ONE PIECE 〜船大工レイン〜 作:ペンギンって可愛いですよね
飛ぶ斬撃事件から数日後、一心道場では、ある話題で持ちきりになっていた。
「なあ」
「何だ?」
「レインさんとルークさん、ヤバくないか?」
朝の稽古前、門下生たちが小声で話している。
しかしその視線の先には、当の本人たちがいた。
レインは庭で素振りをしている。
ルークはその横で瞑想をしていた。
一見すると普通の光景だ。
だが、普通ではない。
「飛ぶ斬撃だぞ?」
「俺、初めて見たぞ」
「俺も」
「先生以外で使える人いるんだな……」
門下生の一人が呟いた。
別の門下生が苦笑する。
「いや、飛ぶ斬撃もヤバいけど、そこじゃないだろ」
「え?」
「半年前のレインさん思い出してみろ」
皆が考える。
確かに当時から強かった。
いや、正確には、最初から自分たちより強かった。
それは誰もが認めている。
コウシロウと手合わせした時も、素人とは思えない実力だった。
身体能力も高い。
反応速度も高い。
実戦経験も豊富。
だが、あくまで自己流だった。
そこが大きかった。
「今は違うんだよな……」
門下生の一人が呟く。
皆が頷いた。
今のレインは、元々高かった戦闘能力に、半年分の剣術の基礎。
足運び。
呼吸。
体重移動。
間合い。
型。
そういったものが加わっている。
しかも本人は努力家だ。
毎日誰よりも真面目に修行する。
伸びない理由がない。
「正直」
「今のレインさんと戦いたくない」
「分かる」
「絶対嫌だ」
全員一致だった。
さらに厄介なのは。
ルークである。
「あの人もおかしい」
「うん」
「おかしいな」
また全員一致だった。
ルークは剣士ではない。
だが強い。
元々身体能力は高かった。
見張り役として危険察知能力も優れていた。
そこへ半年間の武道修行が加わった。
呼吸法。
体術。
精神統一。
そして見聞色。
今では背後から近付いても気付かれる。
不意打ちがほぼ通用しない。
「さっき後ろから近付いたら振り向かれた」
「俺も」
「俺なんか三歩前で止められた」
「怖っ」
門下生たちは震えた。
そして誰かが言った。
「もしかして」
「何だ?」
「この二人に勝てる人、世界にいるのか?」
その場が静まり返った。
しばらく考える。
そして、
「先生」
即答だった。
全員が頷く。
それ以外が思いつかない。
だが、
「でも半年後は分からなくないか?」
「……」
「……」
「……」
全員が黙った。
嫌な沈黙だった。
その可能性が十分にあるからだ。
一方その頃、コウシロウもまた二人の成長を見守っていた。
庭ではレインが木刀を振っている。
無駄がない。
半年前とは比較にならない。
力みもない。
重心も安定している。
何より吸収が異常に早い。
教えたことをすぐ理解する。
そして自分なりに考え、さらに発展させる。
指導者としては楽しい。
だが少し恐ろしくもある。
「本当に凄いですね」
隣にいた門下生が言う。
コウシロウは微笑んだ。
「ええ」
「ここまで成長が早い人は初めて見ます」
それは本心だった。
レインも。
ルークも。
才能だけなら見たことがある。
努力家も見たことがある。
だが、才能があり、努力もできて、素直に学ぶ。
そんな人間は滅多にいない。
特にレインはそうだった。
分からないことを恥じない。
学ぶことを楽しむ。
だから伸びる。
船大工。
商人。
発明家。
そして剣士。
本来なら一つでも大成するのが難しい道だ。
それを全て本気でやろうとしている。
普通なら無謀だ。
だが、あの少年なら、もしかすると...
コウシロウは小さく笑った。
「半年後がさらに楽しみですね」
以前と同じ言葉だった。
だが半年前とは意味が違う。
今は確信に近い。
この二人はまだ成長する。
しかも大きく。
門下生たちは既に怪物を見るような目で二人を見ている。
だが本人たちは気付いていない。
レインは相変わらず木刀を振り続けている。
ルークは静かに瞑想している。
ただ前を向いて、ただ強くなろうとしている。
その姿を見ながらコウシロウは思う。
この二人が世界へ出た時、一体どこまで行くのだろうか。
そんな未来が少しだけ楽しみだった。