ONE PIECE 〜船大工レイン〜   作:ペンギンって可愛いですよね

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第二百四十四話「鉱山事故」

 

ガン!

 

ガン!

 

ガン!

 

警鐘が島中へ響き渡る。

 

工房にいた職人たちの顔色が一瞬で変わった。

 

先程まで笑っていた者たちも真剣な表情になる。

 

店主は立ち上がった。

 

「まずい」

 

「鉱山ですか?」

 

ルークが聞く。

 

「ああ」

 

店主が険しい顔で頷いた。

 

「この音は大規模事故だ、大規模な事故の時しかこの鐘は鳴らさない」

 

その言葉を聞いた瞬間、レインは走り出していた。

 

「行くぞ」

 

「はい!」

 

ルークも後を追う。

 

職人たちも次々と工房を飛び出していく。

 

先程まで宴のような空気だった島が、一瞬で緊張に包まれた。

 

鉱山へ向かう道中、多くの島民たちが集まっていた。

 

皆不安そうな顔をしている。

 

鉱山は島の生命線だ。

 

誰かの父親。

 

誰かの兄。

 

誰かの息子。

 

多くの人が働いている。

 

事故となれば他人事ではない。

 

十分ほど走ると鉱山入口が見えてきた。

 

だが様子がおかしい。

 

土煙が上がっている。

 

坑道の一部が崩れていた。

 

作業員たちが慌ただしく動き回っている。

 

怒号も飛び交っていた。

 

「担架を持ってこい!」

 

「こっちはまだ生きてる!」

 

「早く医者を!」

 

レインの表情が変わる。

 

船大工ではない。

 

発明家でもない。

 

医者の顔だった。

 

店主が説明する。

 

「落盤だ」

 

「中にまだ何人か残されてる」

 

レインは周囲を確認する。

 

負傷者が運び出されていた。

 

骨折。

 

裂傷。

 

打撲。

 

出血。

 

重傷者もいる。

 

医者らしき男が必死に対応していた。

 

だが人数が多すぎる。

 

完全に手が足りていない。

 

レインは迷わず近付く。

 

「手伝います」

 

医者が振り向く。

 

年配の男性だった。

 

「誰だ君は?」

 

「医者です」

 

「医者?」

 

どう見ても十四歳だった。

 

当然疑われる。

 

しかし今はそんな時間がない。

 

レインは負傷者を確認する。

 

右腕骨折。

 

意識あり。

 

命に別状なし。

 

次。

 

頭部裂傷。

 

縫合が必要。

 

次。

 

肋骨骨折。

 

呼吸状態確認。

 

次々と判断していく。

 

医者の男が目を見開いた。

 

速い。

 

しかも正確だった。

 

レインはルークを見る。

 

「薬箱!」

 

「はい!」

 

ルークはすぐに《雨神》から持ってきていた医療道具を渡す。

 

針。

 

糸。

 

消毒液。

 

包帯。

 

東の海で診療所を開いていた時に使っていた物だ。

 

レインは迷いなく治療を始めた。

 

傷を洗う。

 

縫う。

 

固定する。

 

止血する。

 

周囲の人間が見入る。

 

無駄がない。

 

手慣れている。

 

とても十四歳には見えなかった。

 

「終わった」

 

一人目。

 

「次」

 

二人目。

 

「次」

 

三人目。

 

誰よりも速かった。

 

医者の男も途中から驚きを通り越していた。

 

「本当に医者なのか……」

 

「一応」

 

レインは短く答える。

 

その時だった。

 

鉱山の奥から声が上がる。

 

「まだ二人残ってるぞ!」

 

現場の空気が凍り付く。

 

救助隊が顔を見合わせる。

 

「無理だ」

 

「また崩れる」

 

「危険すぎる」

 

誰も動けなかった。

 

落盤は続いている。

 

下手に入れば二次災害になる。

 

だが、中にはまだ人がいる。

 

家族たちの顔が青ざめる。

 

泣き出す子供もいた。

 

その時、レインが立ち上がる。

 

「どこだ?」

 

救助隊長が振り向く。

 

「何?」

 

「残された場所だ」

 

「駄目だ!」

 

隊長が叫ぶ。

 

「危険すぎる!」

 

「お前まで埋まる!」

 

レインは坑道を見る。

 

崩れ方を観察する。

 

支柱。

 

岩盤。

 

空洞。

 

船大工として培った構造知識が頭の中で組み立てられていく。

 

そして結論を出した。

 

「まだ持つ」

 

隊長が固まる。

 

「何?」

 

「入口付近は危険だが奥は大丈夫だ」

 

「本当か?」

 

「多分」

 

周囲がざわつく。

 

またその言葉だった。

 

多分。

 

だが今まで外していない。

 

店主が前へ出る。

 

「俺はこいつを信じる」

 

職人たちも頷く。

 

青き鋼。

 

鍛造ハンマー。

 

数日の付き合いだが分かる。

 

この少年は根拠なく言わない。

 

レインは蒼星を抜いた。

 

青銀色の刀身が光る。

 

周囲が驚く。

 

「何をする気だ?」

 

ルークも察した。

 

「まさか……」

 

レインは笑う。

 

「少し道を作る」

 

そう言って坑道へ向かう。

 

救助隊が止めようとする。

 

だがその前に。

 

レインの見聞色が広がった。

 

生存者二名。

 

位置確認。

 

距離確認。

 

崩落箇所確認。

 

全て把握する。

 

そして蒼星を構えた。

 

まだ飛ぶ斬撃は未熟だ。

 

黎明ほどの威力も出ない。

 

だが、岩を砕く程度なら十分だった。

 

「行ってくる」

 

その言葉を残し、レインは暗い坑道へ駆け込んだ。

 

誰も知らない、この救助が鉄鋼島の人々のレインに対する評価を決定的に変えることになることを。

 

そしてルークだけは知っていた。

 

あの顔をしたレインは、絶対に諦めないということを。

 

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