ONE PIECE 〜船大工レイン〜 作:ペンギンって可愛いですよね
「俺、空飛ぶ船を作ります」
レインの宣言が地下遺跡の最奥部に響いた。
数秒の沈黙。
そして、
「ガハハハハハハハ!!」
ロジャーの豪快な笑い声が地下全体を揺らす。
「やっぱりお前面白ぇな!!」
「最高じゃねぇか!!」
おでんも大笑いしていた。
ギャバンも肩を震わせている。
レイリーは呆れたようにため息を吐いた。
ルークだけが頭を抱えている。
「予想通りです……」
「絶対そう言うと思いました……」
だが、その表情はどこか嬉しそうだった。
レインはもう一度ルーメンの手紙を見る。
八百年前の先祖。
世界を変えられなかった男。
それでも未来へ夢を託した男。
その夢は確かに受け取った。
今度は自分の番だ。
空へ。
誰も辿り着けなかった場所へ。
八百年越しの夢は今、レインへと受け継がれたのだった。
しばらくして笑い声が落ち着く。
ロジャーは近くの木箱へ腰掛けた。
レイリーも壁へ寄り掛かる。
おでんは相変わらず目を輝かせながら資材を眺めていた。
ギャバンは腕を組み考え込んでいる。
そして誰からともなく話題は別の方向へ移っていった。
「しかし」
ロジャーが天井を見上げる。
「結局最後の島には何があるんだろうな」
その言葉に全員が反応した。
最後の島。
ジョイボーイが全てを残した場所。
ルーメンが語った希望の終着点。
誰も辿り着いたことのない場所。
『ジョイボーイの宝』
『私達の記録』
『私達の夢』
『私達の希望』
日誌にはそう書かれていた。
だが具体的な内容までは分からない。
ギャバンが腕を組む。
「宝だけじゃないだろうな」
「空白の百年の全てが残されている可能性もある」
レイリーも頷いた。
「ジョイボーイ本人の記録もあるだろう」
「ルーメンの日誌以上のものが残っていても不思議じゃない」
おでんは興奮を隠せなかった。
「見てみたいな」
「八百年前の連中が命懸けで残したものを」
ロジャーも笑う。
「だから行くんだろうが!」
地下に再び笑いが起きた。
重苦しかった空気が少しだけ和らぐ。
だがレインは静かに考えていた。
最後の島。
ジョイボーイの宝。
未来への希望。
前世の知識があっても中身は分からない。
むしろ今は前世より分からなくなっていた。
ルーメンも。
リリィも。
ジョイボーイも。
実在した人間として知ってしまったからだ。
「俺も気になりますね」
レインがぽつりと呟く。
ロジャーが振り返った。
「だろ?」
「気になるだろ?」
その顔を見た瞬間、レインは嫌な予感がした。
ロジャーが何か企んでいる時の顔だ。
案の定だった。
ロジャーはニヤリと笑う。
「レイン」
「何ですか?」
「お前も一緒に来るか?」
地下が静まり返った。
ルークが目を見開く。
おでんも驚いている。
レイリーだけは苦笑していた。
恐らく言い出すと思っていたのだろう。
「最後の島だ。ジョイボーイとルーメンの話を聞いた以上、お前にも知る権利があると思うんだがな」
ロジャーは珍しく真面目な顔だった。
冗談ではない。
本気で誘っている。
実際、理由も分かる。
ヴェルク家は八百年間ポーネグリフを守り続けてきた。
ルーメンの子孫。
ジョイボーイの意志を受け継いだ一族。
知る資格は十分にある。
だが、レインは少し考えた後、苦笑した。
「お断りします」
即答だった。
地下に沈黙が落ちる。
ロジャーが固まる。
「え?」
「お断りします」
「二回言わんでも聞こえとるわ!」
思わずツッコミが飛んだ。
ルークが吹き出す。
レイリーも肩を震わせていた。
おでんは腹を抱えて笑っている。
「ガハハハハ!」
「ロジャーが振られた!」
「笑うな!」
ロジャーが抗議する。
だがレインは真面目だった。
「俺は海賊になる気はありません」
「知っとる」
「船員になる気もありません」
「それも知っとる」
「だったら答えは一つです」
レインは肩をすくめた。
「行きません」
ロジャーは本気で頭を抱えた。
「何でだ!」
「最後の島だぞ!」
「世界中の誰も辿り着いてないんだぞ!」
「知ってます」
「気にならんのか!」
「気になります」
「じゃあ来い!」
「嫌です」
地下に笑いが起きる。
見事なまでの平行線だった。
レインは苦笑しながら続ける。
「俺は俺でやりたいことがありますから」
そう言いながら視線を向けたのは、大量の資材だった。
チタン合金。
アルミ合金。
軽量複合素材。
そして空飛ぶ船。
ルーメンから受け継いだ夢。
「それに」
レインは少し笑った。
「もし行くなら」
「自分で行きたいです」
ロジャーが眉を上げる。
「自分で?」
「はい」
「こっそり」
「こっそり?」
「誰にも見つからないように」
「自分の船で最後の島へ行きます」
数秒の沈黙。
そして、
「ガハハハハハハハ!!」
ロジャーが大爆笑した。
レイリーも笑っている。
ギャバンも肩を震わせていた。
おでんに至っては涙を流して笑っている。
「何がおかしいんですか?」
レインは不満そうだった。
するとレイリーが苦笑しながら言った。
「海賊にならないと言いながら」
「やることは海賊以上だからな」
「そうか?」
「そうです」
ルークが即答した。
「最後の島にこっそり行くって何ですか」
「最後の島ですよ?」
「誰も見つけてないんですよ?」
「だから面白い」
「やっぱりおかしいです」
ルークは断言した。
ロジャーは笑いながらレインの肩を叩く。
「まあ良い」
「お前らしいわ」
そして少しだけ真面目な顔になる。
「だが覚えとけ」
「何ですか?」
「俺が先に見つける」
レインも笑った。
「それはどうでしょうね」
「勝負か?」
「勝負ですね」
ロジャーとレイン。
二人は笑いながら握手を交わした。
最後の島。
ジョイボーイが残した希望。
世界の真実。
そしてワンピース。
その正体はまだ誰も知らない。
だが一つだけ確かなことがあった。
ロジャーはそこを目指す。
そしてレインもまた、いつかそこへ辿り着こうとしている。
ただし海賊としてではない。
一人の船大工として…そして、空飛ぶ船を作る男として、八百年前から受け継いだ夢を胸に、新たな航海が始まろうとしていた。