ONE PIECE 〜船大工レイン〜 作:ペンギンって可愛いですよね
宴から一夜明けた。
鉄鋼島の朝は相変わらず賑やかだった。
島中から金属を叩く音が聞こえてくる。
カン。
カン。
カン。
もはや目覚まし時計代わりだった。
宿の窓から外を眺めながら、レインは蒼星を手に取る。
朝日を受けた刀身が青く輝く。
良い出来だった。
職人たちの技術。
青き鋼。
そして島の想い。
全てが詰まっている。
「本当に良い物ですね」
隣でルークも蒼月を眺めていた。
腰に差しているだけで少し嬉しい。
そんな気持ちだった。
レインは頷く。
「ああ」
そして少し考える。
昨日から引っかかっていることがあった。
ルークが気付く。
「どうしました?」
「いや」
「何か考えてますよね」
「まあな」
ルークはため息を吐いた。
嫌な予感しかしない。
そして大体当たる。
「今度は何ですか?」
「俺、もらってばっかりだなと思って」
ルークは少し驚いた。
確かにそうだった。
青き鋼。
蒼星。
蒼月。
職人たちの協力。
この島では世話になりっぱなしだった。
「だから何か返したい」
レインがそう言う。
ルークは少し笑った。
それもレインらしかった。
得をしたら返す。
助けてもらったら助け返す。
昔からそういう人間だった。
「何を作るんですか?」
「まだ考え中だ」
そう言いながら工房へ向かう。
すると店主が大声で笑った。
「おう! 天才社長!」
「その呼び方やめろ」
「ガハハハ!」
職人たちも笑う。
すっかり馴染んでいた。
レインは工房を見回した。
炉。
鉄床。
工具。
職人たち。
そして気付く。
「あれ?」
店主が首を傾げる。
「何だ?」
「これ不便じゃないか?」
レインが指差した先。
そこには巨大なハンマーがあった。
職人二人がかりで持ち上げるような代物だった。
店主が頷く。
「重いからな」
「疲れるだろ」
「まあな」
職人たちも苦笑する。
それが当たり前だった。
昔からそうしてきた。
レインは腕を組む。
前世知識が動き始める。
滑車。
歯車。
重力。
反復運動。
頭の中で設計図が組み上がっていく。
ルークが嫌な予感を覚えた。
「あの顔です」
「どの顔だ」
「発明する時の顔です」
レインは否定しなかった。
もう完成図が見えていた。
「少し場所借りるぞ」
「何作るんだ?」
店主が聞く。
レインは笑った。
「恩返しだ」
その日の午後、工房の片隅で謎の装置が作られ始めた。
木材。
ロープ。
滑車。
歯車。
職人たちも興味津々で見ている。
「何だこれ?」
「分からん」
「武器か?」
「違うな」
そして数時間後。
完成した。
巨大な木製の装置。
上部には重り。
中央には巨大ハンマー。
下には足踏み板。
店主が首を傾げる。
「何だこれ?」
レインは笑う。
「試してみて」
職人が恐る恐る足を乗せる。
踏む。
すると。
ガコン。
重りが上がる。
さらに踏む。
ガコン。
ガコン。
そして一定位置まで上がった瞬間。
ドォン!!
巨大ハンマーが落下した。
鉄床が揺れる。
職人たちが目を見開いた。
「は?」
もう一度踏む。
ドォン!!
また落ちる。
「おい」
ドォン!!
「おいおい」
ドォン!!
店主が固まる。
理解した。
これが何なのか。
「鍛造ハンマーか……」
レインが頷く。
「足で動く」
「一人で扱える」
「疲労も少ない」
工房が静まり返る。
職人たちは何度も装置を見る。
また見る。
そして再び見る。
店主が呟く。
「便利すぎるだろ……」
レインは笑う。
「そうか?」
「そうかじゃねぇ!」
工房中から声が上がった。
職人たちが群がる。
試す。
また試す。
そして歓声が上がる。
「すげぇ!」
「これなら仕事が倍になる!」
「いや三倍だ!」
「何だこの発想!」
レインは少し安心した。
喜んでもらえたらしい。
すると店主が真顔になる。
「特許取れ」
「取らん」
即答だった。
全員が固まる。
「は?」
「何でだ?」
レインは肩をすくめる。
「皆で作った青き鋼の礼だ」
「だからこれは島の物でいい」
静寂。
職人たちが顔を見合わせる。
店主も言葉を失う。
普通なら独占する。
利益を求める。
それが当然だった。
だがレインは違う。
「俺一人じゃ青き鋼の短剣は完成しなかった」
「だからお互い様だ」
店主はしばらく黙っていた。
やがて豪快に笑う。
「本当に変な奴だな!」
工房中が笑いに包まれる。
レインも笑った。
ルークも笑った。
そして誰も気付いていなかった。
その時だった。
突然、島の外れの方から鐘の音が鳴り響く。
ガン!
ガン!
ガン!
工房の空気が変わる。
職人たちの顔色も変わる。
店主が立ち上がった。
「まずい」
「どうした?」
レインが聞く。
店主は険しい顔で答えた。
「鉱山だ」
「事故が起きた」
その瞬間、レインとルークは顔を見合わせた。
次の瞬間には走り出していた。