ONE PIECE 〜船大工レイン〜   作:ペンギンって可愛いですよね

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第百九十八話「守る者の決断」

 

ロジャー海賊団来訪。

 

その知らせは、あっという間に島中へ広がった。

 

当然である。

 

世界最高峰の海賊団が、東の海の小さな島へ再びやって来たのだ。

 

島民たちは仕事どころではなかった。

 

「本当にロジャーだったぞ……」

 

「レイリーもいた……」

 

「おい、あの大男がおでんじゃないか?」

 

「新聞で見たぞ……」

 

「何でそんな奴らが、またうちの島に来るんだ……」

 

皆、不安そうに囁き合っていた。

 

一方、当の本人たちは気にした様子もない。

 

レインの家では大騒ぎになっていた。

 

母は朝から落ち着かない。

 

何度もお茶を淹れ直している。

 

「レイン!」

 

「何?」

 

「お茶、これで大丈夫かな!?」

 

「大丈夫だと思う」

 

「本当に!?」

 

「多分」

 

「多分って何よ!」

 

母は頭を抱えた。

 

海賊王候補が家にいるのだ。

 

落ち着けと言う方が無理だった。

 

居間では、ロジャーが豪快に笑っている。

 

「ガハハハハ!」

 

「良い家だな!」

 

「何だか落ち着くぞ!」

 

レイリーは苦笑しながらお茶を飲む。

 

ギャバンは父と工房の話をしていた。

 

おでんは窓の外を眺めている。

 

「あの畑は誰が作った?」

 

「レインです」

 

「ほう!」

 

「面白いな!」

 

相変わらずだった。

 

そんな騒がしい時間が流れた後。

 

日が沈み始めた頃、父がレインへ声を掛けた。

 

「少し来い」

 

真面目な声だった。

 

レインは頷く。

 

二人は家を出た。

 

向かった先は工房だった。

 

一年以上前まで、毎日のように通っていた場所。

 

夕暮れの工房は、どこか懐かしかった。

 

父はしばらく無言だった。

 

工房の中を見渡す。

 

そして、ぽつりと呟いた。

 

「まさか、ロジャー海賊団を連れて帰ってくるとは思わなかった」

 

レインは苦笑した。

 

「俺も思ってなかった」

 

それは本音だった。

 

ローグタウンへ行った理由は観光だ。

 

ロジャーの生まれた町を見てみたかっただけ。

 

まさか、本人と再会するとは思わなかった。

 

まして、ロジャーたちが自分に会いに来ていたなど、想像もしていなかった。

 

父も苦笑する。

 

「だろうな」

 

「お前の顔を見れば分かる」

 

しばらく沈黙が流れる。

 

工房の外からは、波の音が聞こえていた。

 

やがて、父が口を開く。

 

「改めて聞く」

 

「なぜ、ロジャー海賊団は来た?」

 

レインはローグタウンでの出来事を最初から話した。

 

ロジャーたちと再会したこと。

 

宴を開いたこと。

 

おでんがポーネグリフを読めること。

 

そして、ポーネグリフを見せてほしいと頼まれたこと。

 

父は黙って聞いていた。

 

最後まで聞き終えると、小さく息を吐く。

 

「なるほどな」

 

「筋は通っている」

 

少なくとも、無理やり奪いに来たわけではない。

 

それだけは分かった。

 

父は窓の外を見た。

 

夜空には星が輝いている。

 

そして、静かに尋ねた。

 

「お前はどうしたい?」

 

レインは目を見開いた。

 

予想していなかった言葉だった。

 

「俺が?」

 

「ああ」

 

父は頷く。

 

「今までなら俺が決めていた」

 

「だが、今回は違う」

 

レインは黙る。

 

父はゆっくりと続けた。

 

「気付けば、お前も十四歳だ」

 

「工房の社長でもある」

 

「一年以上島を離れ、自分の力で修行してきた」

 

「そして、ロジャーたちとも対等に話している」

 

父は少し笑った。

 

「もう、俺だけが決める話ではない」

 

その言葉は重かった。

 

レインは理解する。

 

父は今、自分を子供ではなく、一人の人間として見ている。

 

工房の跡取りではなく。

 

守られる存在でもなく。

 

共に決断する相手として。

 

レインはしばらく考えた。

 

そして、答える。

 

「見せても良いと思う」

 

父は何も言わない。

 

レインは続ける。

 

「ロジャーは秘密を守った」

 

「レイリーも信用できる」

 

「おでんなら、ポーネグリフを読める」

 

「それに――」

 

レインは少しだけ笑った。

 

「無理やり奪う気なら、とっくにできてる」

 

父も笑った。

 

確かに、その通りだ。

 

ロジャー海賊団なら、この島程度、力ずくでどうにでもできる。

 

それをしない。

 

だからこそ、信用できる。

 

しばらく沈黙が流れる。

 

やがて、父は大きく頷いた。

 

「俺も同意見だ」

 

レインの表情が少し緩む。

 

父は工房の壁に立て掛けられた工具を眺めた。

 

そして、静かに言う。

 

「なら、長老にも話そう」

 

レインが目を見開く。

 

長老。

 

島で最も信頼されている人物。

 

だが、ポーネグリフの存在だけは知らない。

 

「いいのか?」

 

「今だからだ」

 

父は即答した。

 

「ロジャーが来た」

 

「お前も十四歳になった」

 

「そして、俺もいつまでも生きられるわけじゃない」

 

その言葉に、レインは少し眉をひそめる。

 

父は笑った。

 

「何十年も先の話だ」

 

「そんな顔をするな」

 

レインも苦笑した。

 

「ならいい」

 

父は頷く。

 

そして、工房の扉へ向かった。

 

「明日の朝、長老を呼ぶ」

 

「そこで全て話そう」

 

レインも後に続く。

 

工房の外へ出る。

 

夜空には、無数の星が輝いていた。

 

その光を見上げながら、レインは思う。

 

明日、長老は驚くだろう。

 

そして、その先には一族が守り続けてきた秘密がある。

 

ポーネグリフ。

 

失われた歴史。

 

そして、ロジャーたちが求める答え。

 

長い間、地下に眠り続けてきた秘密が、少しずつ日の下へ現れようとしていた。

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