ONE PIECE 〜船大工レイン〜 作:ペンギンって可愛いですよね
石油を発見してから一週間が経っていた。
工房は相変わらず忙しい。
依頼は増えている。
滑車の評判も良い。
港では少しずつレイン工房の名前が広がっていた。
傍から見れば順風満帆。
何の問題もないように見える。
だが、レインだけは違った。
工房の作業台。
そこには滑車が置かれている。
レインはその金具をじっと見つめていた。
少し錆びた鉄。
前までは気にも留めなかった。
だが今は違う。
石油を見つけた今だからこそ見えるものがあった。
「うーん……」
腕を組む。
「どうしたんですか?」
ルークが近付いてきた。
レインは金具を持ち上げる。
「これ」
「滑車ですね」
「違う」
「え?」
「鉄だ」
ルークが固まる。
「はい?」
レインは真面目だった。
この島は船大工の島だ。
船を作る。
修理する。
工具を作る。
釘を作る。
当然、大量の鉄が必要になる。
だが、レインはここ数ヶ月の港の様子を思い返していた。
木材を積んだ船。
食料を運ぶ船。
日用品を運ぶ船。
様々な船が出入りしている。
しかし、鉄鉱石を大量に積んだ船は見た記憶がなかった。
もちろん、見落としている可能性はある。
だが、それにしては鉄製品が多すぎる。
工具。
釘。
金具。
鎖。
島の至る所で普通に使われている。
もし外から運んでいるなら。
もっと高価になるはずだ。
もっと大事に扱われるはずだ。
だが現実は違う。
レインは腕を組む。
そして、一つの仮説へ辿り着いた。
「この島に鉄鉱石があるのか?」
ポツリと呟く。
ルークが首を傾げる。
父親もこちらを見た。
「今度は何だ」
「鉄」
「鉄がどうした」
レインは説明する。
船。
工具。
釘。
全部鉄が必要。
それなのに大量輸入している形跡がない。
つまり、島のどこかで採れている可能性が高い。
父親は腕を組んだ。
そして少し考える。
「言われてみればそうだな」
ルークが驚いた。
「親方まで!?」
「いや理屈は分かる」
父親も今まで考えたことはなかった。
だが確かに不自然だった。
石油がある…なら鉄があってもおかしくない。
レインは立ち上がる。
「探しに行こう」
ルークが頭を抱えた。
「またですか!?」
父親が苦笑する。
「今度は鉄か」
「必要なんだよ」
レインは真面目だった。
石油。
鉄。
工業を発展させるための二本柱。
その片方が見つかれば未来は大きく変わる。
その日の昼、工房は臨時休業となった。
ルークは看板を裏返しながら呟く。
「最近休業多くないですか?」
「気のせいだ」
父親が答える。
「気のせいじゃないです」
誰も聞かなかったことにした。
三人は森へ向かう。
目的地はない。
地図もない。
手掛かりもない。
完全な手探りだった。
「本当に見つかるんですか?」
ルークが聞く。
「分からない」
「またそれですか」
「でも探さないと始まらない」
レインは真顔だった。
父親が笑う。
「石油の時もそうだったな」
「結果見つかったでしょ」
「それはそうだ」
森の中を歩く。
岩を見る。
地面を見る。
崖を見る。
だが、当然ながら分からない。
レインも前世で鉄鉱石探しなどしたことはない。
「うーん……」
腕を組む。
そして、ふと気付く…
工具。
釘。
船。
全部鉄を使っている。
つまり、誰かが鉄を加工している。
レインが立ち止まった。
「父さん」
「なんだ」
「鍛冶屋っている?」
父親が頷く。
「いるぞ」
「どこ?」
「港の東側」
沈黙…
レインが固まる。
「もっと早く言ってよ!」
父親も固まった。
「聞かれてねぇだろ!」
ルークが吹き出した。
「確かにそうですね」
「いや普通言わない?」
「普通は聞く」
「ぐっ……」
珍しくレインが言葉に詰まる。
ルークは笑った。
「じゃあこの森探検は?」
レインは即答した。
「中止」
「即決ですね!」
父親が吹き出す。
「本当にお前らしいな」
三人は来た道を引き返した。
そしてそのまま港へ向かう。
目的地は鍛冶屋。
ガン。
ガン。
ガン。
金属を打つ音が響いている。
大きな建物だった。
中へ入る。
熱気が押し寄せてくる。
炉が燃えている。
鉄が並んでいる。
工具が並んでいる。
そして、大柄な男がいた。
「なんだ?」
低い声が響く。
少し怖い。
ルークが一歩下がる。
父親が手を上げる。
「久しぶりだな」
男が目を細める。
「お前か」
知り合いらしい。
レインはすぐに聞いた。
「鉄ってどこから来るんですか?」
鍛冶屋はしばらく黙った。
そして答える。
「鉱山だ」
レインの目が輝く。
予想は当たっていた。
だが、
「案内してください」
「無理だ」
即答だった。
「なんで?」
「許可がいる」
「誰の?」
鍛冶屋は腕を組む。
そして言った。
「島の長老だ」
その言葉に、レインは静かに笑った。
「じゃあ会いに行こう」
父親が天を仰ぐ。
ルークも天を仰ぐ。
「また始まった……」
だが、少年の瞳は本気だった。
石油。
鉄。
未来への道筋が、少しずつ見え始めていた。