ONE PIECE 〜船大工レイン〜   作:ペンギンって可愛いですよね

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第二百三十話「旅立ちの前夜」

 

その日の夕方。

 

《雨神》はゆっくりと海を進んでいた。

 

目的地は双子岬。

 

いよいよ明日。

 

グランドラインへ突入する。

 

長かった東の海での旅も終わりだ。

 

甲板ではルークが真剣な顔で舵を握っていた。

 

横には海図。

 

コンパス。

 

そしてレインが書き込んだ航路図。

 

ルークは何度も位置を確認する。

 

「よし……」

 

海図を見る。

 

前方を見る。

 

また海図を見る。

 

少し前なら考えられなかった。

 

今では普通に航海士のような仕事もこなしている。

 

すると後方から良い匂いが漂ってきた。

 

肉。

 

魚。

 

野菜。

 

そしてスープ。

 

ルークが振り返る。

 

そこには、エプロン姿のレインがいた。

 

「何やってるんですか?」

 

「見れば分かるだろ」

 

レインが鍋をかき混ぜる。

 

「飯だ」

 

「それは分かります」

 

ルークは苦笑した。

 

「何でこんな豪華なんですか?」

 

レインは笑った。

 

「明日だぞ」

 

ルークが一瞬きょとんとする。

 

そして。

 

すぐに意味を理解した。

 

「ああ」

 

そうか。

 

明日。

 

いよいよグランドライン。

 

二人がずっと目指してきた場所。

 

だからこその祝いだった。

 

レインは次々と料理を並べていく。

 

巨大な海魚の塩焼き。

 

肉のロースト。

 

野菜炒め。

 

スープ。

 

パン。

 

さらにはデザートまである。

 

ルークが目を丸くした。

 

「多くないですか?」

 

「祝いだからな」

 

「二人ですよ?」

 

「祝いだからな」

 

全く話を聞いていなかった。

 

やがて、日が沈み始める。

 

海はオレンジ色に染まる。

 

レインは最後の皿を置いた。

 

「よし」

 

「完成ですか?」

 

「ああ」

 

二人はテーブルを囲む。

 

波の音だけが聞こえる。

 

東の海最後の夜。

 

思えば色々なことがあった。

 

レイン工房。

 

ガープ。

 

ロジャー海賊団。

 

ジョイボーイの日誌。

 

ルーメンの記録。

 

白鷹の完成。

 

どれも数ヶ月前なら想像も出来なかった。

 

レインはコップを持ち上げた。

 

ルークも持ち上げる。

 

酒ではない。

 

二人ともまだ未成年だ。

 

オレンジジュースだった。

 

レインらしい選択だった。

 

「じゃあ」

 

「はい」

 

二人は顔を見合わせる。

 

そして、笑った。

 

「グランドライン進出に」

 

「グランドライン進出に」

 

コツン。

 

コップがぶつかる。

 

「乾杯」

 

「乾杯!」

 

二人はジュースを飲む。

 

その瞬間、不思議と実感が湧いた。

 

本当に行くのだ。

 

偉大なる航路へ。

 

ルークは笑う。

 

「何か」

 

「ん?」

 

「まだ信じられませんね」

 

レインも頷く。

 

「分かる」

 

「ついこの前まで島にいたのに」

 

「ああ」

 

「気付いたらロジャー海賊団と飲んで」

 

「ああ」

 

「気付いたら海軍元帥から電話来て」

 

「ああ」

 

「気付いたら俺、銃持ってます」

 

レインが吹き出した。

 

「確かにな」

 

ルークも笑った。

 

人生は本当に分からない。

 

数年前。

 

ただの船大工の息子だった自分が、今は世界に一丁しかない銃を持っている。

 

そして明日、グランドラインへ入る。

 

レインは空を見上げた。

 

星が見え始めている。

 

「楽しみだな」

 

その言葉に。

 

ルークも頷いた。

 

「はい」

 

不安はある。

 

危険もある。

 

だが、それ以上に楽しみだった。

 

未知の海。

 

未知の島。

 

未知の出会い。

 

冒険とはそういうものだ。

 

レインは静かに笑う。

 

「ジョイボーイ」

 

ルークが顔を上げる。

 

「どうしたんですか?」

 

「いや」

 

レインは首を振った。

 

「ちょっと思い出しただけだ」

 

八百年前。

 

世界を変えようとした男。

 

そして、その意志を未来へ託した男達。

 

その先へ、自分達は進もうとしている。

 

レインはコップを置く。

 

そして、海の向こうを見る。

 

その先にはグランドライン。

 

さらにその先には新世界。

 

そして、最後の島。

 

まだ遠い。

 

だが、確実に近付いている。

 

風が吹いた。

 

帆が揺れる。

 

《雨神》は静かに進む。

 

明日、二人は偉大なる航路へ入る。

 

船大工兼医者兼剣士 レイン。

 

そして、技術者兼航海士兼狙撃手 ルーク。

 

二人の新たな冒険が。

 

いよいよ幕を開けようとしていた。

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