ONE PIECE 〜船大工レイン〜   作:ペンギンって可愛いですよね

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第百八十五話「時は流れ、半年後」

 

時は流れた。

 

レインとルークがシモツキ村へやって来てから半年。

 

季節はすっかり移り変わり、道場の周囲の景色も少しずつ変化していた。

 

しかし変わったのは景色だけではない。

 

二人自身もまた、大きく成長していた。

 

朝、まだ日が昇りきる前、一心道場には既に木刀を振る音が響いていた。

 

シュッ。

 

シュッ。

 

シュッ。

 

規則正しく木刀を振る少年がいる。

 

レインだった。

 

半年前、素振り千回で腕が上がらなくなり、歓迎会では箸すらまともに持てなかった少年はもういない。

 

今では毎日の素振りが完全に習慣となっていた。

 

千回。

 

二千回。

 

その程度なら平然とこなしてしまう。

 

最初は退屈だった基礎も、今では当たり前になっている。

 

コウシロウから学んだ型。

 

足運び。

 

体重移動。

 

呼吸。

 

剣術の基礎。

 

その全てが少しずつ体へ染み込んでいた。

 

もちろん修行は剣だけではない。

 

レインとルークは毎日瞑想も続けていた。

 

最初は集中することすら難しかった。

 

雑念ばかり浮かぶ。

 

工房のこと。

 

故郷のこと。

 

商会のこと。

 

様々な考えが頭を埋め尽くした。

 

だが半年も続けると変わる。

 

呼吸を整える。

 

心を落ち着ける。

 

周囲を感じる。

 

そういったことが自然に出来るようになっていた。

 

さらに二人は道場の外でも様々なことを学んでいた。

 

シモツキ村の農家の手伝いである。

 

最初は人手不足だからという理由だった。

 

だがレインはすぐに興味を持った。

 

畑の作り方、

 

作物の育て方、

 

土の管理、

 

水の流れ、

 

季節ごとの違い、

 

知らないことばかりだった。

 

前世でも農業に関わったことはほとんどない。

 

当然、この世界でも同じだ。

 

「勉強になりますね」

 

汗を流しながらレインが言う。

 

農家のおじさんが笑った。

 

「船大工が農業か」

 

「いつか役に立つかもしれませんから」

 

レインは真面目に答える。

 

実際、そう思っていた。

 

将来どこかの島を開発することになるかもしれない。

 

会社を大きくするかもしれない。

 

知識は多い方が良い。

 

それがレインの考えだった。

 

ルークも隣で頷いていた。

 

彼もまた様々なことを吸収していた。

 

そして、半年間の積み重ねは確かな成果となって現れ始める。

 

特に変化が大きかったのはルークだった。

 

ある日の朝、いつものように瞑想を行っていた時のこと…

 

目を閉じる。

 

呼吸を整える。

 

心を静める。

 

すると突然、誰かが近付いてくる感覚を覚えた。

 

足音は聞こえない。

 

それでも分かる。

 

後ろから人が来る。

 

その瞬間だった。

 

頭の中へ映像が浮かんだ。

 

年配の門下生が肩へ手を伸ばしている。

 

ほんの一瞬の光景。

 

次の瞬間、実際に肩へ手が伸びてきた。

 

ルークは反射的に振り返る。

 

「おお」

 

門下生が驚いた。

 

「気付きましたか」

 

ルーク自身も驚いていた。

 

何が起きたのか分からない。

 

だが確かに見えた。

 

ほんの一瞬先、未来視というほどでもないが、それでも確かに見えたのだ。

 

その話を聞いたコウシロウは静かに頷いた。

 

「見聞色が研ぎ澄まされていますね」

 

「見聞色?」

 

「元々持っていた見聞色の感覚が研ぎ澄まされたのでしょう」

 

ルークは目を瞬かせた。

 

そう言われて思い返す。

 

確かに昔から勘は良かった。

 

危険を察知する。

 

誰かの視線に気付く。

 

物音に敏感だった。

 

だがそれを特別なものだと思ったことはない。

 

「瞑想によって自覚できるようになったのです」

 

コウシロウはそう説明した。

 

それからルークの見聞色は急速に成長していく。

 

人の気配。

 

感情。

 

敵意。

 

殺気。

 

そういったものを以前より遥かに鮮明に感じ取れるようになった。

 

そして時折、ほんの少し先の未来まで見えることがあった。

 

まだ未熟だ。

 

未来視と呼べるほどではない。

 

だが確かにその入口へ足を踏み入れていた。

 

レインもその成長には驚いた。

 

「お前すごくないか?」

 

「俺もびっくりしてます」

 

ルークは苦笑する。

 

だがレインにも大きな成長があった。

 

剣術である。

 

半年間ひたすら基礎を積み重ねた。

 

素振り。

 

型。

 

足運び。

 

呼吸。

 

地味な修行ばかりだった。

 

しかし、その積み重ねは確実に実を結んでいた。

 

そして事件は起きる。

 

その日もレインは素振りをしていた。

 

特に何かを意識したわけではない。

 

ただ自然に振った。

 

今までで一番気持ち良く振れた。

 

力みもない。

 

理想的な一振りだった。

 

その瞬間、

 

ブォンッ!!

 

空気が震えた。

 

次の瞬間、少し離れた場所にあった木へ一本の線が走る。

 

ズズズッ……

 

木が傾く。

 

そして、

 

ドォォォォン!!

 

盛大な音を立てて倒れた。

 

道場中が静まり返る。

 

レインも固まった。

 

ルークも固まった。

 

門下生たちも固まった。

 

「あ……」

 

嫌な予感がした。

 

ゆっくり振り返る。

 

そこには、笑顔のコウシロウが立っていた。

 

とても優しい笑顔だった。

 

だが目だけが笑っていない。

 

「レイン君」

 

「はい」

 

「説明をお願いします」

 

「飛ぶ斬撃……ですかね?」

 

「でしょうね」

 

優しい声だった。

 

だからこそ怖かった。

 

その後、人生でもトップクラスに長い説教を受けた。

 

結果...飛ぶ斬撃は一心道場で禁止となった。

 

「絶対に使わないでください」

 

「はい」

 

「絶対ですよ?」

 

「はい」

 

「木を切らないでください」

 

「はい……」

 

レインは深く反省した。

 

もっとも、ルークはその後三日ほど笑い続けた。

 

「社長」

 

「何だ」

 

「飛ぶ斬撃で先生に怒られる人、初めて見ました」

 

「うるさい」

 

そう言いながらもレインは少し嬉しかった。

 

飛ぶ斬撃。

 

それは確かな成長の証だったからだ。

 

半年……長いようで短い時間だった。

 

だが二人は確実に前へ進んでいる。

 

そんな二人を見つめながら、コウシロウは静かに微笑んでいた。

 

一年後が楽しみです。

 

かつて口にした言葉は、どうやら間違いではなかったらしい。

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