ONE PIECE 〜船大工レイン〜 作:ペンギンって可愛いですよね
翌朝。
港にはオーロ・ジャクソン号が停泊していた。
空は快晴。
絶好の航海日和だった。
ロジャー海賊団の船員達は朝から慌ただしく動いている。
荷物の積み込みは終わっていた。
帆の確認も終わっている。
いつでも出航できる状態だった。
島民達も港へ集まっていた。
この十日余りですっかり仲良くなっていたため、別れを惜しむ者も多い。
「本当に帰っちまうのか?」
「寂しくなるな!」
「また来いよ!」
島民達が次々に声を掛ける。
ロジャーは豪快に笑った。
「ガハハハハ!」
「また来るかもしれんぞ!」
「いや来なくて良いですよ」
レインが即答した。
港に笑いが起こる。
「冷たいのう!」
「十日以上居座った海賊が言う台詞じゃないだろ」
「確かに」
レイリーまで頷いた。
ロジャーは納得していなかった。
そんな中、レインはロジャーの前へ歩いていく。
周囲も自然と静かになった。
昨日の診察。
そして血液採取。
レインは一晩ほとんど眠っていない。
ノートを何度も読み返していた。
それでも答えは出なかった。
ロジャーが笑う。
「何じゃ?」
レインは真っ直ぐロジャーを見る。
そして、
「必ず治療法を見つける」
静かな声だった。
だが、その言葉には強い意志が込められていた。
港が静まり返る。
ロジャーも笑みを消した。
レインは続ける。
「時間がどれだけ掛かるか分からない」
「見つからないかもしれない」
「でも探す」
「だから」
そこで一度言葉を切る。
「死ぬなよ」
ロジャーは数秒黙っていた。
そして、大きく笑った。
「ガハハハハハ!」
いつもの笑顔だった。
「難しい注文じゃな!」
「努力しろ」
「善処する!」
全く信用できなかった。
レイリーが苦笑する。
クロッカスも肩を竦める。
おでんなど腹を抱えて笑っていた。
だが、ロジャーは最後に真面目な顔になる。
「ありがとう」
その一言だけだった。
レインも頷く。
それ以上は言わなかった。
そして、いよいよ出航の時が来る。
「全員乗り込めー!」
レイリーの声が響く。
船員達が一斉に動き始めた。
シャンクスとバギーも乗船する。
だが、その前に、二人はレインの前へ来た。
「レイン!」
シャンクスが叫ぶ。
「何だ?」
「絶対また会おうな!」
レインは少し笑う。
「ああ」
するとバギーが腕を組む。
「その頃には俺の方が強くなってるからな!」
「無理だな」
「即答するな!」
最後まで変わらなかった。
シャンクスも笑う。
ルークも笑う。
そして二人は船へ戻っていった。
やがて、オーロ・ジャクソン号がゆっくり動き始める。
ロジャー海賊団が手を振る。
島民達も手を振り返す。
「元気でなー!」
「また来いよー!」
「今度は魚持ってこい!」
「酒もじゃー!」
賑やかな別れだった。
そして、船が小さくなっていく。
やがて水平線の向こうへ消えた。
港に静寂が訪れる。
島民達も少し寂しそうだった。
だが、それも長くは続かない。
「さて」
レインが口を開く。
ルークが振り返る。
「何ですか?」
「俺達も準備するぞ」
ルークは少し笑った。
そうだった、別れを惜しんでいる暇はない。
二人にも目的がある。
レインは空を見上げた。
ロジャー海賊団との再会。
空白の百年の真実。
ジョイボーイの日誌。
ロジャーの病。
この十日間で得たものはあまりにも大きかった。
だが、まだ終わりではない。
むしろ始まりだ。
「明日には島を出る」
ルークも頷く。
「そうですね」
「挨拶に行くか」
「はい」
まず向かったのはレインの家だった。
母は少し寂しそうだった。
「本当に行くの?」
「ああ」
「気を付けてね」
「分かってる」
父も静かに頷く。
もう反対はしない。
レインが決めたことだからだ。
その後、二人はルークの家へ向かう。
ルークの母は涙ぐんでいた。
父も複雑そうな顔をしている。
だが、二人とも誇らしそうだった。
息子が夢を追い掛けている。
それが分かるからだ。
夕方。
全ての挨拶を終えた二人は海を見ていた。
オレンジ色に染まる海。
その向こうには無数の島々がある。
まだ見ぬ世界。
まだ知らない仲間。
まだ解けない謎。
そして、最後の島。
レインは静かに呟いた。
「行くか」
ルークも笑う。
「はい」
こうして、二人の新たな旅立ちの日が近付いていた。