ONE PIECE 〜船大工レイン〜 作:ペンギンって可愛いですよね
無人島での試射を終えた後。
レインとルークは《雨神》へ戻っていた。
夕日が海を赤く染めている。
ルークは甲板で白鷹の手入れをしていた。
何度見ても美しい。
何度持っても手に馴染む。
人生初の銃。
それも世界に一丁だけの専用武器。
嬉しくない訳がなかった。
すると、船首にいたレインが振り返る。
「なあ」
「何ですか?」
ルークが顔を上げる。
レインは海図を閉じた。
そして、
「そろそろグランドライン入っても良いんじゃないか?」
ルークが固まる。
ついに来たか。
そんな顔だった。
レインは続ける。
「ローグタウンにも来た」
「うん」
「武器も完成した」
「うん」
「準備はほぼ終わっただろ」
それはそうだった。
雨神を作った本来の目的。
グランドラインへ入ること。
そのために旅をしてきたのだ。
だが、ルークは少し複雑そうだった。
「まあ……そうなんですけど」
レインは苦笑する。
何を考えているか大体分かった。
「まだ不安か?」
「少し」
正直だった。
グランドライン。
魔の海。
強者が集まる海。
海王類。
異常気象。
海賊。
能力者。
危険しか聞かない。
だが、レインは首を傾げた。
「むしろ逆だろ」
「逆?」
「ああ」
レインは当たり前のように言った。
「俺らが東の海にいたら強すぎる」
沈黙。
ルークが何とも言えない顔になる。
否定できなかった。
「海賊どころか」
レインは続ける。
「商船も近付かなくなるかもしれない」
「それは言い過ぎじゃ」
「そうか?」
「……」
ルークは黙った。
思い返してみる。
レイン。
十四歳。
見聞色。
武装色。
覇王色。
最上大業物《黎明》。
空飛ぶ船開発中。
海軍本部から招待経験あり。
ロジャー海賊団とも交流済み。
自分。
十七歳。
見聞色。
武装色。
武術。
そして怪物ライフル《白鷹》。
改めて考える。
東の海基準なら。
確かにおかしい。
かなりおかしい。
レインは笑った。
「一応この船」
「はい」
「海賊狩りと冒険がメインだけど」
「はい」
「レイン商会の営業も兼ねてるからな」
ルークが頷く。
それも忘れてはいけない。
レインは商人でもある。
島で終わるつもりはない。
いずれ世界中と取引するつもりだ。
だったら、東の海だけでは狭い。
「確かに」
ルークは認めた。
するとレインが笑う。
「だろ?」
「はい」
「じゃあ決まりだな」
ルークはため息を吐いた。
そして、ようやく覚悟を決める。
「分かりました」
「おう」
「グランドライン行きましょう」
レインが笑う。
ルークも笑った。
そして、少しだけ肩の力が抜ける。
「正直」
「うん」
「最近海賊が可哀想に見えてきたんですよ」
レインが吹き出した。
「何だそれ」
「だって」
ルークは真顔だった。
「レインさんに絡んだ海賊」
「うん」
「大体酷い目に遭ってるじゃないですか」
レインは否定できなかった。
「確かに」
「しかも最近は俺まで銃持っちゃいましたし」
「そうだな」
「何か申し訳なくなってきました」
レインは大笑いした。
「はははは!」
その頃。
東の海のどこか。
海賊達は知らない。
危険人物が二人。
ようやく東の海から出ていくことを、むしろ喜ぶべきだった。
そして、ルークも知らない。
自分達が東の海基準で異常なだけだと思っていた。
だが、それは大きな勘違いだった。
グランドラインに入っても、二人は十分異常だった。
むしろ、年齢を考えれば完全に異常だった。
ロジャー海賊団ですら驚き。
ガープですら呆れ。
コング元帥ですら謝罪する。
そんな十四歳が普通な訳がない。
だが、当の本人達は気付いていなかった。
レインは海図を広げる。
「さて」
「はい」
「まずは双子岬だな」
「いよいよですね」
二人は海を見る。
その先には、グランドライン。
世界最大の冒険の舞台が待っている。
そして、《雨神》は静かに進路を変えた。
目指すは、偉大なる航路。
二人の本当の冒険が、ついに始まろうとしていた。