ONE PIECE 〜船大工レイン〜   作:ペンギンって可愛いですよね

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第二百三十六話「グランドラインの洗礼」

 

「始まったぁぁぁぁ!!」

 

ルークの叫び声が海へ響いた。

 

つい数分前まで快晴だった。

 

雲一つない青空。

 

穏やかな海。

 

心地良い風。

 

それが今ではどうだ。

 

吹雪だった。

 

猛烈な吹雪が《雨神》を包み込んでいる。

 

視界は真っ白。

 

空も海も分からない。

 

気温も一気に下がった。

 

ルークは厚手の上着を引っ張り出しながら震える。

 

「寒い寒い寒い寒い!」

 

「確かに寒いな」

 

レインも流石に上着を羽織っていた。

 

だが表情はどこか楽しそうだった。

 

「面白いな」

 

「どこがですか!?」

 

ルークは思わず叫ぶ。

 

出航してまだ一時間も経っていない。

 

それなのに季節そのものが変わったような天候だった。

 

東の海では絶対にあり得ない。

 

「さっきまで夏だったんですよ!?」

 

「ああ」

 

「何で雪降ってるんですか!?」

 

「グランドラインだからだろ」

 

「納得できません!」

 

ルークは本気で叫んでいた。

 

だがレインは周囲を観察している。

 

風向き。

 

気圧。

 

雲の動き。

 

海流。

 

全てが興味深かった。

 

「やっぱり普通の海じゃないな」

 

「普通だったら困ります!」

 

吹雪は三十分ほど続いた。

 

その間も《雨神》は進み続ける。

 

発電装置も問題ない。

 

船体も安定している。

 

流石にレインが設計しただけあった。

 

そして、突然だった。

 

雪が止む。

 

風が止む。

 

空が晴れる。

 

ルークが空を見上げた。

 

「終わった……?」

 

その瞬間。

 

太陽が顔を出した。

 

強烈な日差しだった。

 

数分後、ルークは再び叫ぶことになる。

 

「暑いぃぃぃぃぃ!!」

 

吹雪が終わったと思ったら今度は灼熱だった。

 

上着を脱ぐ。

 

汗が噴き出す。

 

甲板が熱い。

 

海面から立ち上る熱気が異常だった。

 

まるで砂漠の真上を航海しているような感覚。

 

「何なんですかこの海!?」

 

「忙しいな」

 

レインも額の汗を拭く。

 

流石に暑い。

 

気温は三十度を軽く超えているだろう。

 

先ほどまで雪が降っていたとは思えない。

 

ルークは半泣きだった。

 

「体がついていきません!」

 

「慣れろ」

 

「無茶言わないでください!」

 

レインは笑う。

 

だが内心では驚いていた。

 

前世の知識では知っていた。

 

グランドラインは異常だと。

 

だが実際に体験すると想像以上だった。

 

物理法則を無視している。

 

常識が通用しない。

 

なるほど、多くの船が沈むわけだ。

 

そんなことを考えていると、レインの頭にある考えが浮かぶ。

 

「天候観測装置が欲しいな」

 

ルークが嫌な顔をした。

 

「また始まりました」

 

「いや、必要だろ」

 

「それは分かります」

 

「作れると思う」

 

「それも分かります」

 

「作ろう」

 

「島に着いてからにしてください」

 

即座に却下された。

 

レインは少し不満そうな顔をする。

 

「今でも作れるぞ」

 

「やめてください」

 

「まだ何もしてない」

 

「その台詞もう信用してません」

 

完全に信用を失っていた。

 

その時だった。

 

ゴロゴロゴロ……

 

遠くで雷鳴が響く。

 

二人が同時に空を見る。

 

快晴だった。

 

数秒前までは。

 

だが今は違う。

 

黒雲が現れていた。

 

しかも凄まじい速度で近付いてくる。

 

ルークが青ざめる。

 

「嫌な予感がします」

 

「俺もだ」

 

珍しく意見が一致した。

 

そして...

 

ドォォォォォン!!

 

巨大な雷が海へ落ちた。

 

ルークが飛び上がる。

 

「うわぁぁぁぁ!?」

 

「近いな」

 

「近いじゃ済まないですよ!?」

 

雷雨が始まった。

 

豪雨。

 

暴風。

 

稲妻。

 

吹雪の次は雷雨である。

 

もはや意味が分からなかった。

 

《雨神》が大きく揺れる。

 

波も高い。

 

普通の船なら沈んでもおかしくない。

 

だが《雨神》は違った。

 

重心設計。

 

船体強度。

 

推進力。

 

全てが高水準だった。

 

レインは冷静に舵を握る。

 

「右三度」

 

「はい!」

 

ルークもすぐに動く。

 

こういう時の二人は強かった。

 

東の海で何度も海を渡った経験がある。

 

海賊との戦いよりも。

 

大型船建造よりも。

 

まず海を知っている。

 

だから慌てない。

 

ドォォォォォン!!

 

再び雷が落ちる。

 

だが二人は冷静だった。

 

十分ほど続いた雷雨は、まるで嘘のように消え去った。

 

静寂。

 

波も落ち着く。

 

青空が戻る。

 

ルークはその場に座り込んだ。

 

「終わった……」

 

「多分な」

 

「多分?」

 

「グランドラインだからな」

 

ルークは遠い目になった。

 

もう何も信じられない。

 

天気予報があるなら見てみたい。

 

絶対当たらないと思うが...

 

その時だった。

 

見張り台にいたレインが目を細める。

 

「ん?」

 

「どうしました?」

 

「島だ」

 

ルークが顔を上げる。

 

前方。

 

水平線の先。

 

確かに何かが見えた。

 

陸地だった。

 

グランドライン最初の島。

 

ログポースが示していた目的地。

 

レインは笑う。

 

「ようやくだな」

 

ルークも立ち上がる。

 

先ほどまでの疲労が少し吹き飛んだ。

 

未知の島。

 

未知の文化。

 

未知の人々。

 

本当の冒険が始まる。

 

《雨神》は速度を上げる。

 

グランドライン最初の島へ向かって。

 

そして二人はまだ知らない。

 

その島が、レインの船大工としての人生をさらに大きく変える出会いを用意していることを。

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