ONE PIECE 〜船大工レイン〜   作:ペンギンって可愛いですよね

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第二百四十九話「雪の王国」

 

鉄鋼島を出航してから五日。

 

《雨神》は順調に航海を続けていた。

 

青き鋼で強化された船体は驚くほど安定している。

 

グランドライン特有の荒波にも耐え。

 

突風にも負けない。

 

職人たちの技術力の高さを改めて実感していた。

 

「やっぱり良い船ですね」

 

ルークが船体を撫でながら言う。

 

「だな」

 

レインも頷く。

 

船大工として純粋に嬉しかった。

 

自分が設計し。

 

職人たちと改良した船。

 

《雨神》は確実に進化している。

 

その時だった。

 

ヒュゥゥゥゥ……

 

冷たい風が吹いた。

 

ルークが肩を震わせる。

 

「寒っ」

 

数日前までは暖かかった。

 

だが今日は違う。

 

明らかに気温が下がっている。

 

海面にも薄く霧が出始めていた。

 

レインは空を見る。

 

雪雲だった。

 

「近いな」

 

「ええ」

 

ルークも前方を見る。

 

水平線の先。

 

白い影が見えていた。

 

最初は雲かと思った。

 

だが違う。

 

島だ。

 

巨大な雪山がそびえ立っている。

 

そして島全体が白い。

 

「凄いですね……」

 

ルークが思わず呟く。

 

東の海ではまず見られない光景だった。

 

雪国。

 

それも本格的な。

 

レインも少し見入っていた。

 

前世では雪を見る機会はあった。

 

だが今世ではほとんどない。

 

島育ちだったため、雪そのものが珍しい。

 

「綺麗だな」

 

「ですね」

 

しばらく二人は景色を眺めていた。

 

すると。

 

パサッ。

 

何かが落ちる。

 

ルークの頭の上だった。

 

「ん?」

 

白い。

 

冷たい。

 

「雪です」

 

レインが言う。

 

ルークが空を見上げる。

 

雪だった。

 

一枚。

 

二枚。

 

三枚。

 

やがて数が増える。

 

雪が降り始めた。

 

「本当に冬島なんですね」

 

「みたいだな」

 

レインは少し笑う。

 

そして甲板へ出る。

 

雪を手に取る。

 

冷たい、だが嫌な感じはしない。

 

むしろ少し懐かしかった。

 

前世の記憶が蘇る。

 

子供の頃。

 

雪だるまを作ったこと。

 

雪合戦をしたこと。

 

そんな記憶だった。

 

「レインさん」

 

「ん?」

 

「笑ってますよ」

 

「そうか?」

 

「珍しいですね」

 

ルークも笑った。

 

するとその時だった。

 

見張り台から叫び声が聞こえる。

 

もちろんレイン自身だ。

 

「おお!」

 

「どうしました?」

 

「見えた!」

 

ルークが前を見る。

 

そして目を見開いた。

 

島の全景が見えた。

 

巨大な山。

 

雪に覆われた森。

 

白銀の大地。

 

そして山頂付近に建つ巨大な城。

 

「あれは……」

 

「城だな」

 

レインも驚いていた。

 

想像以上だった。

 

まるで絵本に出てくる雪の王国。

 

そんな景色だった。

 

《雨神》はゆっくりと港へ近付いていく。

 

やがて人影が見えてきた。

 

港だ。

 

多くの船が停泊している。

 

漁船。

 

商船。

 

運搬船。

 

そして医療物資を運ぶ船もあった。

 

レインはそこに反応した。

 

「医療物資?」

 

ルークが苦笑する。

 

嫌な予感しかしない。

 

「気付きました?」

 

「ああ」

 

レインの目が輝く。

 

完全に何かを察した顔だった。

 

港へ近付く。

 

すると看板が見えた。

 

大きな文字で書かれている。

 

『ドラム王国』

 

レインは笑った。

 

「当たりだな」

 

「何がです?」

 

「医療国家だ」

 

ルークは額を押さえた。

 

やっぱりそうだった。

 

出航前から知識として知っていた。

 

グランドラインには医療大国がある。

 

それがドラム王国。

 

世界有数の医療技術を持つ国。

 

つまり、レインにとっての宝の山である。

 

「まず病院ですね」

 

ルークが諦めたように言う。

 

「当たり前だろ」

 

即答だった。

 

「宿は?」

 

「後」

 

「食事は?」

 

「後」

 

「休憩は?」

 

「後」

 

ルークは深いため息を吐いた。

 

予想通りだった。

 

船大工の島へ行った時も同じだった。

 

今回は医療の島。

 

こうなるのは分かりきっている。

 

港へ到着する。

 

ロープを固定する。

 

入国手続きを済ませる。

 

本来ならまず宿を探すべきだろう。

 

だが、レインは既に近くの人へ話しかけていた。

 

「病院はどこだ?」

 

「え?」

 

衛兵が固まる。

 

普通は宿を聞く。

 

観光地を聞く。

 

病院を聞く人間はいない。

 

「病院だ」

 

「いや、ありますけど……」

 

「一番大きい所を教えてくれ」

 

衛兵は困惑していた。

 

ルークは頭を抱える。

 

始まった。

 

完全に始まった。

 

だがレインは止まらない。

 

目は完全に好奇心で輝いている。

 

船大工が鉄鋼島へ行った時と同じ顔だった。

 

いや、それ以上かもしれない。

 

世界有数の医療国家。

 

そこにはどんな技術があるのか。

 

どんな病気があるのか。

 

どんな医者がいるのか。

 

レインの胸は高鳴っていた。

 

そしてまだ知らない。

 

この国で出会う一人の老医師が、自分の常識を何度も覆してくることを。

 

そしてその老医師が、後に世界でも屈指の名医として語られる存在であることを。

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