ONE PIECE 〜船大工レイン〜   作:ペンギンって可愛いですよね

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第二十三話 「繁栄の源」

 

森の中は静まり返っていた。

 

風が吹く。

 

木々が揺れる。

 

鳥の鳴き声が遠くから聞こえる。

 

それ以外の音はない。

 

レインは指先に付着した黒い液体を見つめていた。

 

父親とルークはその様子を不思議そうに見ている。

 

「レイン」

 

父親が声を掛ける。

 

「何か分かったのか?」

 

レインは答えない。

 

代わりに。

 

黒い液体をもう一度確認する。

 

色。

 

臭い。

 

粘度。

 

どれも記憶と一致していた。

 

前世。

 

社会人だった頃。

 

車。

 

工場。

 

発電所。

 

飛行機。

 

文明を支えていたもの。

 

何度も見た。

 

何度も聞いた。

 

何度も学んだ。

 

だからこそ分かる。

 

間違いない。

 

「石油だ」

 

静寂が訪れた。

 

父親が瞬きをする。

 

「せきゆ?」

 

ルークも首を傾げる。

 

「何ですかそれ?」

 

当然だった。

 

この世界の人間にとって馴染みのない言葉だ。

 

レインは立ち上がる。

 

興奮していた。

 

久しぶりだった。

 

本当に久しぶりだった。

 

飛行機の設計図を見つけた時以来かもしれない。

 

「凄いぞ……」

 

思わず呟く。

 

「凄いって何がだ」

 

父親が聞く。

 

レインは周囲を見回した。

 

草が少ない。

 

地面が黒い。

 

独特の臭い。

 

そして、黒い液体。

 

全部繋がった。

 

「先祖達はこれを守ってたんだ」

 

「だから何なんだ?」

 

父親には分からない。

 

ルークにも分からない。

 

だが、レインだけは分かっていた。

 

もしこれが本当に石油なら、工房の未来が変わる。

 

いや、島の未来が変わる。

 

世界の未来すら変わる。

 

「父さん」

 

「なんだ」

 

「この黒い液体」

 

「おう」

 

「燃える」

 

父親が固まった。

 

「は?」

 

「燃える」

 

「木みたいにか?」

 

「木より凄い」

 

ルークが顔を引きつらせる。

 

「それ危なくないですか?」

 

「危ない」

 

即答だった。

 

だからこそ、

 

『火を近付けるな』

 

だったのだ。

 

先祖達は知っていた。

 

この液体が何なのか。

 

どれだけ危険なのか。

 

そして、どれだけ価値があるのか。

 

レインは地図を取り出す。

 

『我らが繁栄の源である』

 

その文章を見る。

 

今なら分かる。

 

繁栄の源…まさにその通りだった。

 

前世の世界では、石油は文明の血液だった。

 

車も、

 

飛行機も、

 

船も、

 

工場も、

 

全部石油が支えていた。

 

「まさか……」

 

レインは周囲を見る。

 

もし予想通りなら、この量は尋常ではない。

 

地面の状態からして、かなり大きな油田が眠っている可能性が高い。

 

父親が聞く。

 

「そんなに凄いのか?」

 

レインは頷いた。

 

「凄い」

 

「どのくらいだ」

 

少し考える。

 

そして、

 

「島一つ買えるくらい」

 

父親とルークが固まった。

 

「は?」

 

「え?」

 

レインは真面目だった。

 

むしろ控えめに言った。

 

本当に大規模油田なら。

 

島一つどころではない。

 

「嘘だろ……」

 

父親が呟く。

 

「本当」

 

「お前いつもそう言うけどな」

 

「今回は本当」

 

「毎回本当って言うだろ」

 

ルークが吹き出した。

 

緊張感が少し消える。

 

だが、レインは笑っていなかった。

 

真剣だった。

 

本気だった。

 

それを見て。

 

父親の表情も変わる。

 

「レイン」

 

「ん?」

 

「本当にそんなに凄いんだな」

 

レインは頷いた。

 

「うん」

 

そして、静かに言う。

 

「見つけた」

 

ずっと探していたもの。

 

工房に足りなかったもの。

 

未来を変える資源。

 

ようやく見つけた。

 

その瞬間だった。

 

風が吹く。

 

森が揺れる。

 

レインは先祖達の残した言葉を思い出していた。

 

『黒き泉を守れ』

 

『火を近付けるな』

 

『我らが繁栄の源である』

 

先祖達は正しかった。

 

だから守った。

 

だから隠した。

 

だから地図を残した。

 

全ては未来のため。

 

そして今、その未来へ辿り着いた。

 

レインは笑う。

 

久しぶりに。

 

心の底から。

 

「面白くなってきた」

 

その言葉に、父親は頭を抱えた。

 

ルークも同じだった。

 

「親方」

 

「なんだ」

 

「また始まりますね」

 

「あぁ」

 

二人は同時にため息を吐く。

 

そして思う…レインが何かを見つけた時、ろくなことにならない。

 

だが、不思議と嫌ではなかった。

 

森の奥深く、誰も知らなかった場所で、レイン工房の未来は、大きく動き始めていた。

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