ONE PIECE 〜船大工レイン〜   作:ペンギンって可愛いですよね

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第二百十話「八百年越しの継承」

 

目の前に積み上げられた大量の資材。

 

ロジャー達にはただの金属の山にしか見えない。

 

だが、レインだけは違った。

 

その価値を理解してしまった。

 

理解できてしまった。

 

「あり得ない……」

 

思わず呟く。

 

手が震えていた。

 

目の前にあるチタン合金を持ち上げる。

 

軽い。

 

そして強い。

 

前世で航空機や宇宙開発に使用されていた金属。

 

それが目の前にある。

 

八百年前の世界に。

 

「レインさん?」

 

ルークが心配そうな顔をする。

 

だがレインは答えられなかった。

 

次はアルミ合金。

 

その隣には軽量複合素材。

 

さらに強化プラスチック。

 

高強度特殊鋼。

 

どれも前世で知っている。

 

どれも空飛ぶ船に必要な材料だった。

 

「おかしい……」

 

「こんなの絶対おかしい……」

 

レインは呆然と呟く。

 

ロジャーが首を傾げた。

 

「そんなに凄いのか?」

 

「凄いなんてもんじゃないです」

 

即答だった。

 

全員がレインを見る。

 

その表情は今まで見たことがないほど真剣だった。

 

「ロジャーさん」

 

「何がだ?」

 

「これ全部」

 

「世界を変えられる材料です」

 

地下に静寂が落ちる。

 

ロジャーも流石に冗談ではないと理解したらしい。

 

表情が引き締まった。

 

「そこまでか?」

 

「そこまでです」

 

レインは頷く。

 

「俺がずっと考えていた船があります」

 

「いつか作りたいと思っていた船があります」

 

「でも材料が足りなかった」

 

「この世界では無理だと思っていました」

 

そして、目の前の金属へ視線を向ける。

 

「でも」

 

「これなら作れます」

 

ルークが嫌な予感を覚えた顔をした。

 

レイリーは苦笑している。

 

おでんは興味津々だ。

 

「何を作るんだ?」

 

ロジャーが聞く。

 

レインは静かに答えた。

 

「空飛ぶ船です」

 

沈黙。

 

数秒後。

 

「は?」

 

ルークが真っ先に声を上げた。

 

「空飛ぶ船?」

 

「はい」

 

「空を飛ぶ?」

 

「飛びます」

 

「船が?」

 

「船です」

 

ルークが頭を抱えた。

 

「また始まった……」

 

父も苦笑している。

 

長老など途中から理解を放棄していた。

 

だがロジャーだけは違った。

 

目を輝かせている。

 

完全に興味を持った顔だった。

 

「ガハハハハハ!!」

 

豪快な笑い声が地下に響く。

 

「面白ぇ!!」

 

「やっぱりお前面白ぇな!!」

 

レイリーがため息を吐く。

 

「船で空を飛ぶか」

 

「発想がロジャーと同じ方向なのが困るな」

 

「失礼ですね」

 

「自覚が無いのか?」

 

レインは返答に困った。

 

その時だった。

 

「ん?」

 

おでんが声を上げる。

 

資材の奥を指差した。

 

「何かあるぞ」

 

全員が振り返る。

 

そこには一つの机があった。

 

八百年間誰にも触れられていない机。

 

その上に一枚だけ紙が置かれている。

 

レインの鼓動が速くなる。

 

ゆっくりと近付く。

 

紙は黄ばんでいた。

 

だが文字は読める。

 

間違いない。

 

ルーメンの字だ。

 

レインは静かに読み上げた。

 

『未来の船大工へ』

 

地下に沈黙が落ちる。

 

全員が耳を傾ける。

 

『もし君がここまで辿り着いたなら』

 

『私は失敗したのだろう』

 

『ジョイボーイとの約束は果たせなかった』

 

『自由も守れなかった』

 

『世界も変えられなかった』

 

レインは拳を握った。

 

八百年前、この男は全てを失った。

 

それでも未来を諦めなかった。

 

『だから頼みがある』

 

『今度は君が空へ辿り着いてくれ』

 

『海を越え』

 

『空を越え』

 

『世界を繋いでくれ』

 

『ジョイボーイが夢見た未来へ』

 

『私達が届かなかった未来へ』

 

『人々を連れて行ってくれ』

 

レインの胸が熱くなる。

 

前世で夢見たもの。

 

今世で目指していたもの。

 

そして八百年前の先祖が残した夢。

 

全てが繋がった。

 

『私の名はヴェルク・D・ルーメン』

 

『君の名は知らない』

 

『だが、君なら出来ると信じている』

 

そこで文章は終わっていた。

 

地下に静寂が落ちる。

 

誰も言葉を発さない。

 

レインは紙を見つめたまま動かなかった。

 

八百年。

 

八百年という時間を超えて。

 

一人の船大工の夢が届いた。

 

レインは静かに目を閉じる。

 

そして、ゆっくりと顔を上げた。

 

「ロジャーさん」

 

「何だ?」

 

ロジャーが笑う。

 

レインも笑った。

 

どこか吹っ切れたような笑顔だった。

 

「俺」

 

「空飛ぶ船を作ります」

 

沈黙…そして、

 

「ガハハハハハハハ!!」

 

ロジャーが大爆笑した。

 

「やっぱりお前面白ぇな!!」

 

「最高じゃねぇか!!」

 

おでんも笑う。

 

ギャバンも笑う。

 

レイリーは呆れながら肩をすくめた。

 

ルークは頭を抱えている。

 

「予想通りです……」

 

「絶対そう言うと思いました……」

 

だが、その表情はどこか嬉しそうだった。

 

レインはもう一度、ルーメンの手紙を見る。

 

八百年前の先祖。

 

世界を変えられなかった男。

 

それでも未来へ夢を託した男。

 

その夢は確かに受け取った。

 

今度は自分の番だ。

 

空へ。

 

誰も辿り着けなかった場所へ。

 

八百年越しの夢は今、レインへと受け継がれたのだった。

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