く。

 

先ほどまでの緊張感はどこかへ消えていた。

 

そして、ガープがふと真面目な顔になる。

 

珍しく静かな声だった。

 

「しかし」

 

レインを見る。

 

そしてルークを見る。

 

「良い仲間を持ったのう」

 

レインは少しだけ目を丸くした。

 

ガープがそんなことを言うとは思わなかった。

 

ルークも照れ臭そうに頭を掻く。

 

「そうか?」

 

レインが聞く。

 

「そうじゃ」

 

ガープは頷く。

 

「お前を止める奴がおらんと大変じゃろう」

 

周囲の全員が頷いた。

 

海兵たちも。

 

島民たちも。

 

ルークも。

 

レインだけが納得していない。

 

「失礼だな」

 

「事実です」

 

ルークが即答する。

 

再び笑いが起きた。

 

その空気の中で、レインは少しだけ笑った。

 

「まあ」

 

そしてルークを見る。

 

「そうですね」

 

短い言葉だった。

 

だがルークは少し照れた。

 

長い付き合いだ。

 

だから分かる。

 

レインなりの感謝だった。

 

ガープは満足そうに頷く。

 

そして、いつもの調子に戻った。

 

「じゃから海軍に来い」

 

即座に、

 

「嫌です」

 

レインが答える。

 

間髪入れなかった。

 

「何故じゃ!」

 

「自由が無くなるからです」

 

「良い所じゃぞ!」

 

「知ってますけど嫌です」

 

ガープは納得しない。

 

レインも譲らない。

 

再び言い合いが始まる。

 

その様子を見ながら。

 

ルークは空を見上げた。

 

平和だった。

 

ついさっきまで島を襲おうとしていた海賊団は壊滅した。

 

海軍の英雄もいる。

 

そして、目の前では子供みたいな言い争いが始まっている。

 

「本当に」

 

ルークは小さく呟いた。

 

「海賊の方が可哀想でしたね」

 

その言葉に、周囲の全員が深く頷いたのだった。

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