ONE PIECE 〜船大工レイン〜   作:ペンギンって可愛いですよね

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第百九十一話「一方その頃...」

 

その頃――グランドライン。

 

ロジャー海賊団の船、オーロ・ジャクソン号では宴が開かれていた。

 

白ひげ海賊団との激突を終えたばかりだというのに、船員たちは元気そのものだった。

 

酒を飲む者。

 

歌う者。

 

騒ぐ者。

 

笑う者。

 

船中に賑やかな声が響いている。

 

その中心には、もちろんロジャーがいた。

 

「ガハハハハ!」

 

豪快な笑い声が夜空へ響く。

 

病に侵されているとは思えないほど元気だった。

 

だが、長年共に旅をしてきたレイリーやギャバンは知っている。

 

ロジャーに残された時間が、決して長くないことを。

 

宴もひと段落した頃、ロジャーは酒瓶を片手に甲板へ腰を下ろした。

 

潮風が吹く。

 

静かな海だった。

 

そこへ近付いてきたのは、光月おでんだった。

 

「ロジャー」

 

「ん?」

 

「何を考えておる?」

 

おでんは興味深そうに尋ねる。

 

ロジャーはニヤリと笑った。

 

「面白いことだ」

 

その笑顔を見て、おでんも笑う。

 

この男がこういう顔をする時は、大抵ろくでもない。

 

だが、大抵面白い。

 

だから困る。

 

「おでん」

 

「何だ?」

 

「実はな、東の海の端の方に面白い少年がいるんだ」

 

その言葉に、おでんは眉を上げた。

 

「少年?」

 

「ああ」

 

ロジャーは頷き、どこか懐かしそうな顔をした。

 

「一年前に会ったんだが、あいつは変な奴だった」

 

「初対面で俺の本名を見抜きやがった」

 

おでんの目が見開かれる。

 

「本名?」

 

「ああ」

 

ロジャーは笑った。

 

「世間じゃ、ゴールド・ロジャーで通っているだろ?」

 

「だが、あいつは最初からゴール・D・ロジャーと言いやがった」

 

おでんの表情が変わる。

 

Dの名。

 

それは世界政府が意図的に隠している名前だ。

 

知る者は限られている。

 

まして、東の海の少年が知っているなど普通ではない。

 

「ほう……」

 

おでんは興味深そうに腕を組んだ。

 

「面白いだろ?」

 

「確かにな」

 

ロジャーは楽しそうに笑う。

 

「あいつはな、俺が海賊王になるとも言いやがった」

 

「ガハハハハ!」

 

思い出しただけで笑えるらしい。

 

近くで聞いていたレイリーが苦笑する。

 

あの時のことは今でも覚えている。

 

レインという少年。

 

異常なほど聡く、異常なほど落ち着いていた。

 

子供とは思えなかった。

 

「それだけじゃない」

 

ロジャーの目が少し真剣になる。

 

「誰にも言うなと言われたんだがな」

 

おでんの表情も引き締まった。

 

ロジャーが秘密を話す時は、重要な話だ。

 

「その島には、ポーネグリフがある」

 

空気が変わる。

 

おでんの目が鋭くなった。

 

「何だと?」

 

「しかも、その少年の一族は代々、そのポーネグリフを守っているらしい」

 

おでんは目を見開いた。

 

「守っている?」

 

「ああ」

 

ロジャーは頷く。

 

「詳しくは聞いていない」

 

「だが、先祖代々受け継がれてきた役目らしい」

 

おでんは考え込む。

 

ポーネグリフ。

 

それを守る一族。

 

偶然とは思えない。

 

「読めるのか?」

 

「いや」

 

ロジャーは首を振る。

 

「少なくとも、俺が会った時は読めなかった」

 

「だが、何か知っている」

 

「そんな気がするんだ」

 

おでんは静かに空を見上げた。

 

ポーネグリフを読むことができるのは光月家。

 

それは確信している。

 

だが、守る者がいてもおかしくはない。

 

むしろ、八百年もの間残り続けたことを考えれば、どこかで誰かが守っていたはずだ。

 

興味が湧く。

 

非常に湧く。

 

「だからな」

 

ロジャーが言った。

 

「もう一度、会っておきたいんだ」

 

おでんはロジャーを見る。

 

その表情は、いつもの豪快な海賊のものではなかった。

 

どこかに焦りがある。

 

残された時間を知る男の顔だった。

 

「もう、俺も長くない」

 

静かな声だった。

 

誰も茶化さない。

 

レイリーも。

 

ギャバンも。

 

おでんも。

 

皆、知っている。

 

だからこそ、この男が最後の航海へ懸ける想いも。

 

「行くか?」

 

ロジャーが笑う。

 

「東の海へ」

 

おでんは数秒考えた。

 

そして、豪快に笑った。

 

「当然だろう!」

 

即答だった。

 

「そんな面白そうな話を聞いて、行かぬ理由があるか!」

 

ロジャーも大笑いする。

 

「ガハハハハ!」

 

「そうだろう!」

 

近くで聞いていたギャバンが頭を掻いた。

 

「また面倒事が増えそうだな」

 

「間違いない」

 

レイリーも苦笑する。

 

だが、二人とも少し楽しみだった。

 

あの少年は今、どうしているのか。

 

一年前ですら異常だった。

 

それからさらに一年が経ったのだ。

 

まともな成長をしているとは思えない。

 

ロジャーは満面の笑みを浮かべる。

 

「待ってろよ、レイン」

 

誰にも聞こえないほど小さな声だった。

 

東の海のとある小さな島。

 

そして、グランドライン。

 

本来なら交わるはずのない二つの航路が、再び交差しようとしていた。

 

運命の歯車は、静かに動き始めている。

 

それが世界を揺るがす旅の始まりになることを、まだ誰も知らなかった。

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