ONE PIECE 〜船大工レイン〜   作:ペンギンって可愛いですよね

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第八章
第百九十四話「再会」


 

ローグタウンの港は騒然としていた。

 

海賊。

 

商人。

 

船乗り。

 

海兵。

 

ありとあらゆる人々が港へ集まっている。

 

理由は単純だった。

 

ロジャー海賊団。

 

今、世界で最も海賊王に近い男たちが、東の海へ現れたのだ。

 

恐れを抱く者もいる。

 

興奮している者もいる。

 

遠巻きに眺める者もいる。

 

だが、誰も近付こうとはしなかった。

 

相手はロジャー海賊団。

 

その名を知らぬ者などいない。

 

一方、当のロジャー海賊団は意外なほど落ち着いていた。

 

船員たちは補給の準備を進めている。

 

レイリーは港の様子を眺め、ギャバンは樽を運ぶ船員たちへ指示を出している。

 

おでんは東の海最大級の港町に興味津々だった。

 

そんな中、ロジャーだけが不意に動きを止めた。

 

「……?」

 

ロジャーの表情が変わる。

 

それを見て、レイリーが眉を上げた。

 

「どうした?」

 

ロジャーは答えない。

 

ゆっくりと港の入口へ視線を向けていた。

 

見聞色――その感覚が何かを捉えている。

 

強い。

 

かなり強い。

 

東の海ではあり得ないほど強い。

 

それも一人ではない。

 

二人。

 

いや、二つの気配。

 

しかも不思議なことに、敵意がない。

 

だが、油断もできない。

 

「誰か来る」

 

ロジャーが呟く。

 

その一言で、周囲の空気が変わった。

 

レイリーが見聞色を広げる。

 

ギャバンも同じだった。

 

おでんも気付く。

 

そして、全員が少し驚いた。

 

「何だ、この気配は」

 

おでんが目を細めた。

 

強い…間違いなく強い…

 

東の海で感じるような気配ではない。

 

新世界でも十分に通用する。

 

そんなレベルだった。

 

「海軍か?」

 

ギャバンが尋ねる。

 

「いや、違う」

 

ロジャーは首を振った。

 

敵意は感じない。

 

むしろ、妙な懐かしさがあった。

 

どこかで感じたことがある。

 

そんな気がする。

 

だが、思い出せない。

 

一年前、ほんの短い時間だけ会った誰かの面影が、頭をよぎる。

 

しかし、あり得ない。

 

あの少年が、こんな気配を放つはずがない。

 

まだ一年しか経っていないのだから。

 

「一応、警戒しておけ」

 

ロジャーが言う。

 

その言葉で、船員たちも武器へ手を伸ばした。

 

やがて港の人混みが割れる。

 

誰かが歩いてくる。

 

一歩。

 

また一歩。

 

ゆっくりと、しかし迷いなく、こちらへ向かってくる。

 

最初に姿が見えたのは、黒髪の少年だった。

 

その隣には茶髪の青年。

 

どちらも若い。

 

若すぎる。

 

だが、その二人を見た瞬間、ロジャーの目が大きく見開かれた。

 

「……は?」

 

思わず声が漏れる。

 

レイリーも固まった。

 

ギャバンも目を見開く。

 

事情を知らないおでんだけが、首を傾げていた。

 

「何だ?」

 

誰も答えない。

 

ロジャー海賊団の幹部たちが揃って固まっていた。

 

なぜなら、その少年の顔に見覚えがあったからだ。

 

忘れるはずがない。

 

Dの名を知っていた少年。

 

自分が海賊王になると言った少年。

 

ポーネグリフを守る一族の少年。

 

レイン…その本人だった。

 

「おいおいおい……」

 

ギャバンが頭を押さえる。

 

「嘘だろ」

 

レイリーも苦笑した。

 

ロジャーに至っては、完全に固まっている。

 

理解が追いつかない。

 

東の海の端にある島にいるはずだった。

 

だからこそ、自分たちの方から会いに行こうとした。

 

そのために、おでんまで連れてきた。

 

それなのに、なぜ本人がここにいるのか。

 

しかも、強くなりすぎている。

 

見聞色で感じる気配が異常だった。

 

一年前の面影は残っている。

 

だが、まるで別人だ。

 

身体も大きくなっている。

 

纏う空気も違う。

 

まるで長年、新世界で戦い続けてきた猛者のような気配を放っている。

 

隣のルークも同じだった。

 

むしろ、見聞色だけなら異様なほど鋭い。

 

レイリーですら驚くほどに。

 

「レイン……か?」

 

ロジャーが呟く。

 

少年は足を止めた。

 

そして、笑う。

 

「はい、久しぶりです」

 

その瞬間だった。

 

ロジャーは腹を抱えて大笑いした。

 

「ガハハハハハハハ!!」

 

港中に響き渡る大笑い。

 

町の人々が何事かと振り返る。

 

レイリーも笑い始めた。

 

ギャバンも肩を震わせている。

 

事情を知らないおでんだけが、完全に置いてけぼりだった。

 

「何がおかしいんだ?」

 

「お前もすぐに分かる」

 

レイリーが笑う。

 

ロジャーは涙を浮かべながら、レインを指差した。

 

「お前!」

 

「何でここにいるんだ!!」

 

心からの疑問だった。

 

レインも苦笑する。

 

「それは俺の台詞ですよ」

 

「何で東の海にいるんですか?」

 

「お前に会いに来たんだ!」

 

ロジャーが即答した。

 

レインが固まる。

 

ルークも固まる。

 

周囲の船員たちは笑いを堪えていた。

 

「会いに?」

 

「ああ!」

 

「誰に?」

 

「お前に決まってるだろ!」

 

レインは完全に停止した。

 

ルークも理解が追いつかない。

 

ロジャー海賊団。

 

世界最強クラスの海賊団。

 

その船長が、わざわざ東の海まで自分に会うために来た。

 

意味が分からない。

 

「はぁ!?」

 

レインとルークの声が綺麗に重なった。

 

今度は船員たちまで笑い出した。

 

ロジャーは相変わらず大笑いしている。

 

レイリーは肩を竦めた。

 

「実はな、ロジャーがお前たちに会いたいと言い出してな」

 

「それで東の海まで来たんだ」

 

レインは呆然とした。

 

ルークも同じだった。

 

そして、レインはふと気付く。

 

「あれ?」

 

レインの視線が一人の男へ向く。

 

大柄な侍。

 

二本の刀を腰に差している。

 

新聞で見た顔だった。

 

「もしかして……」

 

おでんがニヤリと笑う。

 

「光月おでんだ」

 

レインの表情が固まる。

 

ロジャー。

 

レイリー。

 

ギャバン。

 

そして、光月おでん。

 

世界最高峰の怪物たちが全員揃っていた。

 

ルークは横で頭を抱えた。

 

嫌な予感しかしない。

 

社長の目が輝いている。

 

それはもう、危険なほどに。

 

一方、ロジャーもまた、レインを見つめていた。

 

面白い。

 

やはり面白い。

 

一年前もそう思った。

 

だが、今はそれ以上だ。

 

この少年は、確実に世界を変える側の人間だ。

 

そんな確信があった。

 

こうして、一年ぶりの再会は果たされた。

 

そして、この出会いが後に世界を揺るがす大きな流れへ繋がっていくことを、まだ誰も知らなかった。

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