ONE PIECE 〜船大工レイン〜 作:ペンギンって可愛いですよね
翌朝。
まだ太陽が昇りきる前、レインとルークは既に起きていた。
今日は特別な日だ。
ついに、グランドラインへ入る。
二人はまず《雨神》の最終点検を行った。
船体。
帆。
ロープ。
発電装置。
推進用プロペラ。
全て異常なし。
ルークは頷く。
「問題ありません」
レインも確認を終える。
「よし」
二人は顔を見合わせた。
そして、同時に笑う。
「行くか」
「はい!」
《雨神》はゆっくりと進み始める。
やがて、水平線の先に巨大な壁が見えてきた。
赤い大陸。
レッドライン。
そしてその中央。
リバースマウンテン。
世界中の海が集まる場所。
グランドラインへの入口だった。
ルークは思わず息を呑む。
「でかい……」
想像以上だった。
まるで山というより壁。
自然の要塞。
海そのものが山を登る異常地帯。
普通なら初めて見る者は圧倒される。
だが、レインは違うところを見ていた。
船尾。
発電装置。
蓄電量。
推進機関。
その確認を始める。
ルークが首を傾げた。
「何してるんですか?」
「準備」
「何のです?」
レインがニヤリと笑う。
嫌な予感がした。
「登る準備」
「普通に登るんですよね?」
「多分」
「多分?」
ルークの不安が急上昇する。
その頃には、入口が目の前まで迫っていた。
轟音。
大量の海水が上へ流れている。
自然の力とは思えない光景だった。
普通の船乗りなら。
ここからが本番である。
風向き。
流れ。
舵取り。
全てが重要になる。
ルークも昨日まで必死に勉強していた。
海図を調べ。
潮流を調べ。
風を調べ。
最適なルートを考えていた。
その成果を発揮する時。
だったはずなのだが......レインが突然発電装置のレバーを引いた。
ガコン...
「よし」
「何がよしなんですか?」
「フルパワーだ」
「嫌な予感しかしないんですけど!?」
だが、もう遅かった。
《雨神》が入口へ突入する。
その瞬間、レインが叫んだ。
「全開!」
次の瞬間だった。
ゴォォォォォォォ!!
船体が震える。
推進用プロペラが猛烈な勢いで回転を始めた。
蓄えていた電力。
全て解放。
エンジン出力最大。
ルークが目を見開く。
「うわぁぁぁぁぁ!?」
《雨神》が加速した。
異常な速度だった。
普通の船ではあり得ない。
海流に乗る。
ではない。
海流を力技でねじ伏せながら登っている。
レインは笑っていた。
「速いな!」
「速すぎますよ!?」
ルークが叫ぶ。
景色が流れる。
山肌が流れる。
海流が流れる。
そして、あっという間だった。
本当に、あっという間だった。
五分後。
頂上到達。
沈黙。
ルークが固まる。
「……え?」
周囲を見る。
頂上だった。
確かに頂上だった。
まだ心の準備すら終わっていない。
緊張もしていた。
冒険の始まりだと思っていた。
なのに、終わった。
最大の難関が...終わった。
レインは時計を見る。
「五分か」
「五分かじゃないですよ!!」
ルークが絶叫した。
「リバースマウンテンですよ!?」
「ああ」
「世界有数の難所ですよ!?」
「ああ」
「俺、昨日まで必死に航路考えてたんですよ!?」
「ああ」
「全部無駄じゃないですか!」
レインは少し考える。
そして、
「そうだな...ごめん」
認めた。
ルークは頭を抱える。
本当に無駄だった。
風向き。
潮流。
航路。
全部。
エンジンが解決した。
力技だった。
あまりにも力技だった。
レインは満足そうに頷く。
「やっぱり作って良かったな」
「何をです?」
「発電機」
ルークは天を仰いだ。
誰か助けてほしかった。
常識がどんどん壊れていく。
その時だった。
レインが前を指差す。
「お」
ルークも顔を上げる。
そこには。
見たことのない景色が広がっていた。
巨大な海。
見知らぬ空。
見知らぬ風。
そして、その先に待つ無数の冒険。
グランドライン。
偉大なる航路。
ついに、二人は辿り着いた。
レインは静かに笑う。
「ようこそ」
「はい」
ルークも笑った。
「グランドラインですね」
《雨神》は頂上からゆっくりと下り始める。
新たな世界へ向かって。
船大工兼医者兼剣士 レイン。
狙撃手兼航海士 ルーク。
二人の本当の冒険が、今、始まった。