ONE PIECE 〜船大工レイン〜 作:ペンギンって可愛いですよね
レイン工房ができてからというもの。
毎日が忙しかった。
依頼。
設計。
製作。
営業。
研究。
気付けば一日が終わっている。
それは父親も同じだった。
ルークも同じだった。
だからこそ。
その日は珍しかった。
工房が休みだった。
朝、レインは珍しく遅く起きた。
と言っても日の出と同時くらいだが。
窓から差し込む光を見ながら伸びをする。
「平和だな」
久しぶりにそんなことを思った。
前世では休日も仕事をしていた。
気付けば会社のことばかり考えていた。
今も似たようなものだ。
だが今日は違う。
休みだ。
外へ出る。
すると父親がいた。
釣り竿を持っている。
「父さん?」
「おう」
「何してるの?」
「見れば分かるだろ」
レインは首を傾げる。
「武器?」
父親は無言になった。
数秒後…
「釣り竿だ!」
父親のツッコミが響く。
レインは少し笑った。
「冗談だよ」
「絶対本気だっただろ」
「失礼だな」
そこへルークもやって来た。
「おはようございます!」
元気だ。
昨日まですごく働いてくれていた…なのに元気だ。
父親は苦笑した。
「お前本当に疲れないな」
「疲れますよ?」
「そうは見えん」
三人は港を歩く。
工房の話は禁止。
今日は休日。
父親が勝手に決めた。
レインは少し不満だった。
「研究は?」
「駄目」
「設計は?」
「駄目」
「仕事は?」
「もっと駄目」
父親は即答した。
海辺へ到着する。
青い海が広がっている。
波は穏やかだった。
父親は釣り竿を準備する。
ルークも真似する。
レインも見よう見まねで準備した。
一時間後。
父親。
三匹…
ルーク。
二匹…
レイン。
ゼロ…
「…おかしい」
レインは呟いた。
父親が笑う。
「何がだ」
「理論上は釣れるはず」
「魚は理論で釣れねぇ」
父親は笑う。
さらに三十分後。
父親。
五匹。
ルーク。
四匹。
レイン。
ゼロ。
「おかしい」
二回目だった。
ルークも笑いを堪えている。
「レインさん」
「何?」
「魚逃げてません?」
レインは真顔だった。
「そんな馬鹿な」
さらに三十分後。
ようやく…ようやく一匹釣れた。
「釣れた!」
レインが立ち上がる。
六歳らしい笑顔だった。
父親とルークは固まる。
「え?」
ルークが呟く。
「え?」
父親も呟く。
レインは大喜びしていた。
「見て!」
「釣れた!」
「すごい!」
「魚だ!」
ルークは思った。
(子供だ……)
父親も思った。
(子供だな)
普段のレインは違う。
設計図を書く。
営業する。
工房を運営する。
発明する。
大人より大人だ。
だが今は違う。
完全に六歳だった。
昼頃…
三人は釣った魚を持って帰る。
途中で屋台へ寄った。
ルークが目を輝かせる。
「美味しそう……」
父親が笑った。
「食うか」
ルークが固まる。
「え?」
「今日は休日だ」
父親はお団子を三本買った。
レインも受け取る。
そして一口。
「美味しい」
その瞬間だった。
目が輝く。
もう一口。
さらにもう一口。
一瞬で食べ終わった。
「もう一本」
父親とルークが吹き出した。
「レインさん」
「何?」
「子供ですね」
レインは首を傾げた。
「僕は子供だよ?」
二人は黙った。
確かにそうだった。
六歳だった。
普段忘れているだけだった。
帰り道…
港には夕日が差していた。
工房の看板が赤く染まる。
レイン工房。
まだ小さな工房。
だが少しずつ仲間が増えている。
思い出も増えている。
工房の前で立ち止まる。
父親が言う。
「どうだった?」
レインは少し考えた。
そして答える。
「悪くなかった」
父親が笑う。
「素直じゃねぇな」
ルークも笑った。
今日初めて知った。
レインは天才だ。
変人だ。
発明家だ。
経営者だ。
だが、それだけじゃない。
ちゃんと六歳だった。
そしてルークは思う。
やっぱりこの親子はおかしい。
でも、そんな工房も悪くない。
夕日に照らされる看板を見上げながら、ルークは少しだけ誇らしそうに笑った。
レイン工房…
その休日は、思っていたよりずっと楽しい一日だった。