ONE PIECE 〜船大工レイン〜 作:ペンギンって可愛いですよね
「船大工だ」
レインがそう答えると、周囲から笑い声が上がった。
店主も豪快に笑う。
「ガハハハ! 面白い冗談だ!」
「いや、本当なんだが」
「その歳でか?」
「その歳だ」
店主は信じていなかった。
無理もない。
レインはまだ十四歳。
どう見ても一人前の職人には見えない。
ましてや工具を少し見ただけで問題点を見抜くなど普通ではない。
だがレインは気にしなかった。
理解されないことには慣れている。
東の海でも似たような反応ばかりだった。
すると店主が腕を組む。
「そこまで言うなら見てみるか?」
「何をだ?」
「工房だよ」
レインの目が輝いた。
「いいのか?」
「見学だけだぞ」
「十分だ」
ルークは横でため息をついた。
完全に子供だった。
新しい玩具を与えられた時の顔である。
店主に案内され、二人は工房の奥へ向かった。
中へ入った瞬間、熱気が押し寄せる。
巨大な炉。
真っ赤な鉄。
汗を流しながら働く職人たち。
東の海でも鍛冶場は見てきた。
だが規模が違う。
職人の数も設備も比較にならない。
レインは周囲を見渡す。
炉の構造。
送風装置。
水冷設備。
鉄の保管方法。
全てを観察していた。
その視線は完全に技術者のものだった。
「どうだ?」
店主が聞く。
「すごいな」
レインは素直に感心していた。
「特にあの炉」
「お?」
「熱効率が良い」
店主の眉が動く。
それはこの工房自慢の設備だった。
外見では分からない。
だがレインは一目で見抜いた。
「よく分かったな」
「空気の流れを見れば分かる」
「……本当に船大工か?」
「船大工だ」
店主は頭を掻いた。
何だか分からない少年だった。
するとその時、工房の奥から怒鳴り声が聞こえた。
「駄目だ!」
「また失敗だ!」
職人たちが騒いでいる。
店主が顔をしかめた。
「またか……」
そう言いながら奥へ向かう。
レインとルークも後を追った。
そこには大きな鉄板が置かれていた。
職人たちが困った顔をしている。
レインは近付いて見た。
すぐに異変に気付く。
鉄板が歪んでいた。
「失敗作か?」
店主が頷く。
「ああ」
「最近採れる新鉱石なんだがな」
「加工するとこうなる」
レインは鉄板に触れる。
普通の鉄とは違う感触だった。
表面が妙に滑らかだ。
色もわずかに青みがかっている。
「新鉱石?」
「ああ」
店主は鉄塊を見せた。
「鉱山の奥で見つかった」
「強度は高い」
「だが加工が難しい」
「熱を加えると歪む」
職人たちは何度も挑戦した。
だが成功しない。
せっかく強い金属なのに使い物にならなかった。
レインは興味を持つ。
完全に興味を持ってしまった。
ルークが嫌な予感を覚える。
「レインさん」
「ん?」
「顔が怖いです」
「そうか?」
「何か考えてますよね?」
「少し」
その時点で手遅れだった。
レインは既に鉄板を観察している。
歪み方。
熱の入り方。
冷却速度。
頭の中で計算が始まっていた。
店主が苦笑する。
「兄ちゃん、分かるのか?」
「多分」
「多分?」
「原因は熱だな」
周囲が静かになる。
レインは鉄板を指差した。
「熱伝導率が普通の鉄と違う」
「温度管理が追いついてない」
店主の表情が変わる。
職人たちも真剣になる。
レインは続けた。
「均一に熱が入ってない」
「だから歪む」
「恐らく温度を下げて、ゆっくり加工した方がいい」
沈黙。
職人たちが顔を見合わせる。
そして店主が言った。
「やってみろ」
ルークが固まった。
「え?」
店主はニヤリと笑う。
「そこまで言うなら見せてもらおうじゃねぇか」
職人たちも興味津々だった。
見た目はただの少年。
だが話している内容は本物だ。
レインは少し考えた。
そして笑う。
「いいぞ」
ルークが額を押さえた。
嫌な予感しかしない。
こうしてレインは、グランドライン最初の島でいきなり職人たちの挑戦を受けることになった。
そして、この勝負が後に島中を巻き込む大騒動へ発展することを、まだ誰も知らなかった。