ONE PIECE 〜船大工レイン〜   作:ペンギンって可愛いですよね

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第二十一話 「足りないもの」

 

休日から数日が経っていた。

 

レイン工房は相変わらず忙しい。

 

朝から依頼人が来る。

 

昼には別の相談が来る。

 

夕方には新しい依頼が舞い込む。

 

気付けば工房の仕事は港のあちこちへ広がっていた。

 

「忙しいなぁ」

 

ルークが木材を運びながら呟く。

 

額には汗…

 

以前ならすぐに音を上げていただろう。

 

だが今は違う。

 

体力もついてきた。

 

仕事にも慣れてきた。

 

父親はそんなルークを見ながら少しだけ満足そうだった。

 

「ルーク」

 

「はい!」

 

「その木材はこっちだ」

 

「分かりました!」

 

元気な返事が返ってくる。

 

父親は笑う。

 

最初の頃は何度言っても場所を間違えていた。

 

今ではほとんど間違えない。

 

人は成長するものだ。

 

一方…

 

レインは机に向かっていた。

 

珍しく難しい顔をしている。

 

紙の上には数字。

 

設計図ではない。

 

帳簿だった。

 

「どうした?」

 

父親が聞く。

 

レインは答えない。

 

代わりに帳簿を差し出した。

 

父親が見る。

 

そして首を傾げた。

 

「問題あるか?」

 

「ある」

 

即答だった。

 

レインは机へ肘を付く。

 

「依頼は増えてる」

 

「売上も増えてる」

 

「工房も順調」

 

父親が頷く。

 

その通りだ。

 

何も問題はないように見える。

 

「じゃあ何が問題なんだ?」

 

父親が聞く。

 

レインは窓の外を見る。

 

港では木材が運ばれていた。

 

この島は木材が豊富だ。

 

船大工が活躍する島。

 

森も多い。

 

だから木材には困らない。

 

「木はある」

 

レインが言う。

 

「おう」

 

「でも木しかない」

 

父親が固まった。

 

ルークは話についていけなかった。

 

「木しかないと駄目なんですか?」

 

レインは頷く。

 

「駄目」

 

「なんでです?」

 

「例えば滑車」

 

ルークは考える。

 

確かに木を使う。

 

だが、よく見ると金属も使われている。

 

「金具」

 

レインが言う。

 

「ロープ」

 

「油」

 

「工具」

 

「全部必要」

 

ルークは少し驚いた。

 

言われてみればそうだ。

 

レインは続ける。

 

「木だけで工業は発展しない」

 

父親とルークが同時に固まった。

 

また知らない言葉が出た。

 

「こうぎょう?」

 

ルークが聞く。

 

「工業」

 

「何ですかそれ」

 

レインは少し考える。

 

説明が難しい。

 

「沢山作ることかな」

 

「沢山?」

 

「船も」

 

「滑車も」

 

「道具も」

 

「一人じゃなくてみんなで作る」

 

ルークは何となく理解した。

 

父親は半分くらい理解した。

 

レインは立ち上がる。

 

工房の棚を見る。

 

工具。

 

木材。

 

滑車。

 

ロープ。

 

足りない。

 

明らかに足りない。

 

前世なら当たり前だった。

 

鉄。

 

石炭。

 

石油。

 

ゴム。

 

ガラス。

 

電気。

 

だがこの世界にはない。

 

いや、あるのかもしれない。

 

だが少なくともこの島にはない。

 

「うーん……」

 

レインは腕を組む。

 

珍しく悩んでいた。

 

父親が笑う。

 

「珍しいな」

 

「何が?」

 

「お前が悩んでる」

 

レインは少し不満そうだった。

 

確かに珍しい。

 

今までは何とかなった。

 

滑車も作った。

 

工房も作った。

 

従業員も増えた。

 

だが今回は違う。

 

資源がない。

 

発明でどうにもならない問題だった。

 

その時だった。

 

ふと、あることを思い出す。

 

地下施設…

 

祖先達が残した場所…

 

古代技術。

 

設計図。

 

知識。

 

レインの目が少し鋭くなる。

 

(待てよ……)

 

なぜ先祖達はこの島を選んだ?

 

なぜここへ古代技術を残した?

 

なぜここを守り続けた?

 

ただ木が多いだけの島なら。

 

他にも候補はあったはずだ。

 

「おい」

 

父親が声を掛ける。

 

「ん?」

 

「何考えてる」

 

レインは笑った。

 

「ちょっと宝探し」

 

父親が頭を抱えた。

 

「嫌な予感しかしねぇ」

 

ルークも頷く。

 

「僕もです」

 

珍しく意見が一致した。

 

夕方…

 

仕事を終えたレインは一人で地下施設へ向かっていた。

 

静かな通路。

 

古い石壁。

 

先祖達が残した秘密の場所。

 

ここには飛行機の設計図があった。

 

古代技術の資料もあった。

 

ならば、まだ何か残っているかもしれない。

 

レインは資料棚へ近付く。

 

埃を払いながら一冊ずつ確認する。

 

設計図。

 

技術資料。

 

古い記録。

 

そして、棚の奥。

 

他とは違う古びた筒を見つけた。

 

「これは……?」

 

慎重に取り出す。

 

かなり古い。

 

紙も変色していた。

 

ゆっくり開くと、中に入っていたのは地図だった。

 

島の地図…見覚えがある。

 

間違いない。

 

自分達が住む島だ。

 

そして、森の奥深く…ある場所にだけ赤い印が描かれていた。

 

「なんだこれ?」

 

宝の場所か。

 

施設か。

 

それとも別の何かか。

 

レインはさらに地図を調べる。

 

すると裏面に薄く文字が残されていた。

 

『黒き泉を守れ』

 

レインが眉をひそめる。

 

さらに下、

 

『火を近付けるな』

 

そして最後に、

 

『我らが繁栄の源である』

 

静寂が地下施設を包む。

 

黒き泉。

 

火を近付けるな。

 

繁栄の源。

 

意味が分からない。

 

だが、一つだけ分かることがあった。

 

先祖達は何かを知っていた。

 

そして、それはこの島にある。

 

レインは地図を見つめる。

 

赤い印は森の奥深くを指している。

 

「父さんに相談するか」

 

地図を丸める。

 

明日行ってみよう。

 

足りないものを探すために。

 

そして、この島の秘密を知るために。

 

レインはまだ知らない。

 

この古びた地図が、

 

レイン工房…そして未来の世界そのものを変える発見へ繋がることを、まだ知らなかった。

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