ONE PIECE 〜船大工レイン〜   作:ペンギンって可愛いですよね

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第二百三十七話「鉄の島」

 

翌朝。

 

《雨神》はゆっくりと島へ近づいていた。

 

昨日体験した吹雪。

 

猛暑。

 

雷雨。

 

ルークは未だに信じられなかった。

 

一日で四季を体験した気分だった。

 

東の海では一生経験しないことを、たった数時間で経験してしまったのである。

 

「まだ頭がおかしくなりそうです……」

 

ルークがぼやく。

 

船首ではレインが望遠鏡を覗いていた。

 

「面白い島だな」

 

「見えるんですか?」

 

「ああ」

 

レインは望遠鏡を渡した。

 

ルークも覗き込む。

 

そして目を丸くした。

 

「煙?」

 

島のあちこちから煙が上がっていた。

 

しかも一つや二つではない。

 

何十本もだ。

 

まるで工場地帯だった。

 

さらに耳を澄ませると。

 

カン!

 

カン!

 

カン!

 

金属を叩く音が聞こえてくる。

 

島全体から。

 

絶え間なく。

 

「鍛冶屋の島か?」

 

レインが呟く。

 

その瞬間、目が輝いた。

 

ルークは嫌な予感しかしなかった。

 

レインがこういう顔をする時は危険である。

 

大抵ろくなことにならない。

 

「まさか……」

 

「上陸するぞ」

 

「それはしますよ」

 

「楽しみだな」

 

「顔が怖いです」

 

本当に怖かった。

 

新しい玩具を見つけた子供みたいな顔をしている。

 

数十分後。

 

《雨神》は港へ到着した。

 

港には様々な船が停泊していた。

 

商船。

 

運搬船。

 

武装船。

 

そして海賊船まである。

 

グランドラインらしい光景だった。

 

二人は船を停泊させる。

 

荷物を確認する。

 

戸締まりを確認する。

 

そして島へ降り立った。

 

最初に感じたのは熱気だった。

 

暑い。

 

真夏というほどではない。

 

だが鍛冶場の熱が島中に広がっている。

 

次に聞こえたのは金属音。

 

カン!

 

カン!

 

カン!

 

あちこちで鉄を叩いている。

 

鍛冶屋。

 

鍛冶屋。

 

鍛冶屋。

 

どこを見ても鍛冶屋だった。

 

ルークは驚いていた。

 

「すごいですね」

 

「ああ」

 

レインも感心していた。

 

東の海では見たことがない規模だ。

 

職人の数も違う。

 

設備も違う。

 

技術も違う。

 

まるで鍛冶職人の楽園だった。

 

すると近くを通りかかった老人が笑う。

 

「初めてかい?」

 

「ええ」

 

「ここは鉄鋼島だ」

 

老人は胸を張った。

 

「グランドラインでも有数の鉱山島さ」

 

レインの耳が反応した。

 

鉱山...

 

その単語に、

 

「鉱山があるんですか?」

 

「あるとも」

 

老人は笑う。

 

「鉄鉱石ならいくらでも採れる」

 

「なるほど」

 

レインの頭が高速回転を始める。

 

鉄鉱石。

 

精錬技術。

 

加工技術。

 

船体強化。

 

新素材。

 

様々な可能性が浮かんでくる。

 

ルークはそれを見ていた。

 

そして理解した。

 

止まらない。

 

この人はもう止まらない。

 

案の定だった。

 

「鉱山見たいな」

 

「予想通りです」

 

「鍛冶場も見たい」

 

「知ってました」

 

「製鉄所も見たい」

 

「でしょうね」

 

レインは本気だった。

 

船大工。

 

鍛冶職人。

 

発明家。

 

そんな人間が鉄の島に来たのである。

 

興奮しない方がおかしい。

 

二人は街を歩き始めた。

 

すると一軒の鍛冶屋の前で足が止まる。

 

巨大な剣。

 

巨大な槍。

 

見たことのない工具。

 

様々な金属製品が並んでいた。

 

レインは一本のノミを手に取る。

 

重さを確かめる。

 

バランスを見る。

 

刃先を見る。

 

「良いな」

 

職人の顔になっていた。

 

店主が出てくる。

 

筋骨隆々の大男だった。

 

「兄ちゃん、分かるのか?」

 

「少し」

 

店主は鼻で笑う。

 

「少しで分かる代物じゃねぇぞ」

 

レインは黙ってノミを返した。

 

そして別の工具を手に取る。

 

重心。

 

鍛造跡。

 

焼き入れ。

 

研磨。

 

全てを見る。

 

数秒後。

 

「焼き入れ温度を少し下げた方が良い」

 

店主が固まった。

 

「……何?」

 

「硬度は上がってる」

 

「でも粘りが少し足りない」

 

「多分欠けやすい」

 

沈黙...

 

周囲の職人たちも聞いていた。

 

店主は工具を見つめる。

 

そして目を見開いた。

 

その通りだった。

 

最近悩んでいた問題だったのである。

 

店主はレインを見る。

 

今度は職人を見る目で。

 

「兄ちゃん」

 

「何だ?」

 

「何者だ?」

 

レインは少し考えた。

 

そしていつもの答えを返す。

 

「船大工だ」

 

店主が笑った。

 

「嘘つけ」

 

周囲からも笑いが起きる。

 

だがレインは本気だった。

 

本当に船大工なのである。

 

こうしてレインとルークのグランドライン最初の島での滞在が始まった。

 

そしてこの島で出会う職人たちとの交流が、《雨神》をさらに進化させるきっかけになることを、まだ二人は知らなかった。

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