ONE PIECE 〜船大工レイン〜   作:ペンギンって可愛いですよね

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第二百三十九話「何者なんだ?」

 

「やってみろ」

 

店主の言葉に、工房の空気が変わった。

 

職人たちの視線が一斉にレインへ集まる。

 

炉の熱気。

 

鉄を打つ音。

 

飛び散る火花。

 

その中で、十四歳の少年が静かに新鉱石を見つめていた。

 

ルークは少し離れた場所で頭を抱える。

 

「始まった……」

 

止めても無駄だ。

 

こうなったレインは止まらない。

 

新しい技術。

 

未知の素材。

 

見たことのない仕組み。

 

それらを前にしたレインは、もはや船大工というより研究者だった。

 

レインは新鉱石のインゴットを持ち上げる。

 

重さを確認する。

 

表面を指でなぞる。

 

そして近くにあったハンマーで軽く叩いた。

 

カン。

 

澄んだ音が響く。

 

もう一度叩く。

 

カン。

 

レインは目を細めた。

 

「なるほど」

 

「何が分かった?」

 

店主が聞く。

 

「思ったより不純物が少ない」

 

「ほう」

 

「だから強度が高いんだな」

 

周囲の職人たちがざわつく。

 

実際、その通りだった。

 

この鉱石は異常なほど純度が高い。

 

だからこそ加工が難しい。

 

普通の鉄と同じ感覚で扱うと失敗する。

 

レインは炉へ近付く。

 

そして職人たちが使っていた温度計代わりの金属棒を見る。

 

「少し温度が高いな」

 

「高い?」

 

店主が眉をひそめた。

 

「これまでの鉄と同じ温度でやってるだろ?」

 

「そうだ」

 

「それが原因だ」

 

周囲が静かになる。

 

レインは続けた。

 

「この鉱石は熱の入り方が違う」

 

「高温にしすぎると内部と外側で温度差ができる」

 

「だから冷えた時に歪む」

 

職人たちは顔を見合わせた。

 

理屈は理解できる。

 

だが確信は持てない。

 

なにせ相手は十四歳の少年だ。

 

すると一人の職人が口を開いた。

 

「本当に分かってんのか?」

 

「多分な」

 

「多分かよ」

 

笑いが起きる。

 

だがレインは気にしない。

 

むしろ自信満々だった。

 

「じゃあ試すか」

 

そう言うと袖をまくる。

 

ルークが呟く。

 

「頑張ってください」

 

「おう」

 

そして作業が始まった。

 

炉の火力を下げる。

 

送風量を調整する。

 

職人たちが不思議そうな顔をする。

 

普段とは全く違う手順だった。

 

「そんな低温で大丈夫なのか?」

 

「多分」

 

「また多分か」

 

「失敗したら笑ってくれ」

 

レインはそう言って笑った。

 

職人たちもつられて笑う。

 

不思議と嫌味がなかった。

 

そして鉱石が赤く染まる。

 

レインはじっと色を見る。

 

温度計はない。

 

だが前世からの知識と経験があった。

 

鍛冶屋の親方の下で学んだ日々もある。

 

「今だな」

 

鉄床へ置く。

 

そしてハンマーを振り下ろした。

 

カン!

 

乾いた音が響く。

 

職人たちが見守る。

 

カン!

 

カン!

 

カン!

 

一定のリズム。

 

無駄のない動き。

 

店主の表情が少し変わった。

 

素人ではない。

 

それだけは分かった。

 

レインは途中で作業を止める。

 

「冷やす」

 

「もうか?」

 

「十分だ」

 

そして通常より長い時間をかけて冷却した。

 

やがて。

 

完成した鉄板を持ち上げる。

 

職人たちが固唾を飲んで見守る。

 

歪みは――

 

なかった。

 

沈黙。

 

誰も喋らない。

 

店主が鉄板を受け取る。

 

確認する。

 

裏返す。

 

横から見る。

 

何度も見る。

 

そして。

 

「……成功してる」

 

その一言で工房が騒然となった。

 

「おい!」

 

「本当か!?」

 

「歪んでねぇ!」

 

「嘘だろ!?」

 

職人たちが集まる。

 

誰もが驚いていた。

 

何ヶ月も解決できなかった問題だった。

 

それを十四歳の少年が解決したのである。

 

店主がレインを見る。

 

今までとは違う目だった。

 

職人が職人を見る目。

 

「お前、本当に何者だ?」

 

周囲も頷く。

 

誰もが知りたかった。

 

船大工と言われても信じられない。

 

医者と言われても信じられない。

 

技術者と言われても信じられない。

 

レインは少し考えた。

 

そして答える。

 

「船大工だな」

 

「それは聞いた」

 

「医者でもある」

 

「十四歳で?」

 

「ああ」

 

「他には?」

 

レインは少し考える。

 

隠すほどのことでもない。

 

「レイン商会の社長だ」

 

その瞬間だった。

 

近くで話を聞いていた商人が固まる。

 

「……は?」

 

全員がその商人を見る。

 

商人はレインを指差した。

 

「今、何て言った?」

 

「レイン商会だ」

 

「東の海のレイン商会か!?」

 

「そうだな」

 

商人が頭を抱えた。

 

「嘘だろ……」

 

店主が聞き返す。

 

「有名なのか?」

 

「有名も何もねぇ!」

 

商人が叫ぶ。

 

「変形滑車の特許を取った会社だぞ!」

 

工房が静まり返る。

 

職人たちもその名前は知っていた。

 

物流業界では有名だったからだ。

 

店主がレインを見る。

 

レインを見る。

 

もう一度見る。

 

そして聞いた。

 

「何歳だ?」

 

「十四」

 

「嘘つけ」

 

即答だった。

 

工房中が笑いに包まれる。

 

レインも笑った。

 

だがルークだけは真顔だった。

 

「本当です」

 

その一言で全員が静かになった。

 

店主が天を仰ぐ。

 

「何なんだお前……」

 

レインは少し考える。

 

そして肩をすくめた。

 

「俺もよく分からない」

 

その答えに再び笑いが起きた。

 

こうしてレインは、グランドライン最初の島で職人たちに認められることになった。

 

そしてこの出会いが、《雨神》をさらに進化させる大きなきっかけとなるのだった。

 

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