ONE PIECE 〜船大工レイン〜 作:ペンギンって可愛いですよね
レインが一心道場を卒業してから一週間が経った。
その間もレインとルークは普段通り修行を続けていた。
素振りをし、瞑想をし、門下生たちと汗を流す。
だが、二人とも分かっていた。
別れの日が近付いていることを…
そして、その日の朝、レインは道場の庭へ集まった門下生たちを見渡した。
ルークも隣に立っている。
コウシロウもいつものように穏やかな表情で座っていた。
「皆さん」
レインが口を開く。
門下生たちが顔を上げた。
「俺とルークは明日、この村を出ます」
静寂が訪れる。
誰も喋らない。
数秒後、
「え?」
誰かが呟いた。
「出るんですか?」
「はい」
レインは頷く。
「元々旅の途中でしたから」
その言葉を聞いて、門下生たちの顔が曇る。
一年…たった一年。
だが毎日顔を合わせてきた。
一緒に修行した。
一緒に笑った。
時には飛ぶ斬撃で木を倒して説教される姿も見た。
いつの間にか仲間だった。
家族のような存在だった。
だからこそ寂しい。
「早すぎません?」
「そうですよ」
「もう少しいてもいいじゃないですか」
次々と声が上がる。
レインは苦笑した。
「ありがとうございます」
「でも行かなきゃいけないんです」
世界は広い。
見たいものがある。
やりたいことがある。
まだ旅は終わらない。
門下生たちもそれは理解していた。
だから強く引き止めることはしなかった。
だが、泣いている者はいた。
「なんで泣いてるんだよ」
「だって寂しいじゃないですか!」
「お前昨日まで俺のこと怪物って言ってただろ」
「怪物でも寂しいんです!」
思わず笑いが起きる。
だがその目は赤かった。
レインは少し照れ臭くなる。
一年しかいなかったはずなのに、思っていた以上に居場所になっていたらしい。
そして最後に、レインはコウシロウへ向き直った。
「先生」
「はい」
「一年間ありがとうございました」
深く頭を下げる。
ルークも続く。
コウシロウは二人を見つめた。
そして優しく微笑む。
「そうですか」
それだけだった。
だが、その一言には様々な感情が込められていた。
寂しさ。
嬉しさ。
誇らしさ。
全てを包み込むような笑顔だった。
「気を付けて旅を続けてください」
「はい」
「そして」
コウシロウは少しだけ笑う。
「たまには顔を見せに来てください」
「もちろんです」
レインも笑った。
その後、二人は村中へ挨拶に回った。
農家。
鍛冶屋。
商店。
港で働く人々。
一年間お世話になった人は数え切れない。
皆が別れを惜しんでくれた。
特に農家のおじさんたちは大騒ぎだった。
「レイン!」
「これ持っていけ!」
気付けば荷車いっぱいの野菜が積まれていた。
人参。
玉ねぎ。
じゃがいも。
キャベツ。
果物まである。
「多すぎません!?」
「いいから持っていけ!」
「お前ら本当に助かったんだ!」
「そうそう!」
「食い物はあって困らん!」
次々に増えていく。
ルークが呆れた顔になった。
「社長」
「何だ」
「商売でも始めるんですか?」
「俺もそう思ってる」
結局、雨神の船倉には大量の野菜と果物が積み込まれることになった。
そして翌朝の港。
雨神の出航準備は既に終わっていた。
荷物も積み終わっている。
後は出発するだけだった。
レインが船へ乗り込もうとした時。
遠くから大勢の声が聞こえた。
「レインさーん!」
「ルークさーん!」
振り返る。
そこには、一心道場の門下生たちがいた。
全員来ていた。
修行仲間たち。
そして、その中心にはコウシロウもいる。
「皆……」
レインは思わず笑った。
「見送りです!」
「当たり前じゃないですか!」
「勝手に出発しないでください!」
門下生たちは口々に叫ぶ。
中には泣いている者もいた。
「絶対また来てください!」
「今度は負けませんからね!」
「次会う時まで強くなってますから!」
次々と声が飛ぶ。
レインは大きく頷いた。
「俺も負けないぞ」
「ルークもな」
「はい」
ルークも笑顔で手を振る。
そして最後、コウシロウが前へ出た。
「レイン君」
「はい」
「ルーク君」
「はい」
「良い旅を」
短い言葉だった。
だが十分だった。
二人は深く頭を下げる。
「一年間、本当にありがとうございました」
コウシロウは穏やかに微笑んだ。
「こちらこそ」
その笑顔を見た瞬間、レインは少しだけ胸が熱くなった。
ここは間違いなく第二の故郷だった。
だが、立ち止まるわけにはいかない。
まだ見ぬ世界が待っている。
レインはロープを外した。
「出航するぞ」
「はい」
雨神がゆっくりと港を離れる。
門下生たちが大きく手を振る。
レインとルークも振り返した。
その姿が小さくなっていく。
やがてシモツキ村も遠ざかっていく。
それでも、コウシロウたちの姿は最後まで見えていた。
新たな旅が始まる。
二人は静かに前を向いた。
東の海は広い。
そして世界はもっと広い。
雨神は風を受けながら、次なる目的地へ向けて進み始めるのだった。