ONE PIECE 〜船大工レイン〜 作:ペンギンって可愛いですよね
翌朝。
港は朝から異様な熱気に包まれていた。
職人。
職人。
そして職人。
見渡す限り職人だらけだった。
《雨神》の周囲には百人近い職人たちが集まっている。
船大工。
鍛冶職人。
鉱夫。
金属加工職人。
昨日の救出劇で世話になった者たちまでいた。
ルークはその光景を見て呟く。
「凄いことになってますね……」
「そうだな……」
レインも苦笑していた。
予想以上だった。
まさか島中が集まるとは思わなかった。
すると店主が大声を上げる。
「野郎ども!」
「おお!!」
「今日からこの船を改造する!」
「おおおお!!」
港が揺れそうなほどの歓声だった。
レインは思わず聞く。
「いや、何でそんなにやる気なんだ?」
店主は笑う。
「楽しいからだ」
即答だった。
職人たちも大きく頷く。
それだけだった。
新しい技術。
新しい船。
見たこともない発電装置。
彼らにとって《雨神》は宝の山だった。
職人魂が刺激されているのである。
レインは頭を掻いた。
「まあ、嫌いじゃない」
「知ってる」
ルークが即答した。
誰よりも楽しそうなのはレイン自身だった。
船の話になると止まらない。
船大工の血が騒ぐのである。
店主が《雨神》を見上げる。
「まず聞く」
「何だ?」
「どこを強化したい?」
レインは少し考える。
そして真面目な顔になる。
ここからは遊びではない。
グランドラインを生き残るための話だ。
「船底だな」
職人たちが頷く。
予想通りだった。
グランドラインの海は東の海とは違う。
海流。
岩礁。
異常気象。
全てが危険だ。
「船底に青き鋼を使う」
レインが言う。
職人たちがざわつく。
贅沢な使い方だった。
だが効果は絶大だろう。
「軽量化できる」
「耐久性も上がる」
「錆びにも強い」
店主が笑う。
「いいな」
「だろ?」
「贅沢だがな」
「そこは仕方ない」
職人たちも笑った。
そして次、レインは船尾へ向かう。
発電装置を指差した。
「ここもだ」
職人たちが集まる。
この装置が島中の話題だった。
風がなくても進む船。
誰も見たことがない。
「凄ぇな……」
「本当に動くのか?」
「動くぞ」
レインはスイッチを入れる。
プロペラが回り始めた。
職人たちが歓声を上げる。
何度見ても面白い。
レインは笑った。
「プロペラ軸を青き鋼へ変更したい」
「なるほど」
店主が頷く。
負荷が掛かる部分だ。
強化する価値はある。
さらに、レインは次々と改善案を出していく。
船首補強。
衝角強化。
工具収納。
予備部品格納庫。
職人たちは目を輝かせていた。
まるで巨大な共同研究だった。
そして、気付けば全員が夢中になっていた。
昼。
食事も忘れる。
夕方。
休憩も忘れる。
夜。
まだ続いていた。
ルークは少し離れた場所でその様子を見ていた。
苦笑する。
誰も止まらない。
完全に職人の集団だった。
その時だった。
店主が突然叫ぶ。
「レイン!」
「ん?」
「船首空いてるぞ!」
レインが振り返る。
確かに少し余裕がある。
すると店主がニヤリと笑った。
嫌な笑みだった。
「鉄鋼島の記念を付けよう」
職人たちが盛り上がる。
「いいな!」
「やろう!」
「絶対やろう!」
レインの嫌な予感が的中する。
「待て」
「嫌だ」
「聞け」
「嫌だ」
完全に一致団結していた。
ルークは笑いを堪えている。
数十分後。
職人たちによる多数決が行われた。
結果。
レインの反対は無視された。
そして翌朝。
船首に新しい金属板が取り付けられる。
そこには青き鋼で刻まれていた。
『鉄鋼島公認』
レインは頭を抱えた。
「何でだよ……」
職人たちは大爆笑だった。
「ガハハハ!」
「似合ってるぞ!」
「最高だ!」
ルークも吹き出した。
「記念ですね」
「消したい」
「絶対怒られますよ」
レインは諦めた。
どうせ消してもまた付けられる。
それくらい分かる。
職人たちとの付き合いで理解した。
頑固なのだ。
そして改修はさらに続く。
三日後。
《雨神》は見違えていた。
船底には青き鋼による補強。
プロペラ軸の強化。
発電装置の改良。
各部の軽量化。
工具格納庫の増設。
予備部品倉庫の追加。
そして何より。
島中の職人たちの技術が詰め込まれていた。
店主が船体を叩く。
コン。
澄んだ音が響く。
「良い船だ」
レインも頷いた。
「ああ」
心からそう思う。
この島へ来て良かった。
青き鋼。
蒼星。
蒼月。
そして新しく生まれ変わった《雨神》。
得た物は想像以上だった。
店主は笑う。
「これでグランドラインも少しは楽になる」
「楽にはならないだろ」
「違いねぇ」
職人たちが笑う。
グランドラインは甘くない。
だからこそ面白い。
そしてレインも笑った。
次の島。
次の冒険。
その先には何が待っているのか。
まだ誰も知らない。
だが一つだけ確かなことがあった。
《雨神》はさらに強くなった。
そしてレインもまた、一歩前へ進んでいた。