ONE PIECE 〜船大工レイン〜 作:ペンギンって可愛いですよね
宴会は終わらなかった。
本当に終わらなかった。
最初の日、レインとルークは宴会が終わったら宿へ戻ろうと思っていた。
だが甘かった...
「二次会だ!」
「おおー!!」
島民たちは元気だった。
そして翌朝、
「朝飯だ!」
「おおー!!」
まだ続いていた。
レインとルークは顔を見合わせた。
「終わってませんね」
「終わってないな」
二日目...昼...夜
「昼飯だ!」
「おおー!!」
「晩飯だ!」
「おおー!!」
「夜食だ!」
「おおー!!」
レインは理解した。
この人たち、終わる気がない。
三日目。
「レイン君!」
「ルーク君!」
「飲め!」
「食え!」
「歌え!」
「踊れ!」
レインは諦めた。
ルークも諦めた。
こうして、三日三晩続いた宴会は島の伝説となった。
そして四日目の朝。
ようやく...本当にようやく...二人は解放された。
「自由だ……」
レインが呟く。
「長かったですね……」
ルークも遠い目をしている。
海賊との戦いより疲れた気がした。
港へ向かう。
そこには既に出航準備を終えた雨神が待っていた。
船体の点検も完了。
補給も完了。
食料も水も十分。
いつでも出航できる状態だった。
「やっと出発できますね」
ルークが言う。
レインも頷いた。
「ああ」
だが、港へ到着した瞬間二人は固まった。
人。
人。
人。
港中が人で埋め尽くされていた。
島民のほぼ全員が集まっている。
「嫌な予感がするんですが」
「奇遇だな」
レインも同じことを思っていた。
そして予感は当たる。
管理人が前へ出てきた。
「本当に行くのか?」
「はい」
「もう少し居ないか?」
「三日いました」
「確かに」
管理人も否定できなかった。
すると今度は漁師の男が出てくる。
「また来てくれよ!」
「機会があれば」
「絶対だぞ!」
「善処します」
その後も別れの挨拶が続いた。
老人。
漁師。
商人。
子供。
皆が口々に礼を言う。
そして、何故か泣いている人までいた。
「そんなにですか?」
ルークが困惑する。
すると近くのおばあさんが言った。
「当然だよ」
「え?」
「海賊から守ってくれて、お金まで置いていってくれたんだ」
おばあさんは目元を拭いた。
「恩人だからね」
その言葉に、周囲の人々も何度も頷いていた。
レインは少し困ったように頭を掻く。
こういうのは本当に慣れない。
だが、悪い気分ではなかった。
「ありがとうございました!」
「また来てください!」
「今度はもっとゆっくりしていけ!」
「宴会もしよう!」
「それは遠慮します」
即答だった。
大爆笑が起きる。
そんな笑い声に見送られながら。
レインとルークは雨神へ乗り込んだ。
帆が広がる。
風を受ける。
船体がゆっくりと動き出す。
港が少しずつ遠ざかっていく。
島民たちは最後まで手を振っていた。
レインとルークも振り返す。
やがて島が小さくなり始めた頃。
二人はようやく一息吐いた。
「静かですね」
ルークが言う。
「平和だな」
レインも頷く。
久しぶりに二人だけの時間だった。
しばらく海を眺める。
波は穏やかだ。
風も心地良い。
そして、ルークが聞いた。
「次はどうします?」
レインは腕を組む。
海賊狩り。
確かに悪くない。
賞金も手に入る。
実戦経験も積める。
だが、何かが足りない気がしていた。
ロジャー。
ガープ。
二人と戦って思った。
今の自分は剣が弱い。
いや...弱いというより、使いこなせていない。
黎明という最高級の刀がありながら。
技術が追い付いていない。
「うーん」
レインは考える。
そして突然、閃いた。
「あ」
「どうしました?」
「そうか」
レインは立ち上がる。
「その手があったか」
ルークが嫌な予感を覚える。
大体この人がこういう顔をする時は何か思い付いている。
そして大体ろくでもない。
「何ですか?」
「このまま海賊を狩っても、多分剣術は中途半端にしか伸びない」
ルークは頷く。
確かに一理あった。
実戦経験は積める。
だが基礎を学んでいるわけではない。
「だったら?」
「習えばいい」
レインが言う。
「誰にです?」
その瞬間、レインは笑った。
「この東の海にはいるじゃないか、ぴったりの人が」
「誰です?」
レインは指を鳴らした。
「シモツキ村」
ルークが首を傾げる。
聞いたことはある。
東の海の村だ。
だがそれだけだった。
「そこに剣術道場がある」
「へぇ」
「そして先生がいる」
「誰ですか?」
「コウシロウ先生」
ルークは少し考える。
どこかで聞いたことがあるような気もする。
だが思い出せない。
「何でそんなこと知ってるんですか?」
当然の疑問だった。
レインは一瞬固まる。
しまった...
知っていて当然の情報ではない。
だが、慌てず答えた。
「昔、新聞で見たんだよ」
「新聞?」
「ああ」
「そんな記事ありましたっけ?」
「多分あった」
「多分ですか」
ルークは疑わしそうな顔をする。
だがそれ以上追及はしなかった。
いつものことだからだ。
レインも内心ほっとする。
危なかった。
危うく未来の知識だと言うところだった。
もっとも、本当の理由は単純である。
未来。
海賊狩り。
三刀流。
そして、世界一の剣豪を目指す少年。
ロロノア・ゾロ。
その師匠が、シモツキ・コウシロウだった。
「よし」
レインは笑った。
「次の目的地は決まりだな」
ルークはため息を吐く。
何となく分かっていた。
この旅は、まだまだ平穏とは程遠いらしい。
雨神は風を受けながら進む。
新たな目的地、シモツキ村へ向かって...