ONE PIECE 〜船大工レイン〜 作:ペンギンって可愛いですよね
その日の夕方。
《雨神》はゆっくりと海を進んでいた。
目的地は双子岬。
いよいよ明日。
グランドラインへ突入する。
長かった東の海での旅も終わりだ。
甲板ではルークが真剣な顔で舵を握っていた。
横には海図。
コンパス。
そしてレインが書き込んだ航路図。
ルークは何度も位置を確認する。
「よし……」
海図を見る。
前方を見る。
また海図を見る。
少し前なら考えられなかった。
今では普通に航海士のような仕事もこなしている。
すると後方から良い匂いが漂ってきた。
肉。
魚。
野菜。
そしてスープ。
ルークが振り返る。
そこには、エプロン姿のレインがいた。
「何やってるんですか?」
「見れば分かるだろ」
レインが鍋をかき混ぜる。
「飯だ」
「それは分かります」
ルークは苦笑した。
「何でこんな豪華なんですか?」
レインは笑った。
「明日だぞ」
ルークが一瞬きょとんとする。
そして。
すぐに意味を理解した。
「ああ」
そうか。
明日。
いよいよグランドライン。
二人がずっと目指してきた場所。
だからこその祝いだった。
レインは次々と料理を並べていく。
巨大な海魚の塩焼き。
肉のロースト。
野菜炒め。
スープ。
パン。
さらにはデザートまである。
ルークが目を丸くした。
「多くないですか?」
「祝いだからな」
「二人ですよ?」
「祝いだからな」
全く話を聞いていなかった。
やがて、日が沈み始める。
海はオレンジ色に染まる。
レインは最後の皿を置いた。
「よし」
「完成ですか?」
「ああ」
二人はテーブルを囲む。
波の音だけが聞こえる。
東の海最後の夜。
思えば色々なことがあった。
レイン工房。
ガープ。
ロジャー海賊団。
ジョイボーイの日誌。
ルーメンの記録。
白鷹の完成。
どれも数ヶ月前なら想像も出来なかった。
レインはコップを持ち上げた。
ルークも持ち上げる。
酒ではない。
二人ともまだ未成年だ。
オレンジジュースだった。
レインらしい選択だった。
「じゃあ」
「はい」
二人は顔を見合わせる。
そして、笑った。
「グランドライン進出に」
「グランドライン進出に」
コツン。
コップがぶつかる。
「乾杯」
「乾杯!」
二人はジュースを飲む。
その瞬間、不思議と実感が湧いた。
本当に行くのだ。
偉大なる航路へ。
ルークは笑う。
「何か」
「ん?」
「まだ信じられませんね」
レインも頷く。
「分かる」
「ついこの前まで島にいたのに」
「ああ」
「気付いたらロジャー海賊団と飲んで」
「ああ」
「気付いたら海軍元帥から電話来て」
「ああ」
「気付いたら俺、銃持ってます」
レインが吹き出した。
「確かにな」
ルークも笑った。
人生は本当に分からない。
数年前。
ただの船大工の息子だった自分が、今は世界に一丁しかない銃を持っている。
そして明日、グランドラインへ入る。
レインは空を見上げた。
星が見え始めている。
「楽しみだな」
その言葉に。
ルークも頷いた。
「はい」
不安はある。
危険もある。
だが、それ以上に楽しみだった。
未知の海。
未知の島。
未知の出会い。
冒険とはそういうものだ。
レインは静かに笑う。
「ジョイボーイ」
ルークが顔を上げる。
「どうしたんですか?」
「いや」
レインは首を振った。
「ちょっと思い出しただけだ」
八百年前。
世界を変えようとした男。
そして、その意志を未来へ託した男達。
その先へ、自分達は進もうとしている。
レインはコップを置く。
そして、海の向こうを見る。
その先にはグランドライン。
さらにその先には新世界。
そして、最後の島。
まだ遠い。
だが、確実に近付いている。
風が吹いた。
帆が揺れる。
《雨神》は静かに進む。
明日、二人は偉大なる航路へ入る。
船大工兼医者兼剣士 レイン。
そして、技術者兼航海士兼狙撃手 ルーク。
二人の新たな冒険が。
いよいよ幕を開けようとしていた。