ONE PIECE 〜船大工レイン〜 作:ペンギンって可愛いですよね
翌朝…
レインは朝から機嫌が良かった。
鉄鉱石鉱山。
昨日、その存在が判明した。
石油。
そして鉄。
工業を発展させるために必要な資源が少しずつ揃い始めている。
もちろん、まだ鉱山を見た訳ではない。
埋蔵量も分からない。
だが、確実に前へ進んでいた。
レインは朝食を食べながら考える。
もし鉱山の規模が大きければ。
工具を改良できる。
設備も増やせる。
工房の仕事の幅も広がる。
そしていつか、飛行機開発にも繋がる。
自然と口元が緩んだ。
一方…父親とルークは少し緊張していた。
「本当に行くんですね……」
ルークが呟く。
「行く」
レインは即答した。
「緊張しないんですか?」
「なんで?」
ルークは頭を抱えた。
この人は本当に六歳なのだろうか。
父親が苦笑する。
「諦めろ」
「親方は緊張してないんですか?」
「してる」
「ですよね!?」
少し安心した…まともな反応をする人がいて良かった。
三人は島の中心部へ向かう。
港から少し離れた高台。
そこには古い木造の家が建っていた。
決して大きくはない。
だが、この島で最も尊敬されている人物が住んでいる。
長老だった。
長老は九十歳近い老人だ。
若い頃は船大工として活躍したらしい。
父親の父親よりもさらに上の世代。
島の歴史を最も知る人物。
何か大きな決定をする時は必ず長老へ相談する。
そんな存在だった。
父親が扉を叩く。
しばらくして。
中から老人が現れた。
白髪。
深い皺。
だが、その目だけは鋭かった。
長年多くの人を見てきた人間の目だった。
「おぉ」
長老が笑う。
「久しぶりじゃな」
父親が頭を下げた。
「急にすみません」
「構わん」
長老は三人を家へ招き入れる。
室内は質素だった。
古い机。
古い椅子。
壁には船の模型が並んでいる。
そして、何枚もの古い設計図。
長老もまた、生涯船大工として生きた人間なのだと分かった。
全員が席に着く。
長老が湯飲みを置いた。
「それで?」
「今日は何の用じゃ」
父親は少し言葉に詰まった。
説明が難しい。
すると、レインが一歩前へ出る。
「鉱山を見たいです」
沈黙。
長老が固まる。
父親が固まる。
ルークも固まる。
そして数秒後。
長老が吹き出した。
「はっはっは!」
豪快な笑い声だった。
「六歳の坊主が鉱山か!」
ルークは思う。
普通そうなる。
自分でもそう思う。
だが、レインは真面目だった。
「駄目ですか?」
長老が笑いながら聞く。
「理由は?」
「鉄が必要だからです」
長老の笑みが少しだけ消えた。
「鉄?」
「はい」
レインは説明を始めた。
レイン工房のこと、
滑車のこと、
港の荷揚げ設備のこと、
もっと便利な道具を作りたいこと、
もっと効率を上げたいこと、
そして、そのためには鉄が必要なこと。
石油の話だけは伏せた。
まだ誰にも話すつもりはない。
長老は黙って聞いていた。
途中で一度も口を挟まない。
ただ静かに、最後まで聞いていた。
説明が終わる。
長老は父親を見る。
「本当にお前の息子か?」
父親が苦笑する。
「よく言われます」
ルークも頷いた。
「僕も思います」
レインは少し傷付いた。
「酷くない?」
誰も否定しなかった。
長老は椅子へ深く座る。
腕を組む。
そして考え始めた。
最近の噂は聞いている。
荷揚げ設備。
滑車。
レイン工房。
港で話題になっている。
最初は皆笑っていた。
子供の遊びだと。
だが、結果を出した。
それは事実だった。
長老はレインを見る。
「お前は何を目指しておる」
静かな声だった。
レインは少し考える。
そして答えた。
「この島を世界一の船大工の島にしたいです」
父親が目を見開く。
ルークも驚いた。
初めて聞いた。
だが、レインは本気だった。
飛行機。
工場。
新技術。
全てはこの島から始まる。
ならば、世界一を目指して何が悪い。
長老はしばらく黙っていた。
そして、ゆっくり笑った。
「面白い」
その一言だった。
さらに続ける。
「荷揚げ設備」
「滑車」
「レイン工房」
「噂は聞いておる」
長老はレインを見た。
「お前は口だけではない」
「ちゃんと結果を出しておる」
「だから許可しよう」
レインの表情が明るくなる。
「本当ですか?」
「ただし条件がある」
長老の表情が真剣になる。
「鉱山は島の財産じゃ」
「勝手に掘り進めるな」
「新しい鉱脈を見つけたら報告しろ」
「何か利用する計画があるなら相談しろ」
レインは力強く頷いた。
「分かりました」
長老も頷く。
そして、ふと遠くを見るような目になった。
「不思議なものじゃな」
「昔にも似たようなことを言った男がおった」
レインが首を傾げる。
「誰ですか?」
長老は少し笑う。
「わしも詳しくは知らん」
「祖父から聞いた話じゃ」
「大昔、この島を世界一の船の島にすると言った男がおったらしい」
「馬鹿な話だと思っとった」
長老はレインを見る。
「だが、お前を見ていると少し思い出してな」
レインは首を傾げたままだった。
父親も知らない。
ルークも知らない。
だが、長老だけは感じていた。
この少年は何かが違う。
どこか、遥か昔の誰かと似ている。
帰り道、ルークが呟く。
「許可貰えちゃいましたね……」
「うん」
「普通ですか?」
「普通じゃないな」
父親が答える。
そして苦笑した。
「まぁレインだからな」
ルークは納得したような。
納得していないような顔をする。
だが一つだけ分かる。
また何かが始まる。
そして、その中心には必ずレインがいる。
少年の次なる目的地は決まった。
島の北側。
鉄鉱石鉱山。
そこには、まだ誰も知らない発見が待っていた。