ONE PIECE 〜船大工レイン〜   作:ペンギンって可愛いですよね

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第二百四十六話「職人たちの贈り物」

 

救出劇から一夜明けた。

 

鉄鋼島は妙な熱気に包まれていた。

 

市場でも。

 

港でも。

 

酒場でも。

 

話題は一つだった。

 

「聞いたか?」

 

「あの少年だろ?」

 

「鉱山へ飛び込んだって?」

 

「しかも医者らしいぞ」

 

「いや、発明家だ」

 

「社長とも聞いた」

 

「何なんだそいつ」

 

島中でそんな会話が交わされていた。

 

一方、その本人はというと、

 

「平和だな」

 

宿で朝食を食べていた。

 

ルークは呆れる。

 

「原因の人が何言ってるんですか」

 

「そうか?」

 

「そうです」

 

レインは首を傾げる。

 

人を助けた。

 

それだけだった。

 

別に特別なことをしたつもりはない。

 

前世でもそうだった。

 

困っている人がいたら助ける。

 

それだけである。

 

すると宿の外が騒がしくなった。

 

足音。

 

話し声。

 

そして、

 

ドンドンドン!!

 

勢いよく扉が叩かれた。

 

ルークが開ける。

 

そこには店主を先頭に職人たちが並んでいた。

 

二十人以上いる。

 

ルークが固まる。

 

「どうしたんですか?」

 

店主が笑った。

 

「迎えに来た」

 

「迎え?」

 

「いいから来い」

 

嫌な予感しかしなかった。

 

案の定。

 

工房へ到着すると、島中の職人たちが集まっていた。

 

百人近い。

 

流石にレインも驚く。

 

「何事だ?」

 

店主は腕を組む。

 

そして真剣な顔になる。

 

「礼だ」

 

レインは即答した。

 

「いらん」

 

周囲がずっこけた。

 

あまりにも早かった。

 

店主も額を押さえる。

 

「最後まで聞け!」

 

「聞いても同じだ」

 

「お前なぁ……」

 

職人たちから苦笑が漏れる。

 

予想通りだった。

 

この少年は見返りを求めない。

 

だからこそ皆が集まったのだ。

 

店主はため息を吐く。

 

「じゃあ聞く」

 

「何だ」

 

「お前は俺たちに何をくれた?」

 

レインは少し考える。

 

「青き鋼の精錬法?」

 

「そうだ」

 

店主が頷く。

 

「鍛造ハンマーは?」

 

「あれもだな」

 

「鉱山の連中を助けたのは?」

 

「たまたまだ」

 

「たまたまで命は救えねぇ」

 

店主が真っ直ぐレインを見る。

 

「お前はこの島にたくさんの物を残した」

 

「だから俺たちも返したい」

 

工房が静かになる。

 

誰もが頷いていた。

 

レインは少し困った。

 

こういうのは苦手だった。

 

すると一人の老人が前へ出る。

 

鉱山長だった。

 

昨日助けた男の父親でもある。

 

老人は深々と頭を下げた。

 

「息子を助けてくれてありがとう」

 

レインは慌てる。

 

年上に頭を下げられるのは落ち着かない。

 

「やめてくれ」

 

「やめん」

 

老人は顔を上げる。

 

その目は真剣だった。

 

「お前は命を救った」

 

「だから受け取れ」

 

そう言って差し出したのは小さな木箱だった。

 

開く。

 

中には青き鋼の原石が入っていた。

 

それも最高品質。

 

青く輝いている。

 

職人たちがざわつく。

 

「まさか……」

 

「鉱山の最深部産か」

 

「本気だな」

 

レインも価値が分かった。

 

かなり貴重だ。

 

「いいのか?」

 

「お前に持っていてほしい」

 

老人は笑った。

 

「この島の感謝だ」

 

レインはしばらく考えた。

 

そして頭を下げる。

 

「ありがとう」

 

老人も笑った。

 

それだけで十分だった。

 

すると今度は店主が前へ出る。

 

大きな木箱を持っている。

 

嫌な予感しかしない。

 

「まだある」

 

「まだあるのか」

 

「ある」

 

店主は木箱を開けた。

 

中には金属製のプレートが入っていた。

 

青き鋼で作られている。

 

職人たちが一斉に笑う。

 

レインは読む。

 

そこには大きく刻まれていた。

 

『鉄鋼島名誉職人』

 

沈黙。

 

レインは店主を見る。

 

店主は笑っていた。

 

周囲も笑っていた。

 

ルークだけが吹き出した。

 

「何ですかそれ」

 

「知らん」

 

「今決めた」

 

工房中が大爆笑する。

 

レインは頭を抱えた。

 

「いらない」

 

「受け取れ」

 

「いらない」

 

「受け取れ」

 

完全に押し切られた。

 

結局、レインは鉄鋼島名誉職人になった。

 

十四歳にして訳の分からない肩書がまた増えた。

 

その様子を見ながらルークは思う。

 

社長。

 

医者。

 

船大工。

 

発明家。

 

そして名誉職人。

 

どこへ向かっているのだろうか。

 

本人も分かっていない気がした。

 

だが、島の人々の笑顔を見る限り。

 

悪い方向ではないのだろう。

 

その時だった。

 

店主がニヤリと笑った。

 

「さて」

 

嫌な予感がした。

 

レインもルークも同時に思った。

 

店主は親指で港を指差す。

 

「礼はまだ終わってねぇ」

 

「……何する気だ?」

 

店主たちの笑みが深くなる。

 

「お前の船を見せろ」

 

レインの嫌な予感は的中した。

 

そして翌日、鉄鋼島の職人たち総出による《雨神》大改修計画が始まることになるのだった。

 

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