ONE PIECE 〜船大工レイン〜 作:ペンギンって可愛いですよね
坑道の中は暗かった。
外から差し込む光はほとんどない。
崩落によって空気も淀んでいる。
レインは蒼星を片手に奥へ進んでいた。
見聞色の覇気は常に広げている。
周囲の気配。
岩盤の状態。
人の位置。
全てを探っていた。
「右か」
レインが呟く。
生存者の気配が微かに感じられる。
距離はそれほど遠くない。
だが問題は途中の崩落だった。
巨大な岩が通路を塞いでいる。
普通なら掘削作業が必要になる。
数時間。
いや、下手をすれば一日以上。
だが中に閉じ込められている人間にそんな余裕はない。
レインは岩へ手を置く。
冷たい。
重い。
だが完全に塞がっているわけではない。
「やっぱりな」
崩落の隙間を確認する。
ほんの少しだけ空間が残っていた。
だから生存している。
だが逆に言えば時間の問題だった。
再び崩れれば終わる。
レインは蒼星を構える。
「黎明なら一発なんだがな」
少し苦笑する。
黎明は船に置いてきている。
今あるのは蒼星だけ。
だが。
十分だった。
武装色を纏う。
黒く染まる刀身。
蒼い輝きの中に黒が混ざる。
レインは大きく息を吐いた。
そして。
横薙ぎ。
シュン―――
鋭い斬撃が放たれる。
次の瞬間。
ドン!!
岩が割れた。
巨大な岩塊が崩れ落ちる。
だが完全には壊さない。
必要最低限だけ。
構造を見ながら切ったのだ。
船大工として培った知識が役立っていた。
「よし」
レインは隙間へ身体を滑り込ませる。
さらに奥へ。
気配が近付いてくる。
そして、
「誰かいるか!?」
叫び声が聞こえた。
レインは少し安心する。
声が出るならまだ大丈夫だ。
「助けに来た!」
一瞬。
静寂。
そして。
「本当か!?」
男の声だった。
「生きてるか?」
「ああ!」
「二人とも生きてる!」
レインは急いで奥へ進む。
やがて小さな空洞へ辿り着いた。
そこには二人の鉱夫がいた。
顔は煤だらけ。
服もボロボロ。
だが生きている。
一人は足を怪我していた。
もう一人は腕を押さえている。
レインはすぐに診察した。
骨折。
だが命に別状はない。
「良かった」
二人が涙ぐむ。
「助かった……」
「もう駄目かと思った……」
レインは笑った。
「まだ泣くな」
「外に出るまで気を引き締めろ」
二人も笑う。
だがその時だった。
ピキッ。
嫌な音が響いた。
レインの表情が変わる。
上を見る。
岩盤。
亀裂。
嫌な予感しかしない。
見聞色も反応していた。
「まずいな」
「どうした?」
鉱夫たちが青ざめる。
レインは即座に判断する。
「ここ崩れる」
二人の顔から血の気が引いた。
「え?」
「急ぐぞ」
レインは足を怪我した男を背負う。
もう一人には肩を貸した。
そして走る。
来た道を戻る。
全力だった。
外では。
ルークたちが待っていた。
誰も喋らない。
皆が坑道を見つめている。
重苦しい空気。
店主が拳を握る。
「あいつ……」
ルークは静かだった。
不思議と心配していない。
昔からそうだ。
レインは無茶をする。
だが無謀ではない。
勝算があるから動く。
だから信じていた。
その時だった。
ドォォォォォン!!
坑道の奥から轟音が響く。
悲鳴が上がる。
「崩れた!」
「おい!」
島民たちの顔が青ざめる。
だが、ルークだけは坑道を見続けていた。
そして、
「来ました」
誰かが振り返る。
次の瞬間。
土煙の中から人影が飛び出した。
先頭を走るレイン。
背中には一人。
肩にはもう一人。
そして、全員生きていた。
一瞬。
誰も理解できなかった。
数秒後。
歓声が爆発する。
「おおおおおおおお!!」
「生きてる!」
「助かった!」
「帰ってきた!」
家族たちが駆け寄る。
涙を流しながら抱き締める。
鉱夫たちも泣いていた。
レインはゆっくりと二人を降ろす。
その瞬間、膝をついた。
流石に疲れていた。
見聞色。
武装色。
全力疾走。
怪我人二人を運搬。
負担は大きい。
ルークが慌てて駆け寄る。
「大丈夫ですか?」
「大丈夫だ」
「顔色が大丈夫じゃありません」
「少し疲れただけだ」
ルークは呆れた。
いつものことだった。
店主も近付いてくる。
しばらく何も言わない。
そして、大きな手でレインの頭を乱暴に撫でた。
「よくやった」
レインは少し照れ臭そうに笑う。
周囲の職人たちも頷いていた。
もはや誰も十四歳とは思っていない。
船大工。
医者。
発明家。
そして今。
命の恩人。
鉄鋼島の人々にとって、レインは特別な存在になり始めていた。
そしてこの救出劇をきっかけに、レインは思いもよらない贈り物を受け取ることになるのだった。