ONE PIECE 〜船大工レイン〜 作:ペンギンって可愛いですよね
翌朝。
《雨神》はゆっくりと島へ近づいていた。
昨日体験した吹雪。
猛暑。
雷雨。
ルークは未だに信じられなかった。
一日で四季を体験した気分だった。
東の海では一生経験しないことを、たった数時間で経験してしまったのである。
「まだ頭がおかしくなりそうです……」
ルークがぼやく。
船首ではレインが望遠鏡を覗いていた。
「面白い島だな」
「見えるんですか?」
「ああ」
レインは望遠鏡を渡した。
ルークも覗き込む。
そして目を丸くした。
「煙?」
島のあちこちから煙が上がっていた。
しかも一つや二つではない。
何十本もだ。
まるで工場地帯だった。
さらに耳を澄ませると。
カン!
カン!
カン!
金属を叩く音が聞こえてくる。
島全体から。
絶え間なく。
「鍛冶屋の島か?」
レインが呟く。
その瞬間、目が輝いた。
ルークは嫌な予感しかしなかった。
レインがこういう顔をする時は危険である。
大抵ろくなことにならない。
「まさか……」
「上陸するぞ」
「それはしますよ」
「楽しみだな」
「顔が怖いです」
本当に怖かった。
新しい玩具を見つけた子供みたいな顔をしている。
数十分後。
《雨神》は港へ到着した。
港には様々な船が停泊していた。
商船。
運搬船。
武装船。
そして海賊船まである。
グランドラインらしい光景だった。
二人は船を停泊させる。
荷物を確認する。
戸締まりを確認する。
そして島へ降り立った。
最初に感じたのは熱気だった。
暑い。
真夏というほどではない。
だが鍛冶場の熱が島中に広がっている。
次に聞こえたのは金属音。
カン!
カン!
カン!
あちこちで鉄を叩いている。
鍛冶屋。
鍛冶屋。
鍛冶屋。
どこを見ても鍛冶屋だった。
ルークは驚いていた。
「すごいですね」
「ああ」
レインも感心していた。
東の海では見たことがない規模だ。
職人の数も違う。
設備も違う。
技術も違う。
まるで鍛冶職人の楽園だった。
すると近くを通りかかった老人が笑う。
「初めてかい?」
「ええ」
「ここは鉄鋼島だ」
老人は胸を張った。
「グランドラインでも有数の鉱山島さ」
レインの耳が反応した。
鉱山...
その単語に、
「鉱山があるんですか?」
「あるとも」
老人は笑う。
「鉄鉱石ならいくらでも採れる」
「なるほど」
レインの頭が高速回転を始める。
鉄鉱石。
精錬技術。
加工技術。
船体強化。
新素材。
様々な可能性が浮かんでくる。
ルークはそれを見ていた。
そして理解した。
止まらない。
この人はもう止まらない。
案の定だった。
「鉱山見たいな」
「予想通りです」
「鍛冶場も見たい」
「知ってました」
「製鉄所も見たい」
「でしょうね」
レインは本気だった。
船大工。
鍛冶職人。
発明家。
そんな人間が鉄の島に来たのである。
興奮しない方がおかしい。
二人は街を歩き始めた。
すると一軒の鍛冶屋の前で足が止まる。
巨大な剣。
巨大な槍。
見たことのない工具。
様々な金属製品が並んでいた。
レインは一本のノミを手に取る。
重さを確かめる。
バランスを見る。
刃先を見る。
「良いな」
職人の顔になっていた。
店主が出てくる。
筋骨隆々の大男だった。
「兄ちゃん、分かるのか?」
「少し」
店主は鼻で笑う。
「少しで分かる代物じゃねぇぞ」
レインは黙ってノミを返した。
そして別の工具を手に取る。
重心。
鍛造跡。
焼き入れ。
研磨。
全てを見る。
数秒後。
「焼き入れ温度を少し下げた方が良い」
店主が固まった。
「……何?」
「硬度は上がってる」
「でも粘りが少し足りない」
「多分欠けやすい」
沈黙...
周囲の職人たちも聞いていた。
店主は工具を見つめる。
そして目を見開いた。
その通りだった。
最近悩んでいた問題だったのである。
店主はレインを見る。
今度は職人を見る目で。
「兄ちゃん」
「何だ?」
「何者だ?」
レインは少し考えた。
そしていつもの答えを返す。
「船大工だ」
店主が笑った。
「嘘つけ」
周囲からも笑いが起きる。
だがレインは本気だった。
本当に船大工なのである。
こうしてレインとルークのグランドライン最初の島での滞在が始まった。
そしてこの島で出会う職人たちとの交流が、《雨神》をさらに進化させるきっかけになることを、まだ二人は知らなかった。