ONE PIECE 〜船大工レイン〜 作:ペンギンって可愛いですよね
雨神は順調に東の海を進んでいた。
途中で海賊と遭遇することもなく。
嵐に巻き込まれることもなく。
珍しく平和な航海だった。
「平和ですね」
甲板で海を眺めながらルークが言う。
「ああ」
レインも頷く。
本当に珍しい。
最近は海賊に遭遇したり、ガープが現れたり、宴会に三日間拘束されたりと慌ただしかった。
こうして穏やかな海を眺める時間も悪くない。
そして二日後、水平線の先に島影が見え始めた。
「見えてきましたね」
ルークが双眼鏡を覗く。
レインも視線を向けた。
そこには緑豊かな島があった。
大きな港町ではない。
だが穏やかな雰囲気が伝わってくる。
「あれがシモツキ村か」
レインは小さく呟いた。
原作でも何度も見た場所。
ゾロが育った村。
そしてコウシロウが道場を開いている場所。
まさか本当に来る日が来るとは思わなかった。
雨神はゆっくりと港へ入る。
港もどこか落ち着いていた。
大きな商業都市のような賑やかさはない。
だが活気はある。
漁師たちが働き。
商人たちが荷物を運び。
子供たちが走り回っている。
平和だった。
「何か良い村ですね」
ルークが周囲を見回しながら言う。
「そうだな」
レインも頷いた。
石畳の道。
木造の建物。
整った畑。
遠くに見える山々。
そしてどこかゆったり流れる時間。
レインにとっては前世の日本の田舎を思い出させる景色だった。
もちろんルークはそんなことを知らない。
それでも、この村の穏やかな空気は感じ取っているようだった。
二人は港へ船を停泊させる。
その後、必要最低限の荷物だけ持って村へ向かった。
道を歩く。
途中ですれ違う村人たちは皆穏やかだった。
挨拶をすると挨拶が返ってくる。
子供たちは元気よく走り回っている。
海賊に怯える雰囲気もない。
平和そのものだった。
「良い村ですね」
ルークが言う。
「ああ」
レインも同意する。
こういう場所なら子供も真っ直ぐ育つだろう。
少なくとも環境は良い。
しばらく歩いたところで、レインは近くにいた男性へ声を掛けた。
「すみません」
「ん?」
「一心道場はどこですか?」
男性はすぐに理解したようだった。
「ああ、道場か」
「はい」
「この道を真っ直ぐ行って右だ」
そう言って方向を教えてくれる。
「ありがとうございます」
「もしかして入門希望か?」
男性が聞く。
レインとルークは顔を見合わせた。
そして、
「そんなところです」
レインが答えた。
嘘ではない。
男性は笑った。
「先生は強いぞ」
「そうらしいですね」
「村の自慢だからな」
その言葉にレインは少し嬉しくなった。
やはりコウシロウは村人から慕われているらしい。
その後も何人かへ聞き込みをした。
誰に聞いても反応は似ている。
「コウシロウ先生か?ああ、良い先生だぞ。子供たちにも人気だ。剣だけじゃなく礼儀も教えてくれる」
評判は非常に良かった。
レインは内心納得する。
原作を知っているからこそ分かる。
ゾロやくいなが育ったのも納得できる人物だ。
そして十分ほど歩いた頃。
二人の目的地が見えてきた。
木造の大きな建物。
広い敷地。
入口には看板が掲げられている。
一心道場。
その文字を見た瞬間。
レインは思わず笑った。
「着いたな」
「着きましたね」
ルークも看板を見上げる。
思っていたより立派な道場だった。
中からは木刀のぶつかる音が聞こえる。
子供たちの気合いの声も聞こえてくる。
どうやら稽古中らしい。
レインは深呼吸した。
緊張している訳ではない。
むしろ楽しみだった。
ロジャー。
ガープ。
二人との戦いで痛感した。
自分はまだ剣士として未熟だ。
だからこそ学びたい。
もっと強くなりたい。
そのためにここへ来た。
「さて」
レインは入口へ向かう。
「行くか」
「はい」
ルークも頷いた。
そして二人は、一心道場の門をくぐった。
後に東の海で名を知られることになる剣術道場。
そして、多くの剣士たちを導く一人の師範。
シモツキ・コウシロウ。
レインが剣の道を学ぶために選んだ人物との出会いは、静かに始まろうとしていた。