ONE PIECE 〜船大工レイン〜   作:ペンギンって可愛いですよね

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第二百四十三話「職人への贈り物」

 

宴から一夜明けた。

 

鉄鋼島の朝は相変わらず賑やかだった。

 

島中から金属を叩く音が聞こえてくる。

 

カン。

 

カン。

 

カン。

 

もはや目覚まし時計代わりだった。

 

宿の窓から外を眺めながら、レインは蒼星を手に取る。

 

朝日を受けた刀身が青く輝く。

 

良い出来だった。

 

職人たちの技術。

 

青き鋼。

 

そして島の想い。

 

全てが詰まっている。

 

「本当に良い物ですね」

 

隣でルークも蒼月を眺めていた。

 

腰に差しているだけで少し嬉しい。

 

そんな気持ちだった。

 

レインは頷く。

 

「ああ」

 

そして少し考える。

 

昨日から引っかかっていることがあった。

 

ルークが気付く。

 

「どうしました?」

 

「いや」

 

「何か考えてますよね」

 

「まあな」

 

ルークはため息を吐いた。

 

嫌な予感しかしない。

 

そして大体当たる。

 

「今度は何ですか?」

 

「俺、もらってばっかりだなと思って」

 

ルークは少し驚いた。

 

確かにそうだった。

 

青き鋼。

 

蒼星。

 

蒼月。

 

職人たちの協力。

 

この島では世話になりっぱなしだった。

 

「だから何か返したい」

 

レインがそう言う。

 

ルークは少し笑った。

 

それもレインらしかった。

 

得をしたら返す。

 

助けてもらったら助け返す。

 

昔からそういう人間だった。

 

「何を作るんですか?」

 

「まだ考え中だ」

 

そう言いながら工房へ向かう。

 

すると店主が大声で笑った。

 

「おう! 天才社長!」

 

「その呼び方やめろ」

 

「ガハハハ!」

 

職人たちも笑う。

 

すっかり馴染んでいた。

 

レインは工房を見回した。

 

炉。

 

鉄床。

 

工具。

 

職人たち。

 

そして気付く。

 

「あれ?」

 

店主が首を傾げる。

 

「何だ?」

 

「これ不便じゃないか?」

 

レインが指差した先。

 

そこには巨大なハンマーがあった。

 

職人二人がかりで持ち上げるような代物だった。

 

店主が頷く。

 

「重いからな」

 

「疲れるだろ」

 

「まあな」

 

職人たちも苦笑する。

 

それが当たり前だった。

 

昔からそうしてきた。

 

レインは腕を組む。

 

前世知識が動き始める。

 

滑車。

 

歯車。

 

重力。

 

反復運動。

 

頭の中で設計図が組み上がっていく。

 

ルークが嫌な予感を覚えた。

 

「あの顔です」

 

「どの顔だ」

 

「発明する時の顔です」

 

レインは否定しなかった。

 

もう完成図が見えていた。

 

「少し場所借りるぞ」

 

「何作るんだ?」

 

店主が聞く。

 

レインは笑った。

 

「恩返しだ」

 

その日の午後、工房の片隅で謎の装置が作られ始めた。

 

木材。

 

ロープ。

 

滑車。

 

歯車。

 

職人たちも興味津々で見ている。

 

「何だこれ?」

 

「分からん」

 

「武器か?」

 

「違うな」

 

そして数時間後。

 

完成した。

 

巨大な木製の装置。

 

上部には重り。

 

中央には巨大ハンマー。

 

下には足踏み板。

 

店主が首を傾げる。

 

「何だこれ?」

 

レインは笑う。

 

「試してみて」

 

職人が恐る恐る足を乗せる。

 

踏む。

 

すると。

 

ガコン。

 

重りが上がる。

 

さらに踏む。

 

ガコン。

 

ガコン。

 

そして一定位置まで上がった瞬間。

 

ドォン!!

 

巨大ハンマーが落下した。

 

鉄床が揺れる。

 

職人たちが目を見開いた。

 

「は?」

 

もう一度踏む。

 

ドォン!!

 

また落ちる。

 

「おい」

 

ドォン!!

 

「おいおい」

 

ドォン!!

 

店主が固まる。

 

理解した。

 

これが何なのか。

 

「鍛造ハンマーか……」

 

レインが頷く。

 

「足で動く」

 

「一人で扱える」

 

「疲労も少ない」

 

工房が静まり返る。

 

職人たちは何度も装置を見る。

 

また見る。

 

そして再び見る。

 

店主が呟く。

 

「便利すぎるだろ……」

 

レインは笑う。

 

「そうか?」

 

「そうかじゃねぇ!」

 

工房中から声が上がった。

 

職人たちが群がる。

 

試す。

 

また試す。

 

そして歓声が上がる。

 

「すげぇ!」

 

「これなら仕事が倍になる!」

 

「いや三倍だ!」

 

「何だこの発想!」

 

レインは少し安心した。

 

喜んでもらえたらしい。

 

すると店主が真顔になる。

 

「特許取れ」

 

「取らん」

 

即答だった。

 

全員が固まる。

 

「は?」

 

「何でだ?」

 

レインは肩をすくめる。

 

「皆で作った青き鋼の礼だ」

 

「だからこれは島の物でいい」

 

静寂。

 

職人たちが顔を見合わせる。

 

店主も言葉を失う。

 

普通なら独占する。

 

利益を求める。

 

それが当然だった。

 

だがレインは違う。

 

「俺一人じゃ青き鋼の短剣は完成しなかった」

 

「だからお互い様だ」

 

店主はしばらく黙っていた。

 

やがて豪快に笑う。

 

「本当に変な奴だな!」

 

工房中が笑いに包まれる。

 

レインも笑った。

 

ルークも笑った。

 

そして誰も気付いていなかった。

 

その時だった。

 

突然、島の外れの方から鐘の音が鳴り響く。

 

ガン!

 

ガン!

 

ガン!

 

工房の空気が変わる。

 

職人たちの顔色も変わる。

 

店主が立ち上がった。

 

「まずい」

 

「どうした?」

 

レインが聞く。

 

店主は険しい顔で答えた。

 

「鉱山だ」

 

「事故が起きた」

 

その瞬間、レインとルークは顔を見合わせた。

 

次の瞬間には走り出していた。

 

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