ONE PIECE 〜船大工レイン〜 作:ペンギンって可愛いですよね
ローグタウン。
後に「始まりと終わりの町」と呼ばれることになる場所。
東の海最後の島。
そしてレッドラインを越えれば、その先はグランドライン。
そんな場所へ、雨神は向かっていた。
事の発端は数日前。
レインの何気ない一言だった。
「なあ、ルーク」
「何ですか?」
「ローグタウン行かないか?」
その瞬間、ルークの表情が固まった。
嫌な予感しかしない。
「何故ですか?」
慎重に尋ねる。
するとレインは当然のように答えた。
「ロジャーの生まれた町だから」
ルークは頭を抱えた。
やっぱりだった。
絶対ろくでもない理由だと思った。
「社長」
「何だ?」
「まさかグランドライン行こうとしてませんよね?」
「行かないぞ」
「本当ですか?」
「本当だ」
レインは頷く。
「ロジャーに会えないなら、生まれた町くらい見てみたいだけだ」
それは本音だった。
前世の記憶があるレインにとって、ローグタウンは特別な場所だ。
海賊王が生まれた町。
そして後に処刑される町。
今はまだその未来は訪れていない。
だが、それでも一度見てみたいと思った。
しかし、ルークは納得しない。
「ローグタウンってレッドラインの目と鼻の先ですよね?」
「そうだな」
「グランドライン入口の直前ですよね?」
「そうだな」
「絶対行く気ですよね!?」
「行かないって」
レインは苦笑する。
だがルークの目は疑いに満ちていた。
信用していない。
全く信用していない。
それもそのはずだ。
この一年で何度もグランドラインへ行こうとしていた。
強い相手の話を聞く。
戦いたくなる。
行こうとする。
止められる。
そんな流れを何度も繰り返している。
「大丈夫だって」
「大丈夫じゃありません」
「観光だ」
「社長の観光は信用できません」
即答だった。
結局。
三日ほど押し問答が続いた。
そして、最終的に折れたのはルークだった。
「絶対グランドライン行きませんよ?」
「行かない」
「本当に?」
「本当に」
「約束ですよ?」
「約束だ」
レインは笑顔だった。
ルークは不安だった。
とても不安だった。
そして現在。
雨神はローグタウンの港へ入港していた。
「おお……」
レインは思わず感嘆の声を漏らす。
大きい。
今まで訪れた東の海の町とは規模が違う。
港には無数の船が停泊している。
商船。
漁船。
海軍の船。
様々な人々が行き交い、活気に溢れていた。
「流石ですね」
ルークも感心している。
東の海最後の島。
それだけでなく、世界中から人が集まる場所でもある。
「まずは観光だな」
レインが言う。
「本当に観光ですよね?」
「だからそう言ってるだろ」
ルークは半信半疑だった。
二人は船を停泊させる。
荷物を最低限だけ持ち、町へ足を踏み入れた。
賑やかな声。
商人たちの呼び込み。
食べ物の匂い。
どこもかしこも人で溢れている。
「凄いな」
レインは素直に感心した。
シモツキ村とは全く違う。
まさに大都市だった。
そんな中。
レインはふと空を見上げる。
ローグタウン。
ロジャーが生まれた町。
まだ海賊王ではない。
まだ伝説でもない。
一人の少年として生まれた場所。
不思議な気分だった。
「何考えてるんですか?」
ルークが尋ねる。
「いや」
レインは少し笑った。
「ロジャーも昔はこの辺走り回ってたのかなと思ってな」
ルークも少し笑う。
確かにそうかもしれない。
世界を震わせる海賊でも。
最初はただの少年だったのだ。
だが、二人は知らない。
同じ頃...遥か遠くの海では、オーロ・ジャクソン号が東の海へ向かっていることを。
そして、
ロジャー。
レイリー。
ギャバン。
おでん。
世界最高峰の怪物たちが、自分たちを目指していることを。
運命の再会は、もうすぐそこまで迫っていた。