ONE PIECE 〜船大工レイン〜   作:ペンギンって可愛いですよね

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第百八十七話「卒業」

 

さらに半年が過ぎた。

 

レインとルークがシモツキ村へやって来てから一年。

 

レインは十四歳。

 

ルークは十七歳になっていた。

 

一年前、一心道場へやって来た時とは比べものにならないほど二人は成長している。

 

特にレインの成長は凄まじかった。

 

毎日の素振り。

 

剣術の基礎。

 

瞑想。

 

体力作り。

 

農作業の手伝い。

 

どれ一つとして手を抜かなかった。

 

そして、その努力は確かな実力となって現れていた。

 

その日の朝、コウシロウは庭へ出るとレインへ声を掛けた。

 

「レイン君」

 

「はい」

 

「少し手合わせをお願いできますか?」

 

その言葉に門下生たちがざわつく。

 

久しぶりだった。

 

コウシロウとレインの手合わせ。

 

一年ほど前、レインは完敗した。

 

強いが基礎がない。

 

そう評価された。

 

あれから一年…

 

果たしてどこまで成長したのか。

 

門下生たちも興味津々だった。

 

「よろしくお願いします」

 

レインは木刀を構える。

 

コウシロウも構えた。

 

静寂。

 

風が吹く。

 

誰も喋らない。

 

そして次の瞬間、二人が同時に動いた。

 

カンッ!!

 

木刀がぶつかる。

 

速い。

 

門下生たちの多くは最初の動きを見失った。

 

「うそだろ……」

 

誰かが呟く。

 

一年前とは全く違う。

 

レインの動きに無駄がない。

 

足運び。

 

間合い。

 

体重移動。

 

全てが洗練されていた。

 

しかも、速い。

 

圧倒的に速い。

 

何度も木刀がぶつかる。

 

その度に乾いた音が響く。

 

カンッ!

 

カンッ!

 

カンッ!

 

互角…

 

少なくとも門下生たちにはそう見えた。

 

そして十数分後、勝負が動く。

 

レインが踏み込んだ。

 

コウシロウが受ける。

 

その瞬間、レインの木刀が軌道を変えた。

 

ほんの僅かな変化。

 

しかし致命的だった。

 

コウシロウの防御をすり抜ける。

 

トン。

 

木刀の先が首元で止まった。

 

静寂。

 

誰も動かない。

 

誰も声を出せない。

 

レイン自身も固まっていた。

 

一番驚いているのは本人だった。

 

コウシロウがゆっくり笑う。

 

「参りました」

 

その言葉で全員が現実へ引き戻された。

 

「え?」

 

「勝った?」

 

「先生に?」

 

「嘘だろ?」

 

門下生たちが騒ぎ始める。

 

一年前、完敗した相手だ。

 

それが今、勝った…コウシロウに。

 

レインは木刀を下ろした。

 

「たまたまです」

 

思わずそう言う。

 

だがコウシロウは首を振った。

 

「いいえ」

 

「実力です」

 

穏やかな声だった。

 

「一年前の君には出来なかったことです」

 

「ですが今の君には出来た」

 

「それが答えですよ」

 

レインは何も言えなかった。

 

一年……長かったようで短かった。

 

思い返せば本当に基礎ばかりだった。

 

素振り。

 

型。

 

呼吸。

 

瞑想。

 

そんな地味なことばかり。

 

だが、その積み重ねが今ここにある。

 

コウシロウは木刀を置いた。

 

そして静かに言う。

 

「レイン君」

 

「はい」

 

「卒業です」

 

その言葉にレインは目を見開いた。

 

門下生たちも固まる。

 

「卒業……ですか?」

 

「ええ」

 

コウシロウは微笑む。

 

「もう私が教えることはありません」

 

その場が静まり返る。

 

誰も予想していなかった。

 

だがコウシロウの表情は本気だった。

 

「技術は教えました」

 

「基礎も教えました」

 

「考え方も伝えました」

 

「後は君自身の道です」

 

レインは言葉を失う。

 

嬉しい。

 

だが少し寂しい。

 

そんな複雑な気持ちだった。

 

門下生たちはもっと混乱していた。

 

「卒業?」

 

「一年で?」

 

「先生超えたの?」

 

「本当に?」

 

「いや意味分からん」

 

全員が混乱している。

 

その時だった。

 

ルークが呆れたように笑う。

 

「やっぱりレインさんおかしいですよ」

 

心からの感想だった。

 

一年でコウシロウを超える。

 

普通ではない。

 

絶対に普通ではない。

 

だが、その言葉を聞いた門下生たちが一斉に振り返る。

 

「いやいやいや!」

 

「何ですか?」

 

「ルークさん!」

 

「あなたも大概おかしいです!」

 

全員が総ツッコミだった。

 

ルークは思わず固まる。

 

「え?」

 

「え?じゃないです!」

 

「不意打ち効かないじゃないですか!」

 

「後ろ取れないんですよ!?」

 

「気付いたら見られてるんですよ!?」

 

「怖いんですよ!?」

 

門下生たちの不満が爆発する。

 

ルークは苦笑した。

 

確かに最近よく言われる。

 

本人としては普通のつもりだった。

 

「社長の方がおかしいです」

 

「いや、お前も十分おかしい」

 

レインが即座に返す。

 

「いやいや社長には負けます」

 

二人は真顔だった。

 

門下生たちは頭を抱えた。

 

会話が成立していない。

 

コウシロウはそんな様子を見ながら静かに笑う。

 

本当に面白い二人だった。

 

才能がある。

 

努力もする。

 

それでいて驕らない。

 

だからここまで成長したのだろう。

 

「ですが」

 

コウシロウが口を開く。

 

その場が静かになる。

 

「剣の道に終わりはありません」

 

レインは頷いた。

 

「はい」

 

「卒業は終わりではありません」

 

「新しい始まりです」

 

その言葉を胸に刻む。

 

十四歳……まだまだ人生は長い。

 

世界は広い。

 

そして、自分はまだまだ強くなれる。

 

そんな確信があった。

 

こうしてレインは一心道場を卒業する。

 

だが、それは終わりではない。

 

世界へ羽ばたくための、新たな第一歩だった。

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