ONE PIECE 〜船大工レイン〜 作:ペンギンって可愛いですよね
出航当日。
朝日が海を照らしていた。
港には多くの島民達が集まっている。
レインとルークが旅立つ日だからだ。
二人の船―――
《雨神》。
改良を重ねてきたレインの自信作である。
島民達が別れを惜しむ中、ルークは船の後方で首を傾げていた。
「レインさん」
「ん?」
「何してるんですか?」
レインは工具を持ちながら何やら船尾をいじっている。
昨日の夜遅くまで作業していたらしい。
そして、船の後方には見慣れない装置が取り付けられていた。
羽根のようなもの。
歯車。
金属の筒。
そして見たことのない配線。
ルークは完全に理解を諦めた。
「何ですかそれ?」
レインは満足そうに頷く。
「前々から考えてた装置だ」
「前々から?」
「ああ」
「昨日作った」
ルークは固まった。
昨日?
昨日作った?
目の前の装置を見る。
どう見ても昨日作った完成度ではない。
細部まで綺麗に加工されている。
設計も緻密だ。
普通なら数ヶ月は掛かる。
だが、数秒後、
「まあレインさんですからね」
納得した。
最近はもう驚かない。
ロジャー海賊団。
空白の百年。
空飛ぶ船。
不治の病の研究。
今更である。
レインは装置を叩いた。
コンコン。
「これはな」
「はい」
「発電機だ」
「はつでんき?」
聞いたことのない言葉だった。
レインは説明を始める。
「船が走るだろ?」
「はい」
「すると後ろのプロペラが回る」
ルークが見る。
確かに海へ向かって羽根が伸びている。
「その回転を利用して電気を作る」
「……」
「……」
ルークは黙る。
何一つ理解できなかった。
レインも慣れている。
「簡単に言うと」
「はい」
「船が走れば走るほどエネルギーが貯まる」
「おお」
それなら分かる。
「その貯めたエネルギーを使うと?」
レインは笑った。
そして、船尾を指差す。
そこにはもう一つ巨大なプロペラが付いていた。
「風が無くても進める」
沈黙。
ルークが固まる。
数秒。
十数秒。
そして。
「……は?」
ようやく言葉が出た。
レインは続ける。
「風が無い」
「はい」
「帆船は進めない」
「はい」
「でも電気があればプロペラを回せる」
「はい」
「つまり進める」
沈黙。
ルークの頭が停止した。
もう一度装置を見る。
船を見る。
レインを見る。
装置を見る。
そして、
「え?」
レインは肩を竦めた。
「だから風が無くても進める」
「いや」
「うん」
「いやいやいや」
ルークは頭を抱えた。
船乗りの常識が崩壊している。
風が吹かなければ船は止まる。
それが常識だ。
誰も疑わない。
だが目の前の男は違った。
常識そのものを壊してくる。
「レインさん」
「何だ?」
「それ」
「うん」
「大発明じゃないですか?」
レインは少し考える。
そして。
「そうかもな」
軽い。
軽すぎる。
ルークは思わず叫んだ。
「そうかもじゃないですよ!」
港の島民達が振り返る。
レインは首を傾げる。
「そんな凄いか?」
「凄いです!」
即答だった。
島民達も集まってくる。
船大工達も見に来る。
全員が説明を聞く。
そして、全員同じ反応だった。
口をあんぐり開ける。
「え?」
「風が無くても進む?」
「そんな馬鹿な」
「いやでもレインだしな」
「レインだからな」
「レインだな」
最後は全員納得した。
理由になっていない。
だが誰も突っ込まない。
すると、父が苦笑する。
「お前な」
「何だ?」
「旅立つ当日に発明するな」
「思いついたから仕方ない」
「仕方なくない」
全員が頷いた。
だが、レインは真剣だった。
「グランドラインは何が起きるか分からない」
その言葉に空気が変わる。
「無風地帯に近い場所もあるかもしれない」
「嵐もある」
「潮流もある」
「だったら手札は多い方が良い」
ルークも頷いた。
それは確かに正しい。
ジョイボーイの日誌にもあった。
海を制する者が世界を制すると。
そして、船を制する者が海を制する。
レインは最後のボルトを締める。
カチッ。
装置が完成した。
「よし」
工具を置く。
港を見る。
家族。
友人。
島民達。
皆が見送るために集まってくれている。
レインはゆっくり笑った。
「それじゃ」
ルークも頷く。
「はい」
二人は船へ乗り込む。
ついに始まる。
東の海を飛び出し、世界へ向かう旅が...
そして船尾では、新たに取り付けられた発電装置が朝日を反射して静かに輝いていた。
まるで、未来そのものを乗せているかのように。