ONE PIECE 〜船大工レイン〜 作:ペンギンって可愛いですよね
酒場の宴はまだ続いていた。
ロジャー海賊団の船員たちは、相変わらず騒いでいる。
肉を頬張る者。
酒を飲み干す者。
歌い始める者。
笑い声は途切れることがない。
だが、レインたちが座る卓だけは少し空気が違っていた。
「お前の島にあるポーネグリフを、俺たちに見せてくれないか?」
ロジャーの言葉。
それを聞いたレインは苦笑した。
「やっぱり、その話になりますよね」
ロジャーはニヤリと笑う。
「当然だろ」
「そのために、わざわざ東の海まで来たんだからな」
「お前に会うことと、ポーネグリフを見ることが今回の目的だ」
レイリーも静かに頷く。
ギャバンも酒を置いた。
おでんも興味深そうな表情をしている。
そして、その場で一人だけ話についていけていない男がいた。
ルークである。
「ちょっと待ってください」
全員の視線が集まる。
ルークは困惑した顔でレインを見た。
「島のポーネグリフって何ですか?」
沈黙。
数秒間、卓の上から音が消えた。
ロジャーが瞬きをする。
レイリーも固まる。
ギャバンも固まった。
そして、ロジャーがゆっくりとレインを見る。
「……言ってなかったのか?」
「言ってません」
レインが即答した。
ロジャーは額を押さえた。
レイリーは苦笑する。
ギャバンは呆れたように肩を竦めた。
おでんだけは豪快に笑う。
「ガハハハハ!」
「面白いな!」
「相棒なのだろう?」
「その反応を見る限り、本当に何も知らぬのだな!」
ルークはますます混乱する。
「いやいやいや!」
「笑い事じゃないですよ!」
「何ですか、ポーネグリフって!」
「しかも、島にあるってどういうことですか!」
「そんな話、初めて聞いたんですけど!」
当然だった。
レイン工房創業時からの付き合い。
親友であり相棒。
十年以上一緒にいる。
それなのに、初耳だった。
ルークがレインをじっと見る。
「説明してください」
「社長」
レインは観念したようにため息を吐いた。
「分かった」
酒を一口飲み、静かに話し始める。
「俺の島の地下には、ポーネグリフがある」
ルークの目が見開かれる。
「地下?」
「ああ」
レインは頷いた。
「あれを初めて見たのは、子供の頃だ」
「父さんに連れて行かれて、見せられた」
ルークが固まる。
レイリーたちは、黙って話を聞いていた。
「その時に聞いたんだ」
「俺たちの一族は、代々あれを守る役目を受け継いできたらしい」
「守る役目……」
ルークが呟く。
「そうだ」
レインは静かに続ける。
「詳しいことは俺も知らない」
「父さんも、全てを知っているわけじゃない」
「ただ、一族に代々伝わってきた役目らしい」
そして、レインはさらに続けた。
「長老も知らない」
その言葉に、ルークが目を見開く。
「え?」
「島で知っているのは父さんだけだ」
卓の空気が少し変わる。
ロジャーもレイリーも真剣な表情になった。
想像以上だった。
長老すら知らない。
つまり、本当に一族だけで守られてきた秘密ということだ。
「そんな重要な話だったんですか……」
ルークが呆然と呟く。
「だから言えなかった」
レインは苦笑した。
「親友だからって、話していい内容じゃない」
ルークは何も言えなかった。
確かに、その通りだった。
もし自分がレインの立場でも、簡単には話せないだろう。
ロジャーが酒を飲みながら口を開く。
「だから、おでんを連れてきたんだ」
ルークが首を傾げる。
「何でです?」
すると、おでんが笑った。
「読めるからだ」
あまりにもあっさりとした答えだった。
「え?」
ルークが固まる。
「ポーネグリフをな」
酒場の空気が静かになる。
ルークは、おでんとロジャーを交互に見た。
意味が分からない。
読める?
あの石を?
一方、レインは表情を変えなかった。
だが、内心では納得していた。
(やっぱりな)
前世の知識がある。
だから、知っていた。
光月家だけがポーネグリフを読めることを。
だが、それを口にすることはできない。
なぜ知っているのか、説明できないからだ。
だから、黙って話を聞く。
「光月家は代々、その技術を受け継いでおる」
おでんが胸を張る。
「元々、あれを作った職人たちも光月家の人間だからな」
ルークは完全に思考停止していた。
今日だけで何回驚いたか分からない。
ロジャーは笑みを浮かべる。
「どうだ?」
「俺たちに見せてくれないか?」
レインはしばらく考えた。
だが、答えは決まっている。
「俺は構いません」
ロジャーの顔が明るくなる。
しかし、レインは続けた。
「ただし、父さんの許可が必要です」
当然だった。
あれはレインの物ではない。
ヴェルク家が代々守ってきた秘密だ。
自分一人で決める権利はない。
ロジャーは満足そうに頷いた。
「ああ、それでいい」
「むしろ、その方が信用できる」
レイリーも静かに笑う。
勝手に秘密を漏らす人間なら、ロジャーもここまで興味を持たなかっただろう。
「よし、決まりだ!」
ロジャーが豪快に笑った。
「お前の島へ向かうぞ!」
「ガハハハハ!」
船員たちも盛り上がる。
ルークだけは、まだ混乱していた。
ポーネグリフ。
守護者の一族。
光月家。
そして、ロジャー海賊団。
気付けば、とんでもない話の中心に自分たちは立っていた。
ルークは、そんな予感を抱いていた。