ONE PIECE 〜船大工レイン〜 作:ペンギンって可愛いですよね
出航の日は快晴だった。
鉄鋼島の空はどこまでも青い。
心地良い風が吹いている。
港には朝早くから人が集まっていた。
職人。
鉱夫。
商人。
島民。
気付けばかなりの人数になっている。
ルークは思わず苦笑した。
「凄い人数ですね」
「ああ」
レインも驚いていた。
正直ここまで見送りに来るとは思っていなかった。
数週間前まで知らない島だった。
それが今ではこうして大勢が集まっている。
不思議なものだった。
港では《雨神》が静かに停泊している。
改修を終えた船体は以前よりも力強く見えた。
青き鋼で補強された船底。
改良された発電装置。
強化されたプロペラ軸。
そして船首には未だに堂々と刻まれている。
『鉄鋼島公認』
レインはそれを見るたびに複雑な気持ちになる。
「やっぱり消そうかな」
後ろから声が飛んだ。
「消したら沈めるぞ!」
店主だった。
職人たちが大笑いする。
「聞こえてたのか」
「当たり前だ」
「怖いな」
「お前が言うな」
また笑いが起きた。
島に来たばかりの頃では考えられない光景だった。
すると鉱山長が近付いてくる。
「出るのか」
「ああ」
「寂しくなるな」
老人はそう言って笑った。
レインも笑う。
「また来るかもしれない」
「その時は歓迎する」
「ありがとう」
老人は頷いた。
しばらく沈黙が続く。
やがて老人は懐から小さな袋を取り出した。
「持っていけ」
レインが受け取る。
中を見る。
青き鋼で作られた小さなペンダントだった。
職人のハンマーが刻まれている。
「これは?」
「名誉職人の証だ」
レインは頭を抱えた。
「まだ増えるのか」
周囲が笑う。
老人も笑う。
「諦めろ」
「……そうする」
どうやら逃げられないらしい。
ルークも笑っていた。
完全に島の一員扱いだった。
その時、店主が前へ出る。
港が静かになる。
島の職人たちも集まる。
店主はレインを見た。
そして口を開く。
「次はいつ来る?」
レインは少し考えた。
グランドライン。
次の島。
その先。
予定など分からない。
「分からんな」
正直に答える。
店主は頷いた。
そして笑った。
「なら生きて戻って来い」
レインも笑う。
「ああ」
それだけだった。
だが十分だった。
職人同士の約束だった。
港にいた全員が頷いている。
ルークも静かに頭を下げた。
「お世話になりました」
「頑張れよ若造!」
「また来い!」
「次はもっと面白い物を持ってこい!」
次々と声が飛ぶ。
ルークは思わず笑った。
完全に期待されている。
それも悪くなかった。
やがて出航の時間になる。
レインとルークは《雨神》へ乗り込んだ。
ロープを外す。
帆を調整する。
準備完了。
レインは最後に港を見る。
職人たち。
鉱夫たち。
島民たち。
全員が手を振っていた。
「行くか」
「はい」
《雨神》がゆっくりと動き出す。
港を離れる。
海へ出る。
島が少しずつ遠ざかっていく。
そして、
「ありがとうございましたー!」
ルークが大声で叫んだ。
港から歓声が返ってくる。
「また来いよー!」
「死ぬなよー!」
「名誉職人ー!」
最後のは余計だった。
レインは苦笑する。
島がどんどん小さくなる。
やがて水平線の向こうへ消えていった。
しばらく二人は黙っていた。
風の音だけが聞こえる。
その時、ルークが腰の蒼月に触れた。
青き鋼の短剣。
島で作った大切な相棒だ。
レインも蒼星を見る。
そして腰には黎明。
いつの間にか武器が増えていた。
ルークがふと聞く。
「そういえば」
「ん?」
「最近、剣の鍛錬を増やしましたよね」
レインは少し笑った。
気付かれていたらしい。
まあ当然だった。
毎日やっているのだから。
「そうだな」
「何か理由が?」
ルークが聞く。
レインはしばらく海を見る。
青い海。
果てしない水平線。
グランドライン。
ここは東の海とは違う。
強者が集まる海だ。
船大工としての技術。
医者としての知識。
発明家としての発想。
どれも大切だ。
だが、それだけでは足りない。
「生き残るためだ」
レインは静かに言った。
「グランドラインじゃ技術だけじゃ足りない」
「医者も」
「船大工も」
「生きてなきゃ意味がない」
ルークは黙って聞いていた。
レインは続ける。
「もっと強くなる」
「剣も」
「覇気も」
「全部だ」
その瞳は真剣だった。
ルークは少し笑う。
「大変ですね」
「そうだな」
「でもレインさんならやれますよ」
レインは苦笑した。
「無責任だな」
「今さらです」
二人は笑う。
その時だった。
ルークがログポースを見る。
針が完全に固定されている。
次の島を示していた。
「レインさん」
「どうした?」
「次の島が決まったみたいです」
レインが振り返る。
ルークは少し嫌そうな顔をしていた。
嫌な予感がした。
「何だ?」
ルークは遠くを指差した。
レインも視線を向ける。
そして固まった。
遠くの水平線。
そこに見えるのは。
白。
白。
白。
雪だった。
巨大な雪雲が広がっている。
冷たい風が吹き始める。
気温も下がってきた。
ルークがため息を吐く。
「冬島ですね」
レインも頷いた。
「みたいだな」
こうして二人の次なる目的地が決まった。
グランドライン第二の島。
雪と氷に覆われた冬島。
そこで待つ出会いが、後にレインの医術と剣術をさらに大きく成長させることになるのだった。