ONE PIECE 〜船大工レイン〜   作:ペンギンって可愛いですよね

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第百八十六話「怪物たちの成長」

 

飛ぶ斬撃事件から数日後、一心道場では、ある話題で持ちきりになっていた。

 

「なあ」

 

「何だ?」

 

「レインさんとルークさん、ヤバくないか?」

 

朝の稽古前、門下生たちが小声で話している。

 

しかしその視線の先には、当の本人たちがいた。

 

レインは庭で素振りをしている。

 

ルークはその横で瞑想をしていた。

 

一見すると普通の光景だ。

 

だが、普通ではない。

 

「飛ぶ斬撃だぞ?」

 

「俺、初めて見たぞ」

 

「俺も」

 

「先生以外で使える人いるんだな……」

 

門下生の一人が呟いた。

 

別の門下生が苦笑する。

 

「いや、飛ぶ斬撃もヤバいけど、そこじゃないだろ」

 

「え?」

 

「半年前のレインさん思い出してみろ」

 

皆が考える。

 

確かに当時から強かった。

 

いや、正確には、最初から自分たちより強かった。

 

それは誰もが認めている。

 

コウシロウと手合わせした時も、素人とは思えない実力だった。

 

身体能力も高い。

 

反応速度も高い。

 

実戦経験も豊富。

 

だが、あくまで自己流だった。

 

そこが大きかった。

 

「今は違うんだよな……」

 

門下生の一人が呟く。

 

皆が頷いた。

 

今のレインは、元々高かった戦闘能力に、半年分の剣術の基礎。

 

足運び。

 

呼吸。

 

体重移動。

 

間合い。

 

型。

 

そういったものが加わっている。

 

しかも本人は努力家だ。

 

毎日誰よりも真面目に修行する。

 

伸びない理由がない。

 

「正直」

 

「今のレインさんと戦いたくない」

 

「分かる」

 

「絶対嫌だ」

 

全員一致だった。

 

さらに厄介なのは。

 

ルークである。

 

「あの人もおかしい」

 

「うん」

 

「おかしいな」

 

また全員一致だった。

 

ルークは剣士ではない。

 

だが強い。

 

元々身体能力は高かった。

 

見張り役として危険察知能力も優れていた。

 

そこへ半年間の武道修行が加わった。

 

呼吸法。

 

体術。

 

精神統一。

 

そして見聞色。

 

今では背後から近付いても気付かれる。

 

不意打ちがほぼ通用しない。

 

「さっき後ろから近付いたら振り向かれた」

 

「俺も」

 

「俺なんか三歩前で止められた」

 

「怖っ」

 

門下生たちは震えた。

 

そして誰かが言った。

 

「もしかして」

 

「何だ?」

 

「この二人に勝てる人、世界にいるのか?」

 

その場が静まり返った。

 

しばらく考える。

 

そして、

 

「先生」

 

即答だった。

 

全員が頷く。

 

それ以外が思いつかない。

 

だが、

 

「でも半年後は分からなくないか?」

 

「……」

 

「……」

 

「……」

 

全員が黙った。

 

嫌な沈黙だった。

 

その可能性が十分にあるからだ。

 

一方その頃、コウシロウもまた二人の成長を見守っていた。

 

庭ではレインが木刀を振っている。

 

無駄がない。

 

半年前とは比較にならない。

 

力みもない。

 

重心も安定している。

 

何より吸収が異常に早い。

 

教えたことをすぐ理解する。

 

そして自分なりに考え、さらに発展させる。

 

指導者としては楽しい。

 

だが少し恐ろしくもある。

 

「本当に凄いですね」

 

隣にいた門下生が言う。

 

コウシロウは微笑んだ。

 

「ええ」

 

「ここまで成長が早い人は初めて見ます」

 

それは本心だった。

 

レインも。

 

ルークも。

 

才能だけなら見たことがある。

 

努力家も見たことがある。

 

だが、才能があり、努力もできて、素直に学ぶ。

 

そんな人間は滅多にいない。

 

特にレインはそうだった。

 

分からないことを恥じない。

 

学ぶことを楽しむ。

 

だから伸びる。

 

船大工。

 

商人。

 

発明家。

 

そして剣士。

 

本来なら一つでも大成するのが難しい道だ。

 

それを全て本気でやろうとしている。

 

普通なら無謀だ。

 

だが、あの少年なら、もしかすると...

 

コウシロウは小さく笑った。

 

「半年後がさらに楽しみですね」

 

以前と同じ言葉だった。

 

だが半年前とは意味が違う。

 

今は確信に近い。

 

この二人はまだ成長する。

 

しかも大きく。

 

門下生たちは既に怪物を見るような目で二人を見ている。

 

だが本人たちは気付いていない。

 

レインは相変わらず木刀を振り続けている。

 

ルークは静かに瞑想している。

 

ただ前を向いて、ただ強くなろうとしている。

 

その姿を見ながらコウシロウは思う。

 

この二人が世界へ出た時、一体どこまで行くのだろうか。

 

そんな未来が少しだけ楽しみだった。

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